はじめに
Google が 2026 年 5 月の Google I/O で予告していたフラッグシップモデル Gemini 3.5 Pro が、当初の提供予定時期を大きく過ぎた現在も未リリースのままです。2026 年 7 月 16 日には、コーディング性能が社内目標に届いていないことが延期の一因だとする Bloomberg の報道が出て、Alphabet の株価が下落する事態にもなりました。コミュニティでは 7 月 17 日リリース説などの噂も流れましたが、本記事執筆時点(2026 年 7 月 18 日)で新しい提供時期は発表されていません。
この記事では、確定している公式情報と報道・噂を明確に区別しながら、延期の経緯と理由を時系列で整理します。そのうえで、独自の視点として、Gemini 3.5 Pro が「超えるべき性能ライン」を GPT-5.6 や Claude の公表値から数値で見積もり、リリースされた場合の使い分けの予想までを扱います。
- Gemini 3.5 Pro の延期をめぐる確定情報の時系列(I/O での予告から現在まで)
- Bloomberg 報道が伝える延期の理由(コーディング性能と訓練データ更新の不発)
- Google が置かれている状況(エージェンティックコーディングの遅れ・研究者流出・株価反応)
- Gemini 3.1 Pro と GPT-5.6・Claude Fable 5 の数値ギャップから見る「超えるべきライン」
- コミュニティが期待している機能(噂ベース)と、リリース後に想定される使い分け
結論を先に述べると、延期そのものは Google 自身が示したスケジュールとの対比で確認できる事実です。一方、その理由(コーディング性能の未達)は Bloomberg の報道ベースの情報であり、Google が公式に認めたものではありません。新しい提供時期は未発表で、現時点で確実に言えるのは「3.5 系列で利用できるのは Flash のみ」ということです。リリース後の評価では、公表ベンチマークの絶対値よりも、エージェンティックコーディングの実タスクでの挙動を確認することを推奨します。
Gemini 3.5 Pro 延期の経緯|確定情報の時系列
このセクションでは、公式発表と報道を区別しながら、延期に至る流れを時系列で整理します。
Google I/O での発表と当初スケジュール(5/19 発表・6 月提供予定)
まず、Google 自身が示したスケジュールを確認します。一連の流れは次のとおりです。
- 2025/11: Gemini 3 Pro がリリースされ、各種リーダーボードで首位を獲得
- 2026/2: 現行フラッグシップの Gemini 3.1 Pro がリリース
- 2026/5/19: Google I/O で Gemini 3.5 シリーズを発表。Gemini 3.5 Flash を同日リリースし、AI Mode のデフォルトモデルに採用
- 2026/5/19: 同日の公式ブログで、3.5 Pro は既に社内利用中であり、翌月(6 月)の提供開始を見込むと記載
- 2026/6: 提供開始されないまま経過
- 2026/7/16: Bloomberg が延期の内幕を報道
- 2026/7/17: コミュニティで噂されていたリリース日も、発表のないまま経過
参考: Gemini 3.5 シリーズ発表ブログ(Google 公式)
“forward to rolling it out next month”
(翌月の提供開始を楽しみにしている)
https://blog.google/innovation-and-ai/models-and-research/gemini-models/gemini-3-5/
ポイントは、「6 月提供」が憶測ではなく Google 自身の公式ブログに書かれていたことです。このため「延期」という表現は、リーク情報との比較ではなく、公式スケジュールとの比較として成立します。また、本記事執筆時点で Gemini API の公式リリースノートに Gemini 3.5 Pro のエントリはなく、3.5 系列で一般提供されているのは Flash のみという状態が続いています。
Bloomberg 報道の要点(コーディング性能と訓練データ更新の不発)
延期の理由に踏み込んだのが、2026 年 7 月 16 日の Bloomberg 報道です。事情に詳しい関係者と 10 人の現・元従業員への取材に基づくもので、要点は次のとおりです。
- Gemini 3.5 Pro は社内スケジュールから数か月遅れており、特にコーディング能力の改善に時間を要している
- 2026 年 6 月下旬、コーディングスキル改善のために訓練データを更新したが、結果は期待外れだった
- 社内のエンジニア・研究者・マネージャーには不満が広がっており、Anthropic や OpenAI に差を広げられることへの懸念が語られている
この報道を受けて、同日の Alphabet 株は一時約 4% 下落しました。時価総額にして約 2,250 億ドルが失われたと報じられており、単なる開発遅延ではなく、投資家が Google の AI 競争力を測る材料として受け止めたことがうかがえます。7 月 22 日に予定されている Alphabet の四半期決算を目前に控えたタイミングであることも、市場の反応を大きくした一因と考えられます。
