はじめに
拠点ネットワークの定番である YAMAHA 製品でリンクアグリゲーションを構成する際、最初に押さえるべきは「RTX と SWX で対応方式がまったく異なる」という点です。ルーターの RTX シリーズは静的リンクアグリゲーションのみ対応で LACP は使えません。一方、スイッチの SWX シリーズは機種クラスによって静的のみ・LACP 対応が分かれます。この違いを知らないまま設計すると、「対向機器と LACP で組むつもりだったのに RTX 側が対応していない」という手戻りにつながります。
この記事では、YAMAHA のリンクアグリゲーションについて、対応機種の整理から RTX・SWX それぞれの設定手順、状態確認までを解説します。
- RTX(静的のみ)と SWX(クラスにより LACP 対応)の対応方式の違い
- 静的リンクアグリゲーション・LACP の対応機種一覧
- RTX の
lan link-aggregation staticの設定手順と機種別の注意点 - SWX の
static-channel-group/channel-groupの設定手順 - 状態確認コマンドと異メーカー接続時の注意点
結論を先に述べると、RTX シリーズは全機種が静的のみ対応(対応機種も RTX5000 / 3510 / 3500 / 1300 / 1220 / 1210 に限定)、SWX シリーズはスマート L2(SWX2210 系等)が静的のみ、インテリジェント L2(SWX2310 系)以上が静的と LACP の両対応です。対向機器が LACP を使える構成では SWX 側は LACP を選び、RTX やスマート L2 が絡む区間は静的に統一する、というのが設計の基本方針になります。
なお、静的と LACP の障害検出の違いなど、リンクアグリゲーションの仕組みそのものは関連記事『リンクアグリゲーションの仕組みと方式の違い』で解説しています。
YAMAHA のリンクアグリゲーション対応状況(RTX と SWX の違い)
同じ YAMAHA ブランドでも、ルーター(RTX)とスイッチ(SWX)ではリンクアグリゲーションの実装が異なります。まずこの全体像を整理します。
RTX は静的のみ・SWX は LACP 対応
RTX シリーズ(ルーター)は、公式コマンドリファレンスの「スタティックリンクアグリゲーションの設定」(lan link-aggregation static)で定義されるとおり、静的リンクアグリゲーションのみに対応しています。LACP のコマンドは存在せず、対向機器が LACP アクティブ / パッシブで待ち受けても LAG は成立しません。
SWX シリーズ(スイッチ)は、機種クラスによって対応が分かれます。スマート L2 スイッチの SWX2210 シリーズについて、公式製品ページには次のとおり記載されています。
参考: SWX2210-24G 特長(YAMAHA 公式)
「『リンクアグリゲーション』はスタティックによる設定に対応しています」
https://network.yamaha.com/products/switches/swx2210-24g/index
一方、インテリジェント L2 スイッチの SWX2310 シリーズは、公式仕様表のリンクアグリゲーション欄に「スタティック設定, LACP(IEEE 802.3ad)」と明記されており、両方式に対応します。L3 スイッチの SWX3200 シリーズでも、公式技術資料で LACP(channel-group コマンド)の対応を確認できます。
対応機種と対応方式の一覧
公式情報で確認できた対応状況を一覧にまとめます。(2026 年 7 月時点。導入前に対象機種の公式仕様表・コマンドリファレンスでの最終確認を推奨します)
| シリーズ | クラス | 静的 LAG | LACP |
|---|---|---|---|
| RTX5000 / 3510 / 3500 / 1300 / 1220 / 1210 | ルーター | ○ | × |
| 上記以外の RTX・NVR 等 | ルーター | ×(対応機種外) | × |
| SWX2210・SWX2220 系 | スマート L2 | ○ | × |
| SWX2310 系 | インテリジェント L2 | ○ | ○ |
| SWX2320・SWX2322P 系 | インテリジェント L2(マルチギガ) | ○ | ○(仕様表で要確認) |
| SWX3100 / 3200 / 3220 系 | L3 | ○ | ○(SWX3200 は技術資料で確認済み) |
この表から導かれる設計指針は次の 3 点です。
RTX で LAG を組めるのは上記 6 機種のみです。
RTX830 など上記以外の機種はリンクアグリゲーション自体に対応していないため、冗長化が必要な場合は別の手段(スイッチ側での冗長化等)を検討します。
SWX でも、スマート L2 とインテリジェント L2 以上で LACP の可否が分かれます。
対向機器と LACP で組む前提の設計では、機種選定の段階でインテリジェント L2 以上を選ぶ必要があります。
RTX またはスマート L2 の SWX が絡む LAG 区間は、対向側(Cisco、FortiGate 等)を静的モードに統一します。
組み合わせの詳細は関連記事『リンクアグリゲーションのメーカー相互接続』を参照してください。
RTX での静的リンクアグリゲーション設定
RTX シリーズのリンクアグリゲーションは、スイッチングハブを持つ LAN インターフェース内の複数ポートを集約し、1 つの論理リンクを形成する機能です。対応機種は RTX5000 / 3510 / 3500 / 1300 / 1220 / 1210 の 6 機種で、方式は静的のみです(RTX1300 は Rev.23.00.04 以降で使用可能)。
なお、公式コマンドリファレンスには、論理リンク上でパケットの出力ポートが分散していれば、論理リンク全体として利用できる帯域が集約したポート分だけ増加すると記載されています。同じ静的専用でも「冗長化専用(増速不可)」と明記されている NEC IX とは位置づけが異なる点は、機器選定時に押さえておきたい違いです。
lan link-aggregation static の構文と設定例
設定コマンドの構文は次のとおりです。
