はじめに
企業がテレワーク環境やセキュアなエンドユーザーコンピューティング環境を構築する際、仮想デスクトップ(VDI)と並んで頻繁に検討される技術が「RDSH(Remote Desktop Session Host)」です。
VMware Horizon などの仮想化ソリューションを導入・設計するにあたり、「VDI 方式と RDSH 方式のどちらを採用すべきか」「RDSH 環境を構築すると具体的に何ができるのか」といった疑問を抱くインフラ担当者は少なくありません。
本記事では、RDSH の基本概念や VDI 方式とのアーキテクチャの違いを整理し、VMware Horizon を利用して特定のアプリケーションのみをユーザーに配信(公開アプリ)する設定の全体フローについて解説します。
- RDSH(Remote Desktop Session Host)の基本概念と仕組み
- リソース割り当てや管理面から見る「RDSH 方式」と「VDI 方式」の違い
- VMware Horizon における公開アプリケーション機能の概要
- RDSH サーバーを用いたアプリケーション公開設定の全体フロー
RDSH(Remote Desktop Session Host)の基本概念
RDSH(リモートデスクトップセッションホスト)とは、Windows Server OS に標準搭載されている「リモートデスクトップサービス(RDS)」を構成する重要な役割(サーバーコンポーネント)の一つです。
通常、PC やサーバーの OS は 1 人のユーザーが占有して利用しますが、RDSH を有効化したサーバーでは、複数のユーザーがネットワーク経由で同時にログインし、それぞれ独立したセッション(デスクトップ画面やアプリケーション操作)を持つことが可能になります。
このように、サーバー側の OS やアプリケーションを複数人で共有して利用する仕組みは、一般的に「SBC(Server Based Computing)方式」と呼ばれます。実際のデータ処理やアプリケーションの実行はすべてサーバー側で行われ、ユーザーの手元の端末には画面の描画情報のみが転送されるため、情報漏洩の防止や端末管理の簡素化に繋がります。
RDSH 方式と VDI 方式の違い
エンドユーザーにリモートワーク環境を提供する際、RDSH(SBC 方式)と並んで比較・検討されるのが VDI(Virtual Desktop Infrastructure)方式です。

両者の最大の違いは、「OS とハードウェアリソースの割り当て方」にあります。RDSH が 1 つのサーバー OS を多人数で「共有」するのに対し、VDI はユーザーごとに個別のクライアント OS(Windows 10 や 11 など)搭載の仮想マシンを「専有」して割り当てます。
アーキテクチャと特徴の比較
それぞれの仕組みの違いによるメリット・デメリットは以下の通りです。
| 比較項目 | RDSH(SBC 方式) | VDI 方式 |
| OS 環境 | 1 つのサーバー OS を複数人で共有 | ユーザーごとにクライアント OS を専有 |
| リソース | サーバーリソースを全ユーザーで共有 | ユーザー(仮想マシン)ごとに個別に割り当て |
| コスト | 集約率が高く、インフラ費用を抑えやすい | 仮想マシン単位でリソースが必要になり高価 |
| パフォーマンス | 他ユーザーの高負荷な処理の影響を受けやすい | 独立したリソースのため他者の影響を受けにくい |
| 運用管理 | サーバー OS への1回の作業で済むため容易 | 仮想マシンごとのパッチやイメージ管理の手間がかかる |
| アプリ互換性 | サーバー OS 非対応のアプリは利用不可 | 通常の Windows アプリがそのまま動作しやすい |
VMware Horizon における RDSH のユースケース
VMware Horizon において RDSH 環境を構築する最大の目的は、「公開デスクトップ(Published Desktop)」および「公開アプリケーション(Published Application)」機能の利用です。
VMware Horizon 全体のアーキテクチャや基本機能についておさらいしたい方は、以下の記事もあわせてご参照ください。

特に需要が高いのが公開アプリケーション機能です。これは、ユーザーに Windows のデスクトップ画面全体を提供するのではなく、RDSH サーバー上にインストールされた「特定のアプリケーションのウィンドウのみ」をユーザーの端末へ配信する仕組みです。
例えば、「社内のレガシーシステム(古いバージョンのブラウザ等)を安全に使わせたい」「処理が重い業務アプリケーションを低スペックな端末でもサクサク動かしたい」といったケースで非常に有効です。ユーザーは、まるで自分のローカル PC にインストールされているアプリを開くのと同じ感覚で、サーバー上のアプリケーションをシームレスに操作できます。
Horizon でのアプリケーション公開設定の全体フロー
実際に VMware Horizon 環境で RDSH サーバーを構築し、公開アプリケーションを配信するまでの大まかな手順は以下のとおりです。
サーバーの準備とエージェントのインストール
まず、ベースとなる Windows Server に「リモートデスクトップセッションホスト(RDSH)」の役割を追加します。続いて、ユーザーに配信したいアプリケーション(例:特定のブラウザや業務ソフト)をインストールします。
最後に、Horizon Connection Serverと通信を行うための「VMware Horizon Agent」をインストールし、接続先サーバーのアドレスを指定します。
ファーム(Farm)の作成
Horizon の管理画面(Administrator / Console)にログインし、「ファーム」を作成します。ファームとは、同じ用途を持った RDS ホスト(サーバー)をグループ化して管理する単位です。「手動ファーム」または「自動ファーム」を選択し、ステップ1で準備したRDS ホストを登録します。
アプリケーションプールの作成と資格の割り当て
ファームの準備ができたら、配信するアプリケーションを定義する「アプリケーションプール」を作成します。ファームにインストールされているアプリケーションの一覧から、公開したいものを選択します。
プール作成後、Active Directory 上のユーザーやグループに対して、そのアプリケーションを利用するための「資格の割り当て」を実行します。
クライアントからの接続確認
設定完了後、ユーザーの端末から「VMware Horizon Client」を使用して Connection Server へログインします。資格が正しく割り当てられていれば、画面上にアプリケーションのアイコンが表示されます。アイコンをクリックし、アプリケーションが正常に起動・操作できるかを確認して完了です。
まとめ
本記事では、RDSH の基本概念から VDI との違い、そして VMware Horizon を利用したアプリケーション公開機能について解説しました。
- RDSH は 1 つのサーバー OS を複数人で共有する SBC 方式の技術である。
- VDI 方式に比べて集約率が高く、コストや運用管理の面で優位性がある。
- Horizon の公開アプリケーション機能を使えば、特定アプリのみをシームレスに配信できる。
- 設定手順は「サーバー準備」「ファーム作成」「プール作成」「資格割り当て」の順に進める。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