一方、Google はこの報道に対して開発の停滞を認めていません。広報担当者は Bloomberg に対し、パートナーとともにテストを進めている段階だと説明しています。
参考: Gemini 3.5 Pro Delayed Over Coding, Bloomberg Reports(Search Engine Journal)
“currently testing 3.5 Pro”
(現在 3.5 Pro をテストしている)
https://www.searchenginejournal.com/gemini-3-5-pro-delayed-over-coding-bloomberg-reports/582660/
このコメントでは、3.5 Pro に加えてアップグレード版の Flash モデルもテスト中であることが言及されています。ただし「パートナーとのテスト」は提供開始を意味せず、新しい提供時期についての言及もありません。現時点で確定しているのは「公式スケジュールの未達」と「新日程の未発表」であり、延期の理由とされるコーディング性能の問題は、あくまで報道ベースの情報という整理になります。
Google が置かれている状況
延期報道を単発のニュースとして見るのではなく、2026 年に入ってからの Google の状況と合わせて見ると、輪郭がはっきりします。このセクションでは、コーディング領域での遅れを Google 自身が認めていた経緯と、開発体制をめぐる動きを整理します。
エージェンティックコーディングの遅れ(Pichai 発言・体制・研究者流出)
コーディング領域の遅れは、Bloomberg 報道で初めて明らかになった話ではありません。2026 年 5 月の時点で、CEO の Sundar Pichai 氏自身が、エージェンティックコーディングの最前線において Google はやや遅れていると公に認めていました。
参考: Pichai Says Google Is “A Bit Behind” On Agentic Coding(Search Engine Journal)
“a bit behind”
(少し遅れている)
https://www.searchenginejournal.com/pichai-says-google-is-a-bit-behind-on-agentic-coding/575781/
注目すべきは、Pichai 氏がその理由として、競合のような開発者向けコーディング製品を Google が持っていないことを挙げていた点です。OpenAI の Codex や Anthropic の Claude Code は、開発者の実利用から生まれるデータがモデル改善に還流する構造を持っており、製品の不在がデータの不在につながり、それがモデルの遅れにつながるという構造的な問題として語られていました。報道によれば、Google は 2026 年 4 月にこのギャップを埋めるための専任チームを社内に立ち上げたとされています(The Information の報道を各媒体が引用したもので、Google の公式発表ではありません)。
この状況に追い打ちをかけたのが、6 月に相次いだ主要研究者の流出です。
- 2026/6 中旬: Transformer 論文の共著者で、Character.AI の実質的買収(約 27 億ドル)で Gemini 開発に復帰していた Noam Shazeer 氏が OpenAI への移籍を表明
- その数日後: AlphaFold で 2024 年のノーベル化学賞を共同受賞した DeepMind の John Jumper 氏が Anthropic への移籍を表明
- 2026/6/24: Gemini 開発で中心的な役割を担った Jonas Adler 氏と Alexander Pritzel 氏の Anthropic 移籍が報道される
特に Adler 氏は、DeepMind 内で AI コーディング開発を率いていたと報じられている人物であり、Jumper 氏もコーディング開発チームの主要メンバーだったとされています。延期の理由とされるコーディング領域の中核人材が、まさにこの時期に流出しているという整合は、Bloomberg 報道の信憑性を側面から補強する材料と言えます。
参考: Nobel Prize AI researcher leaves Google to Anthropic(Taipei Times / Bloomberg)
“Google has struggled to sell AI coding tools to businesses”
(Google は企業向けの AI コーディングツールの販売に苦戦してきた)
https://www.taipeitimes.com/News/biz/archives/2026/06/22/2003859496
また、Bloomberg は組織構造の問題も指摘しています。Google Cloud・DeepMind・Android など複数の部門がそれぞれ AI コーディングツールを開発しており、モデルのリリース準備には多層の関係者が関与し、社内では計算リソースの取り合いも起きていると報じられています。俊敏に動く専業の競合と比べたときの、大企業ゆえの構造的な足かせです。
