はじめに
2026 年 7 月 21 日(米国時間)、Google が新しい Gemini モデルを 3 本まとめて発表しました。Flash 系列の新世代となる Gemini 3.6 Flash、高スループット向けの Gemini 3.5 Flash-Lite、そしてサイバーセキュリティ特化の Gemini 3.5 Flash Cyber です。コーディング性能の未達を理由とする Gemini 3.5 Pro の延期報道からわずか 5 日後の発表であり、しかも登場したのは Pro ではなく、バージョン番号が Pro を追い越した「3.6」の Flash でした。
「なぜ 3.5 Pro より先に 3.6 Flash なのか」「3.6 という番号は何を意味するのか」「Pro はどうなるのか」。この記事では、こうした疑問に公式情報と報道を区別しながら答えつつ、3 モデルの位置づけと業務での使い分けを整理します。
- 発表された 3 モデル(3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyber)それぞれの位置づけと料金
- なぜ 3.5 Pro より先に 3.6 Flash が出たのか(バージョン体系の読み解き)
- 3.6 Flash の性能改善の中身(トークン効率・コーディング・computer use)
- 3.5 Flash Cyber が政府・信頼パートナー限定で提供される背景
- 延期中の 3.5 Pro の現在地と、初めて公式言及された Gemini 4 の状況
結論を先に述べると、3.6 Flash は延期中の 3.5 Pro の代替として出てきたフラッグシップではなく、Flash 系列を独立したペースで進化させる方針の表れと読むのが自然です。性能面の訴求点は最高性能ではなくトークン効率とコストで、3.5 Flash より高性能かつ低価格という位置づけです。3.5 Pro は引き続きパートナーとのテスト段階にあり、新しい提供時期は今回も示されませんでした。一方で、次世代の Gemini 4 の事前訓練開始が初めて公式に言及されており、Google のモデル戦略を読むうえで新しい材料が加わっています。
発表の全体像|3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyber の 3 本立て
今回の発表は、性能の頂点を競うフラッグシップのリリースではなく、エージェントを本番運用する開発者・企業向けに「効率・レイテンシ・信頼性」を訴求する構成です。まず 3 モデルの全体像を一覧で押さえます。
各モデルの位置づけ(一覧)
| モデル | 位置づけ | 料金(100 万トークン) | 提供範囲 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3.6 Flash | Flash 系列の主力(ワークホース)。コーディング・知識労働・マルチモーダルを強化しつつトークン効率を改善 | 入力 $1.50 / 出力 $7.50 | Gemini API(AI Studio)・Gemini Enterprise・Gemini アプリ等で提供開始 |
| Gemini 3.5 Flash-Lite | 3.5 世代最速・最安。高スループット・低レイテンシのタスク向け | 入力 $0.30 / 出力 $2.50 | Gemini API 等で提供開始。Google 検索にも順次展開 |
| Gemini 3.5 Flash Cyber | 3.5 Flash をベースに脆弱性の発見・修正へファインチューニングした特化モデル | 非公開 | 一般提供なし。政府・信頼パートナー限定のパイロット(CodeMender 経由)で近日提供 |
このうち一般ユーザー・開発者が今日から使えるのは 3.6 Flash と 3.5 Flash-Lite の 2 つです。3.6 Flash は発表と同日に GitHub Copilot でも段階的なロールアウトが始まっており、Copilot の有料プラン(Pro 以上)でモデルピッカーから選択できるようになる予定です。

そして、多くの読者が気になっているであろう 3.5 Pro について、発表内では次のように言及されています。
参考: Introducing Gemini 3.6 Flash, 3.5 Flash-Lite, and 3.5 Flash Cyber(Google 公式)
“we plan to make it broadly available as soon as it’s ready”
(準備が整い次第、広く提供する予定である)
https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-6-flash-3-5-flash-lite-3-5-flash-cyber/
「パートナーとテスト中」という 1 週間前の広報コメントから状況は変わっておらず、具体的な提供時期は今回も示されていません。
なぜ 3.5 Pro より先に 3.6 Flash なのか(バージョン体系の読み解き)
「未リリースの 3.5 Pro を差し置いて 3.6 Flash が出る」というバージョン番号のねじれについて、Google は今回の発表で明示的な説明をしていません。そのため、ここからは公開情報に基づく筆者の読み解きになります。
