はじめに
生成 AI がログ分析や情報収集、コード作成に使われるようになり、「エンジニアの仕事は AI に置き換わるのか」という問いを目にする機会が増えました。一方で、AI とエンジニアの雇用に関する数字は見出しや SNS で断片的に語られることが多く、何を尋ねた結果なのかが分かりにくい状態です。
本記事では、レバテックが 2026 年 7 月に公表した国内調査の結果を中心に、海外の参考情報として State of Devs 2026 を添えて、AI がエンジニアの仕事やキャリアに与えている変化を整理します。あわせて、インフラエンジニアである私自身が業務で AI を使うなかで感じている変化も紹介します。
- AI による仕事の代替を、国内のエンジニアがどう捉えているか
- AI の影響による転職意識と、担当業務・評価に表れている変化
- 今回確認した資料から、AI による失業の割合が分かるか
- 調査の数字を読むときに区別したい 4 つの点
- AI の出力を確認する観点と、業務・スキルの見直し方
結論から述べると、国内調査からは、AI による仕事の代替について見方が分かれていること、約半数が AI の影響で転職を意識したこと、6 割近くが職場で AI 活用力による差を感じていることが確認できます。一方で、今回確認した資料からは、日本のエンジニアのうち AI が原因で仕事を失った人の割合は分かりません。紹介する数字の多くは「意識」「予想」「実感」を尋ねたもので、失業の実態を測ったものではありません。
以下では、「調査で確認できた事実」「将来への予想・不安」「筆者の経験」「編集上の考察」を区別して記載します。
日本のエンジニアは AI による仕事の代替をどう捉えているか
国内の状況は、レバテックが公表した次の 2 件の調査結果で確認できます。いずれも 20〜59 歳の IT エンジニアを対象としたインターネット調査です。
| 調査名 | 公表日 | 主な設問 |
|---|---|---|
| AI時代におけるITエンジニアのキャリア意識・実態調査 | 2026 年 7 月 7 日 | 仕事の代替への見方、AI の影響による転職意識、強化したいスキル |
| ITエンジニアのAI活用に関する実態調査 | 2026 年 7 月 13 日 | AI 活用能力による格差の実感、格差が表れる点、将来の年収格差の予想 |
2 件とも、調査期間は 2026 年 5 月 26〜28 日、有効回答数は 572 名と公表されています。調査期間・対象・回答数が一致しているため、本記事では独立した 2 つの調査による裏付けとしては扱わず、回答数も合算しません。なお、調査主体のレバテックは、IT 人材の転職・採用支援などを手がける事業者です。
「代替されると思う」は 37.7%、見方は分かれる
AI の進化によって IT エンジニアの仕事が代替されると思うかを尋ねた設問では、肯定側の選択肢を合算した「そう思う」が 37.7%、否定側の選択肢を合算した「そう思わない」が 27.8%、「どちらとも言えない」が 34.4% でした。賛否のどちらとも決めていない回答が 3 割以上あり、見方は分かれています。
参考: レバテック「AI時代におけるITエンジニアのキャリア意識・実態調査」
「ITエンジニアの仕事はAIに代替されると思うか」
https://leverages.jp/news/2026/0707/5918/
「代替されると思う」と答えた 216 名の理由(複数回答)では、少人数でも開発が可能になるため(65.7%)、コーディング・実装業務の自動化が進むため(62.0%)が上位でした。「代替されないと思う」と答えた 159 名の理由(複数回答)では、AI では代替できない業務が残るため(63.5%)、顧客理解や要件整理は人間が担う必要があるため(38.4%)が多く挙げられています。
この設問は職業としての「IT エンジニアの仕事」が代替されるかという見方を尋ねたもので、回答者本人が失業を恐れている割合ではありません。
AI の影響で転職を意識した 49.5%、実際の転職は 5.6%
AI の普及・進展が転職意向に与えた影響を尋ねた設問では、全体の 49.5% が AI の影響で転職を意識したと集計されています。ただし、この 49.5% は行動の段階が異なる 3 つの回答の合計です。
| 回答 | 割合(全回答者) | 段階 |
|---|---|---|
| 実際に転職した | 5.6% | 転職を実行済み |
| 転職活動中・検討中 | 17.3% | 活動中または検討段階 |
| 転職を考えたことはあるが行動していない | 26.6% | 考えた段階 |
| AI の影響で転職を意識した(合計) | 49.5% | 上記 3 つの合計 |
