はじめに
「VDI といえばリンククローン。View Composer サーバを立てて……」という知識のまま止まっている方は、最新動向をキャッチアップしておくと役立つかもしれません。
VMware Horizon 8 以降、長年親しまれてきた「リンククローン(View Composer)」は廃止され、現在のステートレス(非永続)デスクトップの主流は「インスタントクローン(Instant Clone)」となっています。
さらに 2024 年には大きな体制変更がありました。Broadcom による VMware 買収を経て、EUC 部門(Horizon / Workspace ONE)は 2024 年 4 月に Omnissa として独立し、製品は正式に「Omnissa Horizon」に改称されました。本記事では、旧名称との混乱を避けるため「Horizon」または「Omnissa Horizon」と表記します。
参考: Virtualization Review「Omnissa Horizon Update」
“Horizon entered a new era when VMware sold its End-User Computing (EUC) division to private equity firm KKR in 2023/2024. This led to the business being rebranded as Omnissa.”
(VMware は 2023/2024 年に EUC 部門を KKR に売却し、Omnissa として再ブランド化されました。)
https://virtualizationreview.com/articles/2026/03/05/omnissa-horizon-update.aspx
インスタントクローンの特徴は、数秒から数十秒でデスクトップが展開され、ログイン可能になる高速な展開速度です。本記事では、その裏側にある「メモリ共有」の仕組み、リンククローンからの移行手順、そして実運用でのハマりどころを実務目線で解説します。
- リンククローンとインスタントクローンの決定的な違い(3 方式比較表あり)
- 高速展開を支える「vmFork」技術と 4 層構造(Smart Provisioning 対応後の挙動も含む)
- リンククローン環境から Horizon 8 への移行経路
- 実運用でのハマりポイント(Agent バージョン問題・ClonePrep の制約など)
インスタントクローンとは?(リンククローンとの違い)
Horizon 2012(8.x)以降、標準となったインスタントクローン。従来のリンククローンと比べ、展開速度と管理コンポーネント構成の両面で大きな改善が加えられています。
最大の違いは「メモリの共有(vmFork)」
リンククローンとインスタントクローンの決定的な違いは、「コピーする対象」です。
- リンククローン
-
親 VMの 「ディスク(HDD)」 だけを共有していました。そのため、展開されたクローン VM は、OS の起動処理(ブート)を一から行う必要がありました。
- インスタントクローン
-
ディスクに加えて、実行中の親 VMの 「メモリ空間」 ごとコピーします。
これは Omnissa(旧 VMware)の「vmFork」という技術によって実現されています。親(ペアレント VM)は、OS が起動完了した状態で一時停止(サスペンド)されており、そこからクローンされるため、BIOS 起動や Windows のロード時間をすべてスキップできます。結果として、ユーザーに提供される瞬間には既にログイン画面が表示されている状態となり、数秒〜数十秒単位での展開が実現します。
【比較表】3 つのクローン技術の違い
VDI の展開方式としては「フルクローン」「リンククローン(廃止)」「インスタントクローン(現行)」の 3 つがあります。運用の観点から見た主な違いは以下の通りです。
| 項目 | フルクローン | リンククローン(廃止) | インスタントクローン(現行) |
| 技術ベース | 完全複製 | ディスク差分(View Composer) | メモリ + ディスク差分(vmFork) |
| 展開速度 | 遅い(数十分) | 遅い(数分〜数十分) | 高速(数秒〜数十秒) |
| 展開時の再起動 | 必要 | 必要(Sysprep/QuickPrep) | 不要(ClonePrep) |
| リソース負荷 | 一斉起動でブートストーム | 一斉起動でブートストーム | ブート負荷なし |
| ユーザーデータの永続化 | ◯(ネイティブ) | ◯(Persistent Disk) | △(Horizon 2306 以降で限定対応) |
| ログオフ後の挙動 | 保持 | 保持 or リフレッシュ | 削除され再作成(デフォルト) |
| 構成コンポーネント | vCenter | vCenter + Composer(廃止) | vCenter + Connection Server |
| ストレージ消費 | 大 | 小 | 極小 |
| 現行サポート | ◯ | × | ◯(推奨) |

現代の主流となっている「ログオフしたら即削除、次は新品」という運用モデルは、キャッシュや設定の残留物が一切残らないため、常にクリーンな環境をユーザーに提供できます。ユーザーデータはファイルサーバ(FSLogix、Omnissa Dynamic Environment Manager など)に逃がす設計を推奨します。
⚠️ 補足:「インスタントクローンは完全に使い捨て専用」という理解は Horizon 2306(8.10)以降では正確ではありません。2306 以降では dedicated instant clone + Persistent Disk の構成が可能となり、ユーザーごとのデータ永続化にも対応できるようになりました。