lan link-aggregation static link_id interface:port interface:port [interface:port ...]| パラメータ | 内容 |
|---|---|
| link_id | 論理リンクの識別番号 |
| interface:port | 集約対象のポート。「LAN インターフェース名:ポート番号」の形式で指定(例: lan1:1) |
RTX1300 で LAN1 のポート 1 とポート 2 を束ね、論理リンク 1 を構成する設定例です。
# lan link-aggregation static 1 lan1:1 lan1:2設定の削除は no lan link-aggregation static link_id で行います。RTX1300 では 1 つの論理リンクに最大 8 ポートまで集約できます。
対向機器側は静的 LAG で揃えます。対向が Cisco Catalyst であれば channel-group <番号> mode on、FortiGate であれば set lacp-mode static、SWX であれば static-channel-group(次章で解説)を設定します。LACP モードのままでは成立しないため注意してください。
設定時の注意点(結線前設定・フレキシブルポート・機種別の挙動差)
RTX の静的リンクアグリゲーションには、公式コマンドリファレンスに明記された注意点が 3 つあります。いずれも見落とすと障害や意図しない通信断につながるため、設定前に確認しておくことを推奨します。
- 結線は両端の設定完了後に行う
-
参考: スタティックリンクアグリゲーションの設定(YAMAHA 公式コマンドリファレンス)
「パケットのループを避けるため、リンク相手機器の設定も含め、先にリンクアグリゲーションの設定を済ませてから LAN ケーブルを結線することに注意する」
https://www.rtpro.yamaha.co.jp/RT/manual/rt-common/setup/lan_link-aggregation_static.html静的 LAG には LACP のようなネゴシエーションによる保護がなく、片側だけ設定済みの状態で複数本を結線すると、その時点でブリッジングループが発生しうるためです。「両端の設定完了 → 結線」の順序は、静的 LAG 構成の鉄則です。
- フレキシブル LAN / WAN ポート対応機種はポートのマッピングを先に揃える
-
フレキシブル LAN / WAN ポートに対応した機種では、集約対象のポートが指定した LAN インターフェースにマッピングされていない場合、入力エラーにはならないもののリンクアグリゲーションが正常に機能しないと公式に記載されています。エラーが出ないため気づきにくい落とし穴です。
lan link-aggregation staticの設定前に、lan flexible-portコマンドで集約対象ポートを同一 LAN インターフェースへマッピングしておく必要があります。 - コマンド実行時のリセット範囲が機種によって異なる
-
lan link-aggregation staticコマンドの実行時には LAN インターフェースのリセットが発生し、その範囲は機種によって異なります。機種 リセットされる範囲 RTX5000 / RTX3500 対象の LAN インターフェースのみ RTX3510 / RTX1300 すべての LAN インターフェース RTX1220 / RTX1210 LAN1 インターフェースのみ 特に RTX3510 / RTX1300 では、LAG を設定する LAN 以外も含めた全 LAN インターフェースがリセットされるため、稼働中の機器への設定投入はメンテナンス作業として計画することを推奨します。設定対象以外の通信への影響を想定していないと、意図しない通信断を招きます。

このほか、LAN 分割機能・ポート分離機能・ポートミラーリング機能との併用は可能ですが、LAN 分割またはポート分離と併用する場合は、分割・分離したスイッチポートと同一セグメントに属するポートのみが集約対象になるという条件があります。
SWX でのリンクアグリゲーション設定
SWX シリーズのリンクアグリゲーションは、静的・LACP 共通で「物理ポートを論理インターフェースに所属させる」という設定体系です。この章では、SWX3200 の公式技術資料に基づき、静的と LACP それぞれの設定手順と、共通の注意点を解説します(ポート名の表記等は機種により異なる場合があります)
共通仕様として、静的・LACP 合わせて最大 127 の論理インターフェースを定義でき、1 つの論理インターフェースには最大 8 つの LAN / SFP ポートを所属させられます。論理インターフェースの名前は、静的が sa+番号(例: sa2)、LACP が po+番号(例: po10)です。
SWX で最も注意すべき仕様は、論理インターフェースが作成時点ではシャットダウン状態になっている点です。公式技術資料には次のとおり記載されています。
参考: リンクアグリゲーション(SWX3200 技術資料、YAMAHA 公式)
「安全に論理インターフェースをシステムに組み込むため、論理インターフェースの初期値はシャットダウン状態となっています」
https://www.rtpro.yamaha.co.jp/SW/docs/swx3200/Rev_4_00_10/interface/interface_lag.html
Cisco の EtherChannel は channel-group 投入と同時にポートチャネルが自動作成されて動作を始めますが、SWX では最後に論理インターフェースへ no shutdown を投入するまでリンクアップしません。「設定したのに上がらない」と感じたら、まずこの有効化を確認してください。
静的(static-channel-group)の設定
静的の論理インターフェース番号は 1〜96 の範囲で指定します。ポートを static-channel-group コマンドで所属させると、論理インターフェース(sa)が自動生成されます。
VLAN 1000 のアクセスポートとして port1.1 と port1.2 を束ね、論理インターフェース sa2 を構成する例です(公式技術資料の設定例をもとにした最小構成です)
Yamaha(config)# interface port1.1