まず事実として、Flash 系列はこの 2 か月で独自に世代を進めています。3.5 Flash は 5 月 19 日の Google I/O でリリースされ、その後 computer use のネイティブ対応などの機能追加を経て、今回わずか 2 か月で 3.6 Flash に更新されました。公式ブログも 3.6 Flash を「3.5 Flash への開発者・顧客フィードバックを直接反映したモデル」と説明しており、Pro との世代同期ではなく、Flash 系列単独の改善サイクルで番号が進んでいることが分かります。
この動きは、OpenAI が GPT-5.6 で導入した「世代番号とは別に、Sol・Terra・Luna という能力ティアがそれぞれ独自のペースで進化する」という体系と同じ発想です。つまり「3.5 世代」という括りで Pro と Flash が揃って出る従来型のバージョニングから、ティア(Pro / Flash / Flash-Lite)ごとに準備ができたものから出す方式へ、Google も事実上移行しつつあるという解釈です。この見方に立てば、3.6 Flash の登場は 3.5 Pro の中止やスキップを意味せず、両者は並行して別々のスケジュールで動いていることになります。
もう 1 つ、タイミングの観点も無視できません。今回の発表は、コーディング性能の未達を理由とする延期報道(7 月 16 日)で Alphabet 株が下落した直後、かつ 7 月 22 日の四半期決算の前日に行われました。Pro の遅れという否定的な話題に対して、「Flash 系列は進んでいる」「Gemini 4 の事前訓練も始まっている」という前向きな材料を決算前に示す意図があった可能性は、状況からの推測として考慮に値します(これは公式に確認されたものではありません)。延期報道の経緯と、Pro が超えるべき性能ラインの分析は、関連記事『Gemini 3.5 Pro はいつ出る|延期の理由と超えるべき性能ラインの整理』を参照してください。
Gemini 3.6 Flash の性能と料金
このセクションでは、主力モデルである 3.6 Flash の中身を見ていきます。ポイントは、性能向上と値下げが同時に行われており、改善の主軸が「賢さの上限」ではなく「トークン効率とコスト」に置かれていることです。
3.5 Flash からの改善点(トークン効率・コーディング・computer use)
公式発表で示された 3.5 Flash との比較は次のとおりです。
- トークン効率
-
Artificial Analysis Index の測定で出力トークン消費が 17% 減。ベンチマークによってはさらに大きく、DeepSWE では最大 65% の削減を確認したとされています。マルチステップのワークフローで、推論ステップ数とツール呼び出し回数自体が減る点も挙げられています
- コーディング
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実コードベースでの長期的なエンジニアリング作業を測る DeepSWE で 49%(3.5 Flash は 37%)。不要なコード編集や実行ループの減少が改善点として説明されています。ML 研究タスクの MLE Bench でも 63.9% 対 49.7% と大きく改善
- computer use
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OSWorld-Verified で 83.0%(同 78.4%)。あわせて computer use が Gemini API と Gemini Enterprise の組み込みツールになり、独自の中間レイヤーを作らずにエージェントへ画面操作をさせやすくなりました
- 知識労働
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実世界の業務タスク品質を測る GDPval-AA v2 で 1421 Elo(同 1349)
- 知識カットオフ
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2025 年 1 月から 2026 年 3 月へ大幅に前進
料金は入力 $1.50 / 出力 $7.50(100 万トークンあたり)で、3.5 Flash の出力 $9 から値下げされています。性能向上・トークン消費減・単価引き下げの 3 つが重なるため、エージェントタスク 1 件あたりの実効コストは公称値以上に下がる構造です。
一方、賢さの上限が大きく上がったわけではない点は、第三者計測からも読み取れます。
参考: Gemini 3.6 Flash – Intelligence, Performance & Price Analysis(Artificial Analysis)
“Gemini 3.6 Flash (high) scores 50 on the Artificial Analysis Intelligence Index”
(Gemini 3.6 Flash(high 設定)は Artificial Analysis Intelligence Index で 50 を記録している)
https://artificialanalysis.ai/models/gemini-3-6-flash
3.5 Flash の同指標は 50.2 であり、総合知能スコアはほぼ横ばいです。つまり 3.6 Flash は「同等の知能を、より少ないトークン・少ない手数・低い単価で回すためのモデル」であり、Pro の遅れを埋める性能ジャンプではなく、Flash の役割(本番運用のワークホース)を磨いたリリースと理解するのが正確です。なお、Artificial Analysis の実測では出力速度 303.6 トークン/秒と高速な一方、最初のトークンまでの時間(TTFT)は 11.54 秒と同価格帯の中では長めに計測されており、対話的な用途では推論設定の調整が必要になる可能性があります。