参考: Carl Stalhood「Omnissa Horizon 8: Virtual Desktop Pools」
“Horizon 2306 (8.10) and newer support Persistent Disks with dedicated Instant Clones.” (Horizon 2306(8.10)以降は dedicated Instant Clone での Persistent Disk をサポートします。)
https://www.carlstalhood.com/vmware-horizon-8-virtual-desktop-pools/
導入前に押さえておきたい制約事項
インスタントクローンには固有の前提条件や制約があります。運用開始後に問題となりやすいポイントを以下にまとめます。
ClonePrep は Sysprep と異なり SID を変更しない
インスタントクローンのゲストカスタマイズは ClonePrep が担当します。ClonePrep は高速な展開のために設計されていますが、従来の Sysprep と異なり Windows の SID(セキュリティ識別子)を変更しません。そのため、SID 単位でのアクセス制御が必要な環境では注意が必要です。
なお、Horizon 2106 以降では Sysprep を併用する選択肢も追加されていますが、その場合は ClonePrep の高速性というメリットが一部失われます。
参考: C&S ENGINEER VOICE(Horizon インスタントクローンとは)
“インスタントクローンの Microsoft Sysprep は『Horizon Version 2106』より前のバージョンではサポートしておりません。ClonePrep によるカスタマイズでは SID を変更することが出来ないので注意が必要です。”
https://licensecounter.jp/engineer-voice/blog/articles/20210331_horizon.html
vSphere バージョンの前提条件
Horizon 2303 以降のインスタントクローンは、vSphere 7 以降が必須です。vSphere 6.7 以前の環境では動作しません。古い vSphere 環境を継続利用している場合は、Horizon 側のバージョンと合わせて vSphere のアップグレード計画も必要です。
Windows ライセンス(KMS)の要件
インスタントクローンで展開される仮想デスクトップでは、KMS ライセンス(または Active Directory ベースのアクティベーション)の使用が推奨されます。MAK ライセンスは Horizon 2212 以降でサポートされましたが、運用上は KMS が一般的です。
Windows 11 の vTPM に関する制約
Windows 11 をゴールデンイメージとして利用する場合、vTPM はゴールデンイメージには追加せず、プール作成時に Horizon 側から追加する構成が公式に推奨されています。vTPM を利用するには、vSphere の Key Provider(vSphere 7 の Native Key Provider など)の構成も必要です。
参考: Omnissa KB 85960 および Carl Stalhood 公開ガイド
“Windows 11 – Omnissa says don’t add vTPM to the gold image. Instead add the vTPM when creating the Instant Clone pool or Full Clone pool.”
(Omnissa は、vTPM をゴールデンイメージに追加せず、インスタントクローンプールまたはフルクローンプール作成時に追加することを推奨しています。)
https://www.carlstalhood.com/vmware-horizon-8-virtual-desktop-pools/
GPO の制約
インスタントクローンは新規展開時にグループポリシー(GPO)のリフレッシュを行いません。そのため、コンピュータに適用すべき GPO はゴールデンイメージ側で事前に適用しておく必要があります。ゴールデンイメージを正しい OU に配置してから gpupdate を実行し、その上でスナップショットを取得するフローを推奨します。
Nutanix AHV 対応(Horizon 8 2512 以降)
従来、Horizon のインスタントクローンは vSphere 専用でしたが、Horizon 8 2512 以降では Nutanix AHV にも正式対応しました。ClonePrep による自動 RDSH ファーム構築も可能になっています。vSphere 以外のハイパーバイザを検討している場合は、この新対応が選択肢となります。
参考: Virtualization Review(Omnissa Horizon Update)
“The most anticipated change was in the Horizon 8 2512 release, which brought general availability of support for Nutanix AHV, making Horizon deployments viable on an alternative hypervisor and including features such as automated RDSH farms, ClonePrep for efficient provisioning.”