年代別では、20 代で「実際に転職した」が 13.9%、「転職活動中・検討中」が 22.9% と、他の年代より高い結果でした。年代別の回答者数は 20 代 144 名、30 代 140 名、40 代 140 名、50 代 148 名で、各年代 150 名に満たないため、年代間の差は幅を持って読む必要があります。
ここでの「転職」は本人の意思による職場の変更を含む回答で、AI によって解雇された人の割合を示すものではありません。転職した人のなかに解雇を経た人が含まれるかどうかも、公表資料からは判別できません。
AI の影響で転職を考えたことがある 283 名に、転職を考えたきっかけを尋ねた追加質問では、AI による業務代替リスクを感じた(29.0%)が最多で、より上流工程や高度なスキルを身につける必要性を感じた(25.8%)が続きました。この設問の回答形式(単一回答か複数回答か)は、公表資料では確認できていません。
担当業務の範囲や評価に表れる「AI 格差」の実感
7 月 13 日公表の調査では、職場で AI 活用スキルによる「AI 格差」が生まれていると感じるかを尋ねています。調査では、AI 格差を次のように定義しています。
参考: レバテック「ITエンジニアのAI活用に関する実態調査」
「AIの活用能力の差が、業務評価・年収・キャリアなど目に見える処遇の違いにつながっている状態」
https://leverages.jp/news/2026/0713/5921/
「そう感じる」(21.7%)と「ややそう感じる」(37.6%)の合計は 59.3% でした。格差を感じると回答した 339 名に、格差が表れている点を尋ねた設問(複数回答)では、担当できる業務範囲の差(51.3%)、成果の評価・昇進スピードの差(39.5%)、アサインされる業務レベルの差(32.4%)が上位でした。
将来については、AI を使いこなせるエンジニアとそうでないエンジニアの年収格差が「拡大すると思う」「やや拡大すると思う」と答えた人が合計 65.0% でした。いずれも回答者の実感と将来の予想であり、処遇や年収の差を客観的に測定した結果ではありません。なお、AI 活用力が市場価値を左右する要素の一つになるという見方は、回答結果ではなく調査主体の見解です。
強化したいスキルは要件定義・設計・AI の評価
今後強化したいスキルでは、要件定義・上流工程スキル(38.8%)が最多で、システム設計・アーキテクチャ設計(33.0%)、AI モデルの評価・品質管理(28.7%)が続きました。コーディング力は 9.6% です。
実装そのものより、方向性を決める工程や、結果の品質を確かめる工程への関心が高いことがうかがえます。ただし、回答者の職種構成は公表資料の本文から分からないため、ネットワーク・インフラ職にそのまま当てはまるとは限りません。
State of Devs 2026 で見る海外の状況
State of Devs は、Devographics が運営する開発者向けの任意参加型オンライン調査です。2026 年版は 2026 年 7 月 5 日から 9 月 5 日まで実施され、5,463 件の回答を集めています。回答者は過去の State of JS や State of CSS などの回答者と SNS 経由の参加者が中心で、すべての設問が任意回答です。
参考: State of Devs 2026(About)
“snapshot of a specific subset of developers”
(開発者の特定の一部を切り取ったもの)
https://2026.stateofdevs.com/en-US/about/
居住国では米国、ドイツ、英国、フランスなどが上位で、日本語を母語とする回答者は 20 人です。また、主催者は、居住国が日本の回答者に日本以外で生まれた人が多い点について、日本生まれの層に調査が十分に届いていないことによる可能性が高いと説明しています(Demographics)。このため、State of Devs の結果から日本のエンジニア全体の割合を推定することはできません。
本記事では、雇用とキャリアに関係する 5 つの設問だけを取り上げます。割合は、Career と AI の各ページに掲載された回答数から、設問ごとの回答者数を分母として本記事で算出したものです。
| 設問 | 尋ねた内容 | 結果(分母) |
|---|---|---|
| Layoffs | これまでに解雇(レイオフ)されたことがあるか。原因は問わない | 過去 12 か月以内 9.3%、それ以前 25.0%、経験なし 65.7%(5,299 件) |
| Job Security | 今後 5 年以内に、自分では制御できない理由で仕事を変えざるを得なくなる可能性 | 「どちらかといえば高い」「非常に高い」の合計 42.4%(5,310 件) |
| Career Security | 今後 5 年以内に、自分では制御できない理由でキャリアを変えざるを得なくなる可能性 | 同じく合計 26.2%(5,334 件) |