競合の同価格帯モデルとの位置関係
料金だけを並べると、3.6 Flash は GPT-5.6 の下位 2 モデルのちょうど間に入ります。
| モデル | 入力(100 万トークン) | 出力(100 万トークン) |
|---|---|---|
| GPT-5.6 Luna | $1 | $6 |
| Claude Haiku 4.5 | $1 | $5 |
| Gemini 3.6 Flash | $1.50 | $7.50 |
| GPT-5.6 Terra | $2.50 | $15 |
総合知能の公表値(Artificial Analysis Intelligence Index)で見ると、3.6 Flash の 50 に対して GPT-5.6 Luna が 51.2、Terra が 55 であり、3.6 Flash は Luna とほぼ同格・Terra の下という位置になります。一方、エージェント的コーディングの DeepSWE では、Google 公表の 49% に対して OpenAI 公表の Luna は 67.2% と開きがあります。ベンダーごとに測定条件が異なるため数値の直接比較は割り引く必要がありますが、「効率特化の小型・中型モデル」という同じ土俵に競合がひしめいており、Flash はその中で価格面の中間帯を取りにきているという構図は押さえておく価値があります。GPT-5.6 側の 3 ティアの詳細は、関連記事『GPT-5.6 リリース|Sol・Terra・Luna の違いとインフラ業務での使い分け』を参照してください。
なお、3.6 Flash には CBRN(化学・生物・放射性物質・核)およびサイバー攻撃悪用の領域で強化されたセーフガードが実装されており、ジェイルブレイクへの耐性を高めつつ、正当な用途での拒否は最小化するよう訓練されたと説明されています。詳細は DeepMind のモデルカードで公開されています。
3.5 Flash-Lite|高スループット向けの位置づけ
3.5 Flash-Lite は、モデルの賢さよりも処理量と速度が効く用途(エージェント検索、ドキュメント処理、大量の定型タスク)に向けた最下層のモデルです。
参考: Google launches Gemini 3.6 Flash and 3.5 Flash-Lite, teases Gemini 4(9to5Google)
“a significant step up in coding and agentic tasks”
(コーディングとエージェントタスクにおける大幅な前進)
https://9to5google.com/2026/07/21/gemini-3-6-flash-launch/
要点は次のとおりです。
- 速度と価格
-
Artificial Analysis の測定で 350 トークン/秒。料金は入力 $0.30 / 出力 $2.50 と、3.6 Flash のさらに 5 分の 1 以下の入力単価
- 前世代(3.1 Flash-Lite)比
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Terminal-Bench 2.1 で 54% 対 31%、長コンテキストの GDM-MRCR v2 で 72.2% 対 60.1%、GDPval-AA v2 で 1140 対 642 と、いずれも大幅に改善
- 上位世代への逆転
-
SWE-Bench Pro(54.2% 対 49.6%)や OSWorld-Verified(74.0% 対 65.1%)では、1 世代前の中位モデルである 3 Flash を上回る公表値
- 運用面
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thinking level(推論の深さ)を用途に応じて設定でき、低レイテンシ優先の大量処理から、サブエージェントの多段ワークフローまで同一モデルでカバーする設計。computer use も組み込みツールとして利用可能
- 展開先
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Gemini API で提供開始。Google 検索にも順次展開
インフラエンジニアの実務で言えば、大量のログの一次分類、監視アラートの要約、設定ファイルの機械的な変換・検査といった「数で殴る」タスクの受け皿です。Lite クラスで Terminal-Bench 2.1 が 54% まで来ている点は、簡単な CLI 操作を伴う自動化をこの単価帯に落とせる可能性を示しており、ワークロードによっては上位モデルからの置き換え検証をする価値があります。
3.5 Flash Cyber|政府・信頼パートナー限定という選択
今回の発表でセキュリティエンジニアが最も注目すべきなのが、3 つ目のモデルである Gemini 3.5 Flash Cyber です。性能もさることながら、一般提供を最初から想定しない「限定アクセス」での展開という提供形態そのものに、業界の変化が表れています。
CodeMender との組み合わせと評価結果
3.5 Flash Cyber は、3.5 Flash をベースに脆弱性の発見・検証・修正へファインチューニングした特化モデルです。単体で提供されるのではなく、DeepMind が 2025 年 10 月に発表したコードセキュリティエージェント「CodeMender」の内部でのみ動作します。