競合の現在地: GPT-5.6 と Claude Fable 5
Gemini 3.5 Pro が遅れている間に、競合の水準は動き続けています。直近 1 か月だけでも状況は大きく変わりました。
- 2026/7/1: 米政府の輸出規制で停止していた Claude Fable 5 が再提供開始。SWE-Bench Pro 80% という実コードベース改修の最高水準を維持
- 2026/7/9: OpenAI が GPT-5.6 ファミリー(Sol・Terra・Luna)を一般提供開始。エージェンティックコーディングとトークン効率を前面に打ち出す
- 同時期: Meta も新モデル Muse Spark 1.1 を投入し、エージェント・コーディング用途を強化
つまり、Gemini 3.5 Pro が当初予定どおり 6 月に出ていれば比較対象は GPT-5.5 と(停止中だった)Claude でしたが、遅れている間に比較のベースラインそのものが GPT-5.6 と再開後の Fable 5 に切り上がったことになります。延期が長引くほど「超えるべきライン」も上がるという、追う側にとって厳しい構図です。GPT-5.6 の 3 ティア構成と性能の詳細は、関連記事『GPT-5.6 リリース|Sol・Terra・Luna の違いとインフラ業務での使い分け』を参照してください。
超えるべき性能ライン|数値で見る Gemini 3.1 Pro とのギャップ
ここからは本記事の独自分析として、「Google が目標としている性能に届いていない」という報道を、公開されている数値からどの程度のギャップなのか見積もります。現行フラッグシップの Gemini 3.1 Pro(2026 年 2 月リリース)と競合最新モデルの公表値を比較します。
コーディング指標のギャップ
OpenAI が GPT-5.6 発表時に公開した比較表には、Gemini 3.1 Pro Preview の測定値が含まれています。コーディング関連の項目を抜粋します。
| 評価項目 | Gemini 3.1 Pro Preview | GPT-5.6 Sol | Claude Fable 5 | Claude Opus 4.8 |
|---|---|---|---|---|
| Artificial Analysis Coding Agent Index v1.1 | 42.7 | 80 | 77.2 | 72.5 |
| SWE-Bench Pro | 54.2% | 64.6% | 80% | 69.2% |
| DeepSWE v1.1 | 11.8% | 72.7% | 69.7% | 59% |
| Terminal-Bench 2.1 | 70.7% | 88.8% | 83.1% | 78.9% |
| Agents’ Last Exam | 32.1% | 52.7% | 40.5% | 45.2% |
(出典: OpenAI 公式の GPT-5.6 発表ページ https://openai.com/index/gpt-5-6/ に掲載の評価表より抜粋)
これらは競合である OpenAI が測定・公表した値であり、その点は割り引いて読む必要があります。ただし SWE-Bench Pro の 54.2% という値は、Gemini 3.1 Pro リリース時に Google 自身が公表した数値と一致しており、大きく歪んだ測定ではないと判断できます。
数値から読み取れるのは、ギャップがエージェント的・長時間のコーディングタスクに集中していることです。単発のコード生成に近い指標では差は限定的ですが、実コードベースでの長期的なエンジニアリング作業を測る DeepSWE では 11.8% 対 59〜72.7% と桁違いの開きがあります。ターミナル操作を伴うワークフロー(Terminal-Bench)や長時間の業務ワークフロー(Agents’ Last Exam)でも一貫して最下位です。まさに Pichai 氏が認めた「エージェンティックコーディングの遅れ」が、そのまま数値に表れている形です。

総合知能指標での位置と「超えるべきライン」の見積もり
一方で、Gemini 3.1 Pro がすべての領域で劣っているわけではありません。学術・推論系の指標では現在も最高水準に位置しています。
- GPQA Diamond(科学知識): 94.3% と、GPT-5.6 Sol の 94.6% にほぼ並ぶ水準
- ARC-AGI-2(抽象推論): Google 公表値で 77.1% と、競合を大きく上回る突出した結果
- Artificial Analysis Intelligence Index v4.1(総合): 46.5 と、Sol の 58.9・Fable 5 の 59.9 から約 13 ポイント差
推論・知識の基礎能力は競合級である一方、それをエージェントとして長時間動かし続ける能力に穴がある、というのが数値から見える Gemini の現在地です。総合指標の 13 ポイント差も、内訳としてはエージェント・コーディング系の弱さが押し下げていると解釈するのが自然です。
