はじめに
VMware vSphere 環境において、仮想マシンを稼働状態のまま別の物理サーバーへ移行するライブマイグレーション技術が「vMotion」です。ハードウェアのメンテナンス時やリソース負荷の分散など、システムの継続性を維持するために欠かせない機能として広く利用されています。
本記事では、vMotion の基本的な仕組みから、「Storage vMotion」や「Cross vCenter vMotion」といった用途に応じた種類の違い、および実行にあたって満たすべき必須要件を解説します。
- vMotion の基本概念とライブマイグレーション時の注意点
- 3つの主要な移行方式(vMotion、Storage vMotion、Cross vCenter vMotion)の違い
- 移行を実行するためのホスト側・ネットワーク側・仮想マシン側の必須要件
VMware vMotion の概要と仕組み
vMotion は、vSphere 環境における運用保守やリソースの最適化を支える中核的なテクノロジーです。まずはその基本的な役割と、移行時に発生する事象について解説します。
vMotion とは(ライブマイグレーション機能)
VMware vMotion は、稼働中の仮想マシン(VM)の OS やアプリケーションを停止することなく、ある物理サーバー(ESXi ホスト)から別の物理サーバーへ移動させるライブマイグレーション技術です。

この機能により、システム管理者はサービスを提供したまま物理サーバーの計画メンテナンス(ファームウェア更新や部品交換など)を実行できます。また、vSphere DRS(Distributed Resource Scheduler)と連携することで、ホスト間の CPU やメモリの負荷状況を監視し、仮想マシンを自動的に移動させてリソースを最適化することも可能です。
瞬断(微小なダウンタイム)が発生する仕組みと注意点
vMotion は一般的に「無停止」と表現されますが、厳密には移行の最終段階において微小なダウンタイム(瞬断)が発生します。

移行のプロセスでは、まず仮想マシンのメモリデータがバックグラウンドで移行先のホストへ転送されます。その後、メモリの差分コピーが完了する直前に、仮想マシンの処理を極短時間だけ「静止(サスペンド)」させ、最終的な CPU ステートやネットワークの MAC アドレス情報などを移行先へ引き継いで処理を再開します。
この静止時間は通常1秒未満であり、一般的な Web サーバーなどでは影響が出ませんが、ネットワーク通信において ping が1〜2回タイムアウトする程度の瞬断を伴います。そのため、極めてシビアなリアルタイム通信が求められるシステム(一部のデータベースや音声通話システムなど)を移行する場合は、業務影響を考慮して実行タイミングを計画する必要があります。
vMotion の代表的な3つの種類
一般的に「vMotion」と呼ばれる機能には、何を移行対象とするかによっていくつかのバリエーションが存在します。ここでは代表的な3つの種類について解説します。

vMotion(ホスト間のコンピューティングリソース移行)
最も基本的な vMotion です。仮想マシンの実体データ(VMDK ファイルなど)は共有ストレージ上に置いたまま、CPU やメモリの使用状況といった「コンピューティングリソース」のみを、稼働中の別の ESXi ホストへ移行させます。
主にホストの計画メンテナンス時や、vSphere DRS によるホスト間の負荷分散を目的として利用されます。
Storage vMotion(データストア間のストレージリソース移行)
Storage vMotion(svMotion)は、稼働中の仮想マシンのディスクデータを、異なるデータストア(ストレージ領域)間で移行させる機能です。この場合、仮想マシンが稼働している ESXi ホストは変更されません。
古いストレージ装置から新しい装置へのリプレース作業や、ストレージの容量不足・パフォーマンス低下を解消するための負荷分散(Storage DRS)目的で利用されます。
Cross vCenter vMotion(異なるvCenter Server間の移行)
Cross vCenter vMotion(xMotion)は、異なる vCenter Server 配下にある ESXi ホストやデータストアへ仮想マシンを移行させる機能です。これにより、物理的に離れたデータセンター間での移行や、オンプレミス環境から VMware Cloud on AWS などのクラウド環境への移行が可能になります。
この機能では、ホスト(コンピューティング)のみの移動、ストレージのみの移動、あるいは両方を同時に移動(Enhanced vMotion とも呼ばれます)させることを選択できます。
vMotion を実行するための必須要件
vMotion を正常に実行し、移行時のパフォーマンスやネットワーク接続性を維持するためには、システム全体でいくつかの前提条件を満たす必要があります。ここでは主な要件を整理して解説します。
ホストおよびネットワークの要件(互換性、帯域幅など)
移行元と移行先の ESXi ホスト、およびそれらを繋ぐネットワーク環境には以下の要件が求められます。
通常の vMotion を実行する場合、移行元と移行先の両ホストが、仮想マシンの保存先である同一の共有ストレージ(データストア)にアクセスできる必要があります。
両ホストの CPU 機能セットに互換性があることが求められます。世代の異なる CPU 間で移行を行う場合は、クラスタレベルで EVC(Enhanced vMotion Compatibility)機能を有効化し、互換性を担保する必要があります。
vMotion 専用のネットワークインターフェースを構成し、1Gbps 以上の帯域幅を確保することが必須要件です。大規模環境や同時移行数を増やす場合は、10Gbps 以上のネットワーク利用が推奨されます。
仮想マシンの要件(CPU アフィニティ、RDM などの制約)
移行対象となる仮想マシン自体にも、構成上の制限事項が存在します。以下の設定が含まれていると、vMotion の実行がブロックされる場合があります。
ホストのローカルドライブにある CD/DVD-ROM の ISO イメージなどが仮想マシンにマウントされている場合は、移行前に切断する必要があります。
仮想マシンを特定の物理 CPU コアに紐づける「CPU アフィニティ」が設定されていると移行できません。
物理 NIC(アップリンク)を持たない内部専用の仮想スイッチ(vSwitch)に接続されている仮想マシンは移行対象外となります。
仮想マシンが RDM を使用している場合、移行先のホストからもその LUN(論理ボリューム)へアクセス可能である必要があります。
まとめ
本記事では、VMware 環境におけるライブマイグレーション技術「vMotion」の概要と、種類ごとの違いや実行要件について解説しました。
- vMotion は仮想マシンを無停止で移行する技術だが、実際には極短時間の瞬断が発生する。
- 対象リソースに応じ、vMotion、Storage vMotion、Cross vCenter vMotion の3種類が存在する。
- 実行には、ホスト間の CPU 互換性や1Gbps 以上の専用ネットワーク、VM の構成制限クリアが必須である。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