設計思想は「大きなモデルを 1 回呼ぶのではなく、安いモデルを何回も呼ぶ」というものです。深いフローの発見には膨大な実行パスの探索が必要になるため、CodeMender は複数の 3.5 Flash Cyber サブエージェントを並列に走らせ、多数のコードパスを分析した結果を 1 つのレポートに統合します。
参考: Introducing Gemini 3.5 Flash Cyber(Google DeepMind 公式)
“the overall agent achieved competitive performance against significantly larger models on CyberGym”
(エージェント全体として、はるかに大規模なモデルに対して競争力のある性能を CyberGym で達成した)
https://deepmind.google/blog/introducing-gemini-3-5-flash-cyber/
公表されている評価結果の要点は次のとおりです。
- CyberGym
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1 レポートあたり最大 5 回の呼び出し構成で 83.2% を記録。報道によれば OpenAI の GPT-5.5-Cyber(85.6%)に 2 ポイント強まで迫る水準で、モデル規模とトークン単価を考慮すると効率面の優位が Google の訴求点です(競合値はベンダー自己申告値をソースとする旨が公式に注記されています)
- Big Sleep チームによる評価
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Chrome や Safari といった複雑なコードベースを対象とした内部評価で、汎用の 3.5 Flash・3.6 Flash を大きく上回る
- V8 エンジンのコミットスキャン
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55 件のユニークな確認済み問題を発見。汎用 3.5 Flash の 47 件、Claude Opus 4.6 の 36 件を上回り、他モデルが検出できなかった問題を 10 件含む
- 実運用テスト
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Google の Cloud Vulnerability Research チームが公開 API のリモートコード実行(RCE)系のフローを 2 時間以内に発見した事例が紹介されています
背景として、Google は OSV.dev(70 万件超のオープンソース脆弱性データベース)や 10 年以上の OSS-Fuzz の蓄積を持っており、セキュリティ専門家の実際の作業を学習させる訓練データの質で優位があると説明されています。
3 社に共通し始めた「サイバー能力の限定アクセス」パターン
提供形態に目を向けると、3.5 Flash Cyber は一般ユーザー・一般企業には提供されません。デュアルユース性(攻撃にも防御にも使える性質)を理由に、政府と信頼パートナーに限定したパイロットプログラムとして CodeMender 経由でのみ提供されます。DeepMind の広報は、将来的にレッドチーミング機能やエンドツーエンドの企業防御への拡張を計画しているとも述べています。
この形態は、2026 年に入ってからの各社の動きと明確に重なります。3 社の「サイバー特化能力」の提供方式を並べると次のようになります。
| 項目 | Anthropic(Mythos 5) | OpenAI(Trusted Access for Cyber) | Google(3.5 Flash Cyber) |
|---|---|---|---|
| 対象能力 | セーフガードを解除した基盤モデル | GPT-5.6 の高度な防御用途 | 脆弱性発見・修正の特化モデル |
| アクセス条件 | Project Glasswing での審査制(サイバー防御者・重要インフラ運用者) | 本人確認・組織審査+ハードウェアパスキー必須化 | 政府・信頼パートナー限定パイロット |
| 制御の主体 | モデル選択と審査(一般向けは分類器でブロック) | アカウント検証と地域・主体の制限 | エージェント(CodeMender)内にモデルを封じ込め |
3 社に共通するのは「フロンティア級のサイバー能力は一般公開せず、検証済みの主体に段階的に開放する」という方針です。一方で制御の実装は三者三様で、Anthropic はモデル前段の分類器、OpenAI はアカウントレベルの検証、そして Google はモデルをエージェントの内側に封じ込め、エージェント側でガードレールを設けるという設計を採っています。用途をエージェントの動作範囲に物理的に限定できる点で、Google の方式は運用上の制御がかけやすい形と言えます。Anthropic のブロック 4 分類と CJS フレームワークの詳細は、関連記事『Claude Fable 5 のサイバーセーフガード詳細と CJS フレームワーク』を参照してください。
Fable 5 の停止事例が示したとおり、この領域は米政府の関心が最も強い部分でもあります。最初から政府を提供先の中心に据えた Google の設計は、規制リスクを先回りして織り込んだ展開方式という見方もできます(これは筆者の見解であり、Google が公式に説明したものではありません)。