以上を踏まえると、Gemini 3.5 Pro が「フラッグシップとして意味のあるリリース」になるために超えるべきラインは、おおよそ次のように見積もれます。
- Coding Agent Index で 70 台後半(Opus 4.8 の 72.5 が最低ライン、Fable 5 の 77.2 が実質目標)
- SWE-Bench Pro で 65% 以上(GPT-5.6 Sol 超え。Fable 5 の 80% はさらに遠い目標)
- DeepSWE で 60% 前後(現状の 5 倍超の改善が必要な、最も距離のある指標)
- Artificial Analysis Intelligence Index で 50 台後半(首位圏への復帰)
訓練データの更新だけでは期待した改善が得られなかったという報道を踏まえると、このギャップ(特に DeepSWE 系の長時間タスク)を埋めるには相応の時間がかかると見るのが妥当であり、「数か月遅れ」という報道の表現とも整合します。
コミュニティが期待していること|噂と公式情報の区別
Gemini 3.5 Pro については、リリース前にもかかわらず多くの「スペック情報」が流通しています。このセクションでは、情報を「公式に確認できるもの」と「噂・リーク」に格付けして整理します。噂の大半は Google の公式ドキュメントで確認できない点を、先に明確にしておきます。
参考: Gemini 3.5 Pro Targets July 17 With 2M Token Context(Memeburn)
“Neither specification has been confirmed in official Google documentation”
(いずれの仕様も Google の公式ドキュメントでは確認されていない)
https://memeburn.com/gemini-3-5-pro-targets-july-17-with-2m-token-context/
公式に確認できる範囲
Google 自身の発信から確認できるのは、次の範囲にとどまります。
- Gemini 3.5 Pro は存在し、社内で既に利用されている(I/O での言及)
- 提供は Flash の後になる(I/O での言及)
- 現在はパートナーとともに 3.5 Pro とアップグレード版 Flash をテスト中(Bloomberg への広報コメント)
- Gemini API で利用できる最新モデルは
gemini-3.5-flashとgemini-3.1-pro-previewであり、3.5 Pro のエントリはリリースノートに存在しない(API 公式ドキュメント)
つまり、公式情報だけを見る限り、性能・仕様・価格・提供時期のいずれも発表されていない状態です。
噂ベースの期待機能(7/17 説・2M コンテキスト・Deep Think 等)
一方、コミュニティやリークトラッカーで流通している主な噂は次のとおりです。いずれも未確認情報であり、確度の判断材料として「複数媒体で繰り返されているか」程度しかない点に留意してください。
- 7 月 17 日リリース説
-
複数の海外メディアが報じたものの、当日は発表のないまま経過。日付の根拠は明示されていない
- 200 万トークンのコンテキストウィンドウ
-
最も広く流通している噂。実現すれば、Claude Fable 5(20 万トークン)や GPT-5.6 の拡張コンテキストを大きく上回る、現行最大のウィンドウとなる
- Deep Think 推論モード
-
複雑な多段階の問題解決に推論時間を割く拡張レイヤーの搭載説
- 基盤モデルのフルリビルド説
-
従来の基盤を引き継がずゼロから再構築し、数学的推論・SVG 生成・画像品質を重点強化しているという報道
- computer use との連携
-
3.5 Flash で導入されたネイティブ computer use(エージェントが画面を見て操作する機能)の強化版が Pro にも載るという観測
このほか、Vertex AI 経由の限定エンタープライズプレビューの存在や価格帯の推測も流れていますが、確認できる公式情報はありません
噂の内容を俯瞰すると、コミュニティの期待は「長コンテキストでの独走」と「コーディング・エージェント能力の底上げ」の 2 点に集中していることが分かります。前者は Gemini が従来から強みとしてきた領域の拡張、後者は前セクションで数値化したギャップの解消であり、期待の構図そのものが、現在の Gemini の強みと弱みを裏返した形になっています。
リリースされたらどうなる|使い分けの予想(考察)
最後に、リリース後の使い分けがどうなりそうかを予想します。ここからは未リリース製品についての考察であり、噂ベースの仮定を含む点に留意してお読みください。
現行 3 社構成での Gemini の役割(仮定を含む予想)
仮に噂どおりのスペック(2M コンテキスト・Deep Think・コーディング強化)で出てきた場合、インフラエンジニアの業務での 3 社の使い分けは、次のような整理になると筆者は予想しています。
| 領域 | 予想される第一候補 | 根拠 |
|---|---|---|