Yamaha(config-if)# switchport access vlan 1000
Yamaha(config-if)# static-channel-group 2
Yamaha(config-if)# interface port1.2
Yamaha(config-if)# switchport access vlan 1000
Yamaha(config-if)# static-channel-group 2所属状態を確認し、問題なければ論理インターフェースを有効化します。
Yamaha# show static-channel-group
% Static Aggregator: sa2
% Member:
port1.1
port1.2
Yamaha(config)# interface sa2
Yamaha(config-if)# no shutdown静的構成のため、対向機器(RTX、Cisco の on モード、FortiGate の lacp-mode static 等)の設定完了後に結線する順序を守ってください。
LACP(channel-group mode active)の設定
LACP の論理インターフェース番号は 1〜127 の範囲で指定します。ポートを所属させる際に動作モード(active / passive)を指定し、公式技術資料でもアクティブモードの指定が推奨されています。
Yamaha(config)# interface port1.1
Yamaha(config-if)# switchport access vlan 1000
Yamaha(config-if)# channel-group 10 mode active
Yamaha(config-if)# interface port1.2
Yamaha(config-if)# switchport access vlan 1000
Yamaha(config-if)# channel-group 10 mode active
Yamaha(config)# interface po10
Yamaha(config-if)# no shutdown状態確認は show etherchannel(メンバー一覧)、show lacp sys-id(システム ID)、show lacp-counter(LACPDU の送受信カウンタ)で行います。LACPDU の Recv がカウントアップしていない場合、対向からフレームが届いていません。
SWX の LACP タイムアウトは、Cisco や FortiGate と指定方法が異なる点に注意が必要です。Cisco 等が「送信間隔(slow / fast)」を設定するのに対し、SWX は lacp timeout コマンドでタイムアウト値そのものを Long(90 秒)または Short(3 秒)から指定します(初期値は Long)。指定したタイムアウト値は LACP フレームで対向機器へ伝えられ、受信した対向機器はその 3 分の 1 の間隔で LACPDU を送信する、という仕組みです。結果として Long=slow 相当(30 秒間隔)、Short=fast 相当(1 秒間隔)に対応します。この仕様の詳細は、別記事『LACP レート slow / fast の違いと不一致時の挙動』で扱います。
メンバーポートの一致条件
論理インターフェースに収容するポートは、公式技術資料で次の設定が同一であることが求められています。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 通信速度・通信モード | 同一であること。オートネゴシエーションの場合、収容ポート内で最初にネゴシエーションした結果と同じポートのみ収容される |
| ポートのモード | アクセス / トランク(ネイティブ VLAN 設定含む)が揃っていること |
| 所属 VLAN | 同一であること |
あわせて、ポートを論理インターフェースに所属させた際の挙動として、次の 3 点を押さえておく必要があります。いずれも稼働中のネットワークで作業する場合に通信影響へ直結するポイントです。
- リンクアップしているポートは、所属した時点で一旦リンクダウンする
- 該当ポートの MSTP 設定は破棄され、デフォルト設定に戻る(脱退時も同様)
- 動作中の論理インターフェースへのポート追加・脱退はできない。必ず論理インターフェースをシャットダウンしてから行う(脱退したポートはシャットダウン状態になるため、単独ポートとして使う場合は
no shutdownが必要)
つまり、稼働中の LAG へのメンバー増設は、SWX では論理インターフェースのシャットダウンを伴うメンテナンス作業になります。Cisco のように運用中のポートチャネルへポートを追加する感覚で作業すると、想定外の通信断を招くため注意してください。
このほか、プライベート VLAN に属しているホストポートは論理インターフェースとして束ねられないという制約があります。
状態確認コマンド(RTX と SWX)
設定後は、両機種とも正常性を確認します。SWX は専用の show コマンド体系が充実している一方、RTX 側はリンクアグリゲーション専用の状態表示コマンドを本記事の執筆時点で公式ソースから確認できませんでした。この点は正直にお伝えし、確認できた範囲の情報を整理します。
SWX の状態確認
SWX は、静的・LACP それぞれに対応した show コマンドが用意されています。
| コマンド | 内容 |
|---|---|
show interface sa<番号> | 静的論理インターフェースの状態(Link is UP / DOWN、所属 VLAN 等) |
show interface po<番号> | LACP 論理インターフェースの状態 |
show static-channel-group | 静的論理インターフェースのメンバー一覧 |
show etherchannel | LACP 論理インターフェースのメンバー一覧 |
show lacp-counter | LACPDU の送受信カウンタ(Sent / Recv) |
show lacp sys-id | LACP システム ID(対向確認用) |
出力例です。
Yamaha# show interface po20
Interface po20
Link is UP
Hardware is AGGREGATE
...