| AI Risks | AI 全般のリスクで特に懸念するもの(最大 4 つまで選択) | Job displacement(雇用の代替)54.7%、環境への影響 54.9% に次ぐ 2 位(4,849 件) |
| Company AI Stance | 勤務先の AI 利用に対する姿勢 | AI 利用を推奨している勤務先は 82.7%。勤務先の推奨によって利用が増えたと答えた人は、全回答者の 30.3%。抑制している勤務先は 3.2%(4,625 件) |
Layoffs、Job Security、Career Security は、いずれも原因を AI に限定していません。AI Risks の Job displacement は、AI による雇用代替を社会全体のリスクとして懸念するかを示す選択肢で、回答者本人の失業不安や失業経験とは異なります。
なお、結果サイトの概要文には解雇経験を「約 4 分の 1」、直近の解雇を「過去 9 か月以内」とする記述があり、選択肢が「過去 12 か月」となっている Layoffs のグラフから算出した値と一致しません。本記事ではグラフの回答数を使用しています。
任意参加型の海外調査と国内のインターネット調査は、回答者の集め方も設問も異なるため、日本と海外の差として比較せず、参考情報として扱うことをおすすめします。
AI によって仕事を失った人の割合は分かるのか
今回確認した資料からは、日本のエンジニアのうち AI によって仕事を失った人の割合は分かりません。
レバテックの調査は AI を理由とした解雇・失業の経験を尋ねておらず、State of Devs の Layoffs も原因を AI に限定していません。執筆時点(2026 年 10 月)に追加で調べた範囲でも、国内の IT エンジニアを対象に、AI を理由とした解雇・失業の経験を直接尋ねた一次調査は見つけられませんでした。これは調査が存在しないと断定するものではなく、今回確認した資料では分からないという意味です。
数字を読むときに区別したい 4 つの点
- 作業の代替と、職そのものの消失
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一部の作業を AI が担うようになっても、その職がなくなるとは限りません。「代替されると思うか」という問いでは、どの範囲の代替を想定するかは回答者に委ねられています。
- 代替されるという予想と、本人の失業への不安
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職業として代替が進むと考えることは、自分が職を失うと考えていることと同じではありません。
- 転職と、解雇・失業
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転職には本人の選択が含まれます。AI の影響による転職意識の数字を、解雇された人の割合と読み替えることはできません。
- 一般的な雇用への懸念と、自分の雇用への懸念
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社会全体で雇用が代替されることへの懸念は、回答者本人の雇用不安を直接示すものではありません。
代表的な数字が示すことと示さないこと
ここまでに紹介した主な数字を、設問と分母の観点で整理すると次のとおりです。
| 数字 | 何を尋ねたか | 分母 | 示すこと | 示さないこと |
|---|---|---|---|---|
| 37.7%(レバテック) | IT エンジニアの仕事は AI に代替されると思うか | 全回答者 572 名 | 職業全体の代替についての見方 | 本人の失業不安、実際の失業 |
| 49.5%(同) | AI の普及・進展が転職意向に与えた影響 | 全回答者 572 名 | 転職を考えた・検討中・実行した人の合計 | 解雇・失業の割合 |
| 5.6%(同) | 上記のうち「実際に転職した」 | 全回答者 572 名 | AI の影響で転職したと答えた人 | 転職が自発的か非自発的か |
| 59.3%(同) | 職場で AI 格差が生まれていると感じるか | 全回答者 572 名 | 処遇の差についての実感 | 客観的に測定した処遇の差 |
| 65.0%(同) | AI スキルによる年収格差は今後拡大すると思うか | 全回答者 572 名 | 将来の予想 | 現在の年収差 |
| 9.3%(State of Devs) | 過去 12 か月以内に解雇されたか | Layoffs の回答者 5,299 件 | 原因を問わない解雇経験 | AI が原因の解雇、日本の状況 |
| 54.7%(同) | AI 全般のリスクで特に懸念するもの | AI Risks の回答者 4,849 件 | 社会全体の雇用代替への懸念 | 本人の失業不安、失業経験 |
