はじめに
F5 BIG-IP を運用していて、予期せぬエラーや障害に見舞われたことはありませんか? そんな時、F5 のサポート窓口に問い合わせると、必ずと言っていいほどこう言われるはずです。
「まずは QKView(キューケービュー)を送ってください」
QKView とは、いわば BIG-IP の 「健康診断書(カルテ)」 のようなものです。これがないと、お医者さん(サポート)も正確な診断ができません。 本記事では、トラブルシュートの第一歩となる QKView の取得方法について、初心者向けの GUI 手順 と、実務で役立つ CLI 手順 の両方を解説します。
※本記事の手順は BIG-IP VE 16.x / 17.x をベースに作成していますが、基本的な手順は他のバージョンでもほぼ共通です。
- GUI(ブラウザ)から簡単に QKView を取得する方法
- CLI(コマンド)で素早く生成してダウンロードする方法
- 解析ツール F5 iHealth を使ったセルフチェックの手順
QKView と iHealth とは?
作業に入る前に、これらが「何のためにあるのか」を整理しておきます。
QKView(診断データ)
BIG-IP システムの構成情報、ログファイル、ハードウェアのステータスなどを、ギュッと一つにまとめた XML 形式の診断ファイル です。 単なる「ログの詰め合わせ」ではなく、OS の状態や過去の統計情報まで含まれているため、システムの全容を把握するのに不可欠なデータです。
iHealth(解析ツール)
取得した QKView ファイルを解析するための、F5 社が提供するクラウド型サービス(無料) です。 QKView をこのサイトにアップロードすると、AI のような診断エンジンが中身をチェックし、以下のような判定を自動で行ってくれます。
- 「この設定、間違っていませんか?」
- 「既知のバグ(CVE脆弱性など)に該当していますよ」
- 「CPU の負荷が限界に近いようです」

QKView は「サポートに提出するためだけ」のものではありません。 問い合わせる前に自分で iHealth にアップロードして確認することで、サポートからの回答を待たずに原因が特定できたり、解決策が見つかったりすることも多々あります。
方法①: GUI から取得する(基本編)
まずは、ブラウザ操作だけで完結する最もオーソドックスな方法です。 コマンド操作に慣れていない方や、急いでいない場合はこの手順が確実です。
BIG-IP の管理画面(HTTPS)にログインし、左メニューから以下の順に進みます。
- System > Support
画面右側の [New Support Snapshot] をクリックします。


ここで、「Health Utility」が選択されていることを確認し、実行モードを選びます。ここが運用の分かれ道です。
Generate and Upload QKView to iHealth
- QKView を生成し、そのまま F5 のサイト(iHealth)へアップロードまで行います。
- 便利ですが、BIG-IP がインターネットに接続できる環境であることや、F5 アカウント情報の入力が必要です。


Generate QKView(推奨)
- QKView を生成し、一旦 PC にファイルを保存(ダウンロード) します。
- 【推奨理由】 多くの企業では、セキュリティポリシーによりサーバーからの直接インターネット接続が禁止されています。そのため、「手元に保存」してから手動でアップロードする 手順が一般的です。
最後に [Start] をクリックすると生成が始まります。完了後、表示されるリンクから .qkview ファイルをダウンロードしてください。




方法②: CLI で生成して GUI で落とす(実務編)
実務の現場では、GUI ではなく コマンドライン (CLI) を使うケースも多々あります。



なぜ CLI を使うのか?
・動作が軽い: 障害発生時など、BIG-IP の負荷が高くて GUI が重い(開かない)時でも、CLI ならサクサク動きます。
・生成が速い: GUI の描画処理がない分、コマンド一発で素早く生成完了します。
SSH(Tera Term 等)で BIG-IP にログインし、以下のコマンドを実行するだけです。
qkview※オプションなしで実行すると、デフォルトで /var/tmp/ 配下に ホスト名.qkview というファイルが生成されます。
ここで気を付けておきたい点として「ダウンロードの注意点」があります。
- 以前は WinSCP 等で接続して
/var/tmp/から直接引っこ抜くのが主流でした。 - しかし最近のバージョンや環境では、セキュリティ強化(tmsh シェル制限など)により、SFTP/SCP 接続が拒否されるケースが増えています。
- 無理に WinSCP の設定をいじる必要はありません。「生成は CLI、ダウンロードは GUI」 という合わせ技を使いましょう。
- CLI で
qkviewコマンドが正常終了すると、実は GUI の「System > Support」画面にもその結果が反映されます。 - GUI を開き、作成されたスナップショット一覧からダウンロードボタンを押すだけで、安全かつ確実にファイルを取得できます。
取得した QKView の活用(F5 iHealth)
QKView ファイルを取得しても、そのままテキストエディタで開いて読むことは困難です(XMLやログの圧縮ファイルの塊だからです)。 このファイルを F5 iHealth にアップロードすることで、初めて「診断レポート」として活用できます。
ブラウザで F5 iHealth (ihealth.f5.com)にアクセスし、F5 アカウントでログインします。 トップ画面の [Upload] ボタンを押し、先ほどダウンロードした .qkview ファイルをドラッグ&ドロップします。
アップロードが完了して解析が終わると、ダッシュボードが表示されます。 左メニューの [Diagnostics] (または Heuristics) をクリックすると、以下のように重要度別に診断結果が表示されます。
- [High] (赤色)
-
緊急度・高。システムの停止に直結する設定ミスや、重大な脆弱性(CVE)に該当している可能性があります。最優先で内容を確認し、対処が必要です。
- [Midium](黄色)
-
推奨事項。 「この設定は推奨値ではありません」といった警告や、軽微なバグ情報が含まれます。メンテナンスのタイミングで修正を検討しましょう。
- [Low](青色/緑色)
-
情報。ベストプラクティスの案内などです。



iHealth は、ただ「悪いところ」を指摘するだけではありません。 「この設定ミスを直すための F5 公式ナレッジベース(AskF5)へのリンク」までセットで教えてくれます。これにより、調査時間を大幅に短縮できます。
まとめ
本記事では、BIG-IP のトラブルシューティングに欠かせない QKView の取得方法について解説しました。
- トラブル時は迷わず QKView
- サポートに問い合わせる際は必ず必要になります。まずは慌てず、GUI または CLI でサクッと取得しましょう。
- 普段から「健康診断」を
- 障害が起きてからではなく、平時に iHealth でチェックを行うことで、潜在的なリスク(High アラート)を事前に潰すことができます。
BIG-IP は複雑な機器ですが、QKView と iHealth を活用して、安定稼働を目指しましょう。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。