Yamaha# show lacp-counter
% Traffic statistics
Port LACPDUs Marker Pckt err
Sent Recv Sent Recv Sent Recv
% Aggregator po20 , ID 4620
port1.9 55 57 0 0 0 0
port1.11 54 56 0 0 0 0show lacp-counter の Recv 列が増加しない場合、対向から LACPDU が届いていません。前提として、論理インターフェースが no shutdown されているか(初期状態はシャットダウン)を先に確認してください。
RTX の状態確認
RTX 側のリンクアグリゲーション専用の状態確認コマンド(論理リンク単位でのメンバー状態やパケット分散状況の表示)は、公式コマンドリファレンス上で本記事の執筆時点では特定できませんでした。推測での案内は避け、以下の代替手段をご案内します。
- 一般的なインターフェース状態確認コマンド(
show status lan<番号>等)で、集約対象ポートの物理リンク状態を個別に確認する - 対向機器側(Cisco の
show etherchannel summary、FortiGate のdiagnose netlink aggregate、SWX のshow interface sa/po)で論理リンクとして認識されているかを確認する - 疎通確認(ping 等)で実際の通信可否を確認する
RTX 側の正式な確認コマンドについては、確認でき次第この節を更新します。
異メーカー機器と接続する場合の注意点
YAMAHA 製品を他メーカー機器と接続する場合の要点は、これまでの記事で解説してきた内容に集約されます。
- RTX または SWX のスマート L2 が絡む区間は、対向側を静的に統一する必要があります。Cisco であれば
channel-group <番号> mode on、FortiGate であればlacp-mode staticです。 - SWX のインテリジェント L2 以上は LACP に対応するため、対向が LACP 対応機器であれば LACP アクティブでの構成を推奨します。
- 静的構成では、結線前に両端の設定を完了させる運用が必須です(RTX・SWX いずれも公式ドキュメントで明記されている注意点です)
- SWX 側でメンバーポートを追加・変更する場合、論理インターフェースのシャットダウンを伴うため、稼働中のネットワークではメンテナンス作業として計画してください。
組み合わせ別の設定パターンと切り分け手順の詳細は、関連記事『リンクアグリゲーションのメーカー相互接続』で解説しています。Cisco 側の設定手順は関連記事『Cisco EtherChannel の設定手順』を、FortiGate 側は関連記事『FortiGate リンクアグリゲーションの設定手順』をご参照ください。
まとめ
YAMAHA のリンクアグリゲーションは、RTX(静的のみ)と SWX(クラスにより LACP 対応)で仕様が分かれており、まずこの違いを把握することが設計の出発点になります。RTX は結線順序や機種別のリセット挙動、SWX は論理インターフェースの初期シャットダウン状態など、Cisco や FortiGate とは異なる YAMAHA 固有の挙動を押さえておくことが、トラブルのない導入につながります。
- RTX は静的のみ対応、対応機種は RTX5000 / 3510 / 3500 / 1300 / 1220 / 1210 の 6 機種
- SWX はスマート L2 が静的のみ、インテリジェント L2 以上が LACP 対応
- RTX の静的 LAG も結線前の両端設定完了が前提
- RTX3510 / 1300 はコマンド実行時に全 LAN インターフェースがリセットされる
- SWX の論理インターフェースは初期状態がシャットダウンで no shutdown が必須
- SWX へのメンバーポート追加はシャットダウンを伴うメンテナンス作業になる
- RTX や SWX スマート L2 が絡む区間は対向側も静的に統一する
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。