インフラエンジニア目線の使い分けと今後
最後に、今回の発表を踏まえた業務での使い分けと、残る 2 つの論点(3.5 Pro と Gemini 4)を整理します。
業務での使い分け(Flash・Flash-Lite と他社モデル)
Pro 不在という前提のもと、現時点での使い分けは次のように整理できます。
| 業務タスク | 第一候補 | 理由 |
|---|---|---|
| 大量ログの一次分類・アラート要約・定型変換 | 3.5 Flash-Lite | 350 トークン/秒・最安単価。数で処理するタスクの受け皿 |
| エージェントの本番運用(監視・自動化・ドキュメント処理) | 3.6 Flash | トークン効率と computer use 組み込み。実効コストが下がる主戦場 |
| エージェンティックコーディング・効率重視の開発 | GPT-5.6(Terra/Sol) | Coding Agent Index 首位。DeepSWE 系の公表値でも優位 |
| 実コードベースの大規模改修・品質重視のレビュー | Claude(Fable 5) | SWE-Bench Pro 80% の水準は今回の発表後も揺らがない |
| 長大ドキュメント・動画を含むマルチモーダル処理 | Gemini(3.6 Flash) | 従来からの強み。知識カットオフが 2026 年 3 月と最新である点も利点 |
今回の発表で変わったのは、「Gemini を選ぶ理由」が当面はフラッグシップの賢さではなく、エージェント運用の実効コストと Google エコシステムへの組み込みやすさになったことです。GitHub Copilot への同日展開や Google 検索への Flash-Lite 投入を含め、Google は「どこでも動いている安くて速いモデル」という面の取り方をしています。逆に、単発タスクの最高品質を求める用途では、引き続き GPT-5.6 Sol や Claude Fable 5 が候補になります。
3.5 Pro の現在地と Gemini 4 の初言及
3.5 Pro については、今回も「パートナーとテスト中、準備でき次第提供」という表現にとどまり、延期報道で示された懸念に対する回答は事実上持ち越しになりました。
参考: Google releases three new Gemini models — but no 3.5 Pro(TechCrunch)
“the continued absence of Gemini 3.5 Pro raises fresh questions about its AI strategy”
(Gemini 3.5 Pro の不在が続いていることは、同社の AI 戦略に新たな疑問を投げかけている)
https://techcrunch.com/2026/07/21/google-releases-three-new-gemini-models-but-no-3-5-pro/
一方で注目すべきは、次世代モデル Gemini 4 について「これまでで最も野心的な事前訓練を開始した」と初めて公式に言及されたことです。ここから、リリース前の 3.5 Pro と訓練中の Gemini 4 が並行して走っていることが確定しました。
筆者の見立てとしては、この並行状態は 3.5 Pro のリリースウィンドウが有限であることを意味します。事前訓練の開始から提供までには通常相応の期間があるため直近で競合するわけではありませんが、3.5 Pro の遅れがさらに長引けば、「3.5 Pro を出すより Gemini 4 世代に注力する」という判断があり得る状況になってきます。コーディング性能のギャップ(DeepSWE 系の指標で示した水準差)が訓練データ更新だけでは埋まらなかったという報道を踏まえると、3.5 Pro が出るか、Gemini 4 に吸収されるかは、今後数か月の観測ポイントと言えます。いずれにせよ、Flash 系列が独立して進化する体系に移行した以上、「Pro を待たずに Flash で運用を組む」判断が現実的になったのが今回の発表の実務的な意味です。
まとめ
今回の発表は、フラッグシップ不在という状況を「効率特化の Flash 系列を独立して進化させる」という形で乗り切る、Google のモデル戦略の転換点と言えます。3.6 Flash という番号のねじれは Pro のスキップではなく、ティアごとに準備ができたものから出す体系への移行であり、GPT-5.6 の Sol・Terra・Luna と同じ発想です。実務面では、Pro を待たずに Flash でエージェント運用を組む判断が現実的になりました。
- Gemini 3.6 Flash・3.5 Flash-Lite・3.5 Flash Cyber の 3 モデルが同時発表
- 3.6 Flash は性能向上とトークン効率 17% 減と値下げを同時に実現
- 番号のねじれはティア単位で独立進化する体系への移行と解釈できる
- 3.5 Flash Cyber は政府・信頼パートナー限定の CodeMender 経由で提供
- サイバー特化能力の限定アクセスは Anthropic・OpenAI を含む 3 社共通の型に
- 3.5 Pro は引き続きテスト中で、提供時期は今回も示されず
- Gemini 4 の事前訓練開始が初めて公式に言及された
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