| エージェンティックコーディング・効率重視の日常業務 | GPT-5.6(Terra/Sol) | Coding Agent Index 首位とトークン効率。実績が既にある |
| 実コードベースの大規模改修・品質重視のレビュー | Claude(Fable 5) | SWE-Bench Pro 80% の水準は当面揺らがない見込み |
| 大量ログ・大規模リポジトリ・長大ドキュメントの一括解析 | Gemini 3.5 Pro | 2M コンテキストが実現した場合、単純に他社では物理的に入らない領域 |
| 動画・画像を含むマルチモーダル処理 | Gemini 3.5 Pro | 従来からの強み。構成図の読み取りなど視覚入力を伴う業務 |
| 低コストの定型処理 | GPT-5.6 Luna または Gemini Flash | 単価と速度の勝負。ワークロードごとの実測で判断 |
インフラエンジニア視点で特に注目したいのは、長コンテキストの一括解析です。障害調査で数十万行のログを分割せずに読ませる、ネットワーク機器の設定ファイル群をまとめて監査するといった業務は、現状ではコンテキスト制約との戦いになっています。2M トークンが額面どおり機能するなら、この領域は Gemini の独壇場になり得ます。ただし、公称ウィンドウの大きさと「終端まで精度が保たれるか」は別問題であり、リリース後は長コンテキストの実効精度(needle 系ベンチマークや実ログでの検証)を最初に確認することを推奨します。
また、リリース時の評価では、公表ベンチマークの絶対値よりもエージェント的な実タスクでの挙動(本記事の「超えるべきライン」で挙げた DeepSWE 系の指標や、実際の IaC・トラブルシュート作業)を確認するのが実務的です。訓練データ更新が不発だったという報道が事実であれば、ヘッドラインの数値と実作業の体感が乖離する可能性も想定しておくべきです。GPT-5.6 側の使い分けの詳細は、関連記事『GPT-5.6 リリース|Sol・Terra・Luna の違いとインフラ業務での使い分け』で整理しています。
政府関与という新変数
もう 1 つ、リリース時期を読むうえで見落とせない変数があります。Google の広報コメントには、パートナーテストと並んで米政府との関与への言及が含まれていました。
参考: Google’s Gemini 3.5 Pro Delayed for Months as Coding Performance Falls Short(BigGo Finance)
“testing the model with partners and engaging with the U.S. government”
(パートナーとモデルをテストし、米政府と協議している)
https://finance.biggo.com/news/eae3b829-f50d-42f4-a4df-c99415d2ad33
この一文を、直近 2 か月の出来事と並べると構図が見えてきます。Claude Fable 5 は一般公開後に米商務省の輸出規制ディレクティブで停止に追い込まれ、GPT-5.6 は政府の要請による限定プレビューを経て一般提供されました。そして Gemini 3.5 Pro は、リリース前の段階で政府との協議に言及しています。フロンティアモデルのリリースプロセスに米政府の関与が事実上組み込まれつつあり、Gemini 3.5 Pro はその 3 例目になる可能性が高い、というのが筆者の見立てです。
この観点では、延期の長期化要因が「性能」だけとは限らず、政府側とのすり合わせがスケジュールに影響する可能性も考慮に入ります(これは公式に確認されたものではなく、あくまで状況からの推測です)。Fable 5 の停止で顕在化した「規制による突然の提供停止リスク」と合わせて、特定モデルへの依存を避ける構成は引き続き有効な備えと言えます。経緯の詳細は、関連記事『Claude Fable 5 はなぜ使えない|米政府ディレクティブの経緯と復旧の行方』を参照してください。
まとめ
Gemini 3.5 Pro の延期は、Google 自身が 5 月に示した「6 月提供」というスケジュールとの対比で確認できる事実です。一方、その理由とされるコーディング性能の未達は Bloomberg の報道ベースの情報であり、Google が公式に認めたものではありません。競合が GPT-5.6 と再開後の Fable 5 に水準を上げるなか、追う側の Google が超えるべきラインも上がり続けている状況です。
- Gemini 3.5 Pro は公式予定の 6 月を過ぎても未リリースで新日程も未発表
- 延期理由はコーディング性能の未達とする Bloomberg 報道が出ている
- 訓練データ更新の効果は期待外れだったと報じられている
- コーディング領域の中核研究者が同時期に競合へ流出している
- 数値上のギャップは長時間・エージェント系のコーディング指標に集中
- 2M コンテキストや Deep Think は噂段階で公式の確認はない
- リリース後は長コンテキストの実効精度とエージェント実タスクの確認が要点
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
