はじめに
VMware vSphere の HA(High Availability)は、物理ホストの障害時に仮想マシンを自動的に再起動させる、仮想化基盤において最も重要な機能の一つです。
しかし、HA を有効にした直後、設定自体は間違っていないはずなのに、ホストに「警告(黄色い三角マーク)」が点灯し、以下のようなメッセージが表示されることがよくあります。
- 「このホストには現在管理ネットワークの冗長性がありません」
- 「このホストの vSphere HA ハートビートデータストア数は0で、必要数の2未満です」
これらは、物理 NIC やストレージのパスが1つしかない小規模環境や、検証環境などで頻発する仕様上の警告です。本番環境であれば物理的な構成を見直すべきですが、テスト環境などでは「意図的な構成」であるため、この警告を非表示にしたいケースも多いと思います。
- 警告の原因: なぜこれらの警告が表示されるのか(HA の仕組み)
- 警告の消し方: 詳細オプション(
das.ignore...)を使った具体的な設定手順 - 運用上の判断: 本番環境と検証環境での対応の違い
なぜ警告が表示されるのか?(HA の仕組みと要件)
vSphere HA が正常に機能するためには、ホスト間の通信(ハートビート)が途切れないことが絶対条件です。 もし、ホストが故障していないのに通信だけが切れた場合、HA が誤作動して正常な仮想マシンを再起動してしまう「スプリットブレイン」という危険な状態になりかねません。
これを防ぐために、VMware は以下の 2つの経路 を使って二重の監視を行っています。
- お互いに「生きてる?」という信号を送り合います。
- ここが1本のケーブルに依存していると、断線だけで全停止と誤判定されるため、「NIC の冗長化(2本以上)」 が強く推奨されます。
- ネットワークが死んだ時の「バックアップ連絡手段」です。共有ストレージへの書き込みを通じて生存を伝えます。
- 信頼性を確保するため、「データストア2つ以上」 が推奨されます。


この「2つの冗長性」が不足している環境(NIC が1つ、共有ストレージが1つなど)において、VMware は注意喚起のために警告を表示します。
管理ネットワークの冗長性がありません
HA を有効化した際、多くの環境で最初に表示されるのがこの警告です。
エラーメッセージ: 「このホストには現在管理ネットワークの冗長性がありません」
管理ネットワーク(Management Network)に割り当てられている物理 NIC(vmnic)が 1つしかない、または複数の NIC があってもすべて同じスイッチに接続されており、経路が単一障害点になっている状態です。
【推奨】物理的な解決策(NIC チーミング)
本番環境であれば、物理的な冗長構成をとるのが正解です。
- NIC を増やす
-
管理ネットワーク用の vSwitch に、物理 NIC を 2本以上 割り当てます(NIC チーミング)
- 物理スイッチを分ける
-
可能であれば、それぞれの NIC を異なる物理スイッチに接続し、スイッチ障害にも備えます。
【回避策】詳細オプションで警告を抑制する
ホームラボや物理ポートに空きがない小型サーバーなど、「NIC 1本で運用せざるを得ない」場合は、以下の詳細オプションを設定して警告を非表示にします。
| 設定キー | 設定値 |
das.ignoreRedundantNetWarning | true |
ハートビートデータストア数が2未満です
共有ストレージが少ない環境で発生する警告です。
エラーメッセージ: 「このホストの vSphere HA ハートビートデータストア数は0(または1)で、必要数の2未満です」
ネットワーク障害時の生存確認用バックアップ経路(ハートビートデータストア)として、vSphere HA はデフォルトで 2つ以上の共有データストア を要求します。マウントされている共有ストレージが 1つ以下の場合にこの警告が出ます。
【推奨】物理的な解決策(共有ストレージの追加)
信頼性を高めるためには、バックアップ経路を複数確保することが推奨されます。
- データストアを追加する
-
別の iSCSI ターゲットや NFS サーバーを用意し、ESXi ホストにマウントします。
- LUN を分ける
-
同じストレージ筐体でも、別の LUN を切り出してマウントすることで、論理的な冗長性を確保できる場合があります。
【回避策】詳細オプションで警告を抑制する
共有ストレージが 1台しかない NAS 環境や、vSAN 環境(ハートビートデータストアの考え方が異なる)などで、この要件を満たせない場合は、以下の設定で警告を無視します。
| 設定キー | 設定値 |
das.ignoreInsufficientHbDatastore | true |



この設定を行うと、データストアハートビートによる生存確認の信頼性が低下する(または機能しなくなる)ことを理解した上で適用してください。
設定手順: HA 詳細オプションの適用方法
それでは、実際に詳細オプションを設定して警告を消してみましょう。 vSphere Client(HTML5版)での操作手順は以下の通りです。
クラスタ設定へのアクセス
- vSphere Client にログインし、「ホストおよびクラスタ」ビューを開きます。
- 対象の クラスタ(警告が出ているホストが含まれるクラスタ)をクリックして選択します。
- 「設定(Configure)」 タブをクリックします。
- 左側のメニューから 「vSphere の可用性(vSphere Availability)」 を選択します。
- 画面右側の 「編集(Edit)」 ボタンをクリックします。
パラメータの追加手順
- 「クラスタ設定の編集」ウィンドウが開いたら、タブの中から 「詳細オプション(Advanced Options)」 を選択します。
- 「追加(Add)」 ボタンをクリックし、以下のパラメータを入力します。
| 設定キー(Key) | 値(Value) | 目的 |
das.ignoreRedundantNetWarning | true | 管理ネットワークの冗長性警告を無視 |
das.ignoreInsufficientHbDatastore | true | ハートビートデータストア不足警告を無視 |
- 入力が終わったら 「OK」 をクリックしてウィンドウを閉じます。
重要: 「vSphere HA 用に再構成」の実行
ここが最大のポイントです。設定を追加しただけでは警告は消えません。
- 警告が出ている ESXi ホスト を右クリックします。
- 「vSphere HA 用に再構成(Reconfigure for vSphere HA)」 を選択します。



数分待つと、ホストのステータスが更新され、黄色い警告マークが消えて正常(緑色)に戻ります。
運用上の注意点(本番環境でのリスク)
最後に、リスクについて触れておきます。
警告を非表示にするリスクとは
das.ignoreRedundantNetWarning を true に設定するのは、いわば 「火災報知器の電源を切る」 のと同じです。 もし、管理ネットワークのケーブルが1本しかない状態でこの設定をしていると、その1本が断線した瞬間に vSphere HA はホストの状態を正確に把握できなくなり、仮想マシンの二重起動(スプリットブレイン)や、障害時の再起動失敗を引き起こすリスクがあります。
本番環境では「非表示」ではなく「解消」を目指すべき理由
検証環境やホームラボであれば、コストやスペースの都合上、リスクを承知でこれらの設定を使うのは合理的です。 しかし、業務停止が許されない 本番環境 においては、この設定で逃げるのではなく、「物理 NIC の追加」 や 「ストレージ構成の見直し」 で根本解決することを目指してください。
まとめ
本記事では、vSphere HA 構成時によくある警告の消し方について解説しました。
- 警告の原因
-
HA の「二重監視(ネットワーク・ストレージ)」の要件を満たしていないため。
- 警告の消し方
-
詳細オプションで以下を設定し、「HA の再構成」を行う。
- ネットワーク:
das.ignoreRedundantNetWarning=true - データストア:
das.ignoreInsufficientHbDatastore=true
- ネットワーク:
- 運用の鉄則
-
これは検証環境向けの回避策です。本番環境では物理的な冗長化を優先しましょう。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。