筆者の業務では、AI の出力を確認する作業が増えた
ここからは、調査結果ではなく私自身の経験です。インフラ業務で AI を使うようになってから、AI に任せる作業と、自分で確認する作業の配分が変わりました。
AI に任せるようになった業務
現在、私が AI に任せるようになった業務は次のとおりです。
- システムログの分析
- トラブルシューティング
- 情報収集
- 企画のアイデア出し
確認と判断に使う時間が増えた業務
一方で、使う時間が増えたのが、分析結果の確認とトラブルシューティングの確認です。
AI を使う作業では、出力の妥当性をレビューし、フィードバックする工程に最も時間をかけています。AI に依頼して出力を受け取るだけで作業が終わるわけではなく、その内容を評価し、必要に応じて指摘を返すところまでが一連の作業になっています。

なお、作業時間の変化を測定したわけではなく、業務全体の量の増減を示すものでもありません。これは私個人の事例であり、日本のエンジニア全体の傾向を示す材料ではありません。
調査と実体験から考える、業務とスキルの見直し方
ここからは、調査結果と私の経験を踏まえた本記事の考察です。AI の出力をレビューする工程が作業の中心になるなら、何を確認するかをあらかじめ整理しておくことが、確認の質と時間の両面で役立つと考えます。
AI の出力を確認するときの観点
以下は、インフラ業務で AI の出力を確認する観点の提案です。
| 業務 | 確認する観点 | 照合に必要な知識 |
|---|---|---|
| ログ分析 | 説明が実際のログ、時系列、構成と一致しているか。ログにない事象を補っていないか | ログの形式、機器間の時刻のずれ、ネットワーク構成 |
| トラブルシューティング | 原因仮説に根拠があるか。提示された確認方法で仮説を切り分けられるか | プロトコルの動作、障害の典型的なパターン、切り分けの順序 |
| 対処案・設定変更案 | 対象製品・バージョンに合うか。実施時の影響と切り戻し方法は何か | 製品仕様、公式リファレンス、変更管理の手順 |
| 情報収集 | 出典が一次情報か。公開日・更新日と対象バージョンが合っているか | 一次情報の所在、ベンダーの情報公開の形態 |
これらの観点を使うには、AI への指示の出し方だけでなく、出力を照合するための製品知識や構成の理解が必要になります。正しそうに見える説明でも、自社の構成や対象バージョンと照らし合わせなければ、そのまま使えるかは判断できないためです。
ただし、これらの知識があれば仕事がなくならない、と言えるわけではありません。どのスキルが雇用の維持につながるかは、今回の資料からは判断できません。
AI にログや設定ファイルを渡す場合は、ホスト名、IP アドレス、認証情報などが含まれていないかを確認し、社内規程と利用サービスのデータ取り扱い条件に沿って入力することをおすすめします。
職種ではなく作業単位で見直す
業務を見直す際は、職種単位で「AI に代替されるか」を考えるより、担当している作業を「AI に任せられる作業」と「自分が確認・判断する作業」に分けて棚卸しする方が、次の行動につなげやすいと考えます。調査で AI 格差が表れる点として「担当できる業務範囲の差」が最も多く挙がっていたことも、作業単位で見直す視点と重なります。
特定の AI サービスをインフラ業務でどう使うかは、製品ごとの記事で扱っています。たとえば、OpenAI の Daybreak Blue を影響判定や設定レビューに使う際の用途と注意点は『Daybreak Blue をインフラ業務で使う|まず試す用途と注意点』で紹介しています。
まとめ
今回確認した国内調査が示すのは、AI による仕事の代替についての見方、転職意識、業務範囲や評価に関する実感であり、AI による失業の割合は分かりません。数字が何を尋ね、誰を分母にしたものかを確認したうえで、自分の作業単位で業務とスキルを見直すことが現実的な対応と考えます。
- IT エンジニアの仕事が AI に代替されると考える人は 37.7% で、見方は分かれています。
- AI の影響で転職を意識した人は 49.5% で、実際に転職した人は 5.6% です。
- 転職意識の数字は、AI によって解雇された人の割合を示すものではありません。
- 約 6 割が AI 活用力による処遇の差を感じていますが、客観的な測定ではありません。
- State of Devs の解雇や雇用不安の設問は、原因を AI に限定していません。
- 私の業務では、AI の出力をレビューしてフィードバックする作業に時間を使っています。
- 出力を照合するための製品知識や構成理解も、見直しの対象に加えることをおすすめします。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