(最も注目される変更は Horizon 8 2512 で、Nutanix AHV への正式対応により Horizon を代替ハイパーバイザ上で展開可能になり、自動 RDSH ファームと ClonePrep による効率的なプロビジョニングも含まれます。)
https://virtualizationreview.com/articles/2026/03/05/omnissa-horizon-update.aspx
【図解】インスタントクローンの4層構造
インスタントクローンを展開すると、裏側では自動的に複数の中間 VM が作成されます。この仕組みが少し複雑に見える原因ですが、それぞれの役割を知れば難しくありません。


各 VM の役割
- マスター VM(Master Image)
-
管理者が作成・更新する「コピー元」となる仮想マシンです。OS やアプリ、Horizon Agent をインストールします。
- テンプレート VM(Template)
-
マスター VM のスナップショットから作成される「静的なコピー」です。vCenter 上では
cp-template-xxxxといった名前で表示されます。 - レプリカ VM(Replica)
-
リンククローン時代から存在する、全デスクトップで共有される「読み取り専用ディスク」です。vCenter 上では
cp-replica-xxxxと表示されます。 - ペアレント VM(Parent)
-
レプリカ VM を元に、各 ESXi ホストごとに 1 台ずつ作成されます。OS が起動した状態でメモリ上にロードされ、直後に「サスペンド(一時停止)」状態になります。vCenter 上では
cp-parent-xxxxと表示されます。


vCenter 上では
cp-parent-xxxxと表示され、常にパワーオン(サスペンド)状態に見えますが、これが正常動作です。メモリの供給源として待機している重要な VM のため、手動で削除・停止しないことを強く推奨します。 - 仮想デスクトップ(Instant Clone Desktop)
-
ユーザーが実際に利用する VM です。同じホストにいる「ペアレント VM」から、メモリとディスクの状態を瞬時にコピー(vmFork)して誕生します。
💡 補足:Smart Provisioning による挙動の変化(Horizon 8 以降)
Horizon 8 では「Instant Clone Smart Provisioning」が実装されており、1 台の ESXi ホストに対して展開する VDI が 12 VM 未満の場合、ペアレント VM は作成されず、レプリカ VM から直接 VDI が展開されます。12 VM 以上の場合は従来通りペアレント VM が構成されます。小規模な検証環境ではこの挙動により「cp-parent VM が見当たらない」ケースがあるため、4 層構造の説明と合わせて把握しておくと有用です。
参考: iDATEN「Horizon8 インスタントクローンの概要」
https://www.idaten.ne.jp/portal/page/out/secolumn/vmware/column109.html
構築と運用のポイント
仕組みは複雑そうに見えるインスタントクローンですが、構築や運用はリンククローン時代よりもシンプルになっています。
Composer サーバが不要になり、シンプルに
リンククローン環境では、vCenter とは別に「View Composer サーバ(と専用のデータベース)」を構築する必要があり、これがトラブルの種になることが多々ありました。 しかし、インスタントクローンでは View Composer は不要です。Connection Server(管理サーバ)が直接 vCenter と連携してクローン処理を行うため、インフラ構成がスッキリしました。
💡 Omnissa License Module(OLM)への移行に関する注意
Horizon 8 2503 / 2506 以降、ライセンスは従来の VMware/Broadcom ライセンスモジュールから Omnissa License Module(OLM) に移行されました。既存環境を 2503 以降にアップグレードする場合、有効な Omnissa ライセンスキーが適用されていないと制限モードで起動するため、アップグレード前にライセンス体系の見直しが必要です。
参考: Virtualization Review「Omnissa Horizon Update」
“Releases such as Horizon 8 2503 and 2506 transitioned away from VMware/Broadcom license modules to the Omnissa License Module (OLM). After upgrading, deployments without valid Omnissa keys enter a restricted mode until compliant keys are applied.”
https://virtualizationreview.com/articles/2026/03/05/omnissa-horizon-update.aspx
Agent インストール時のポイント
マスター VM(ゴールデンイメージ)を作成する際、Horizon Agent のインストーラで以下の設定を選択することが推奨されます。
- VMware Horizon Instant Clone Agent / Omnissa Horizon Instant Clone Agent: 選択
- VMware Horizon View Composer Agent: 選択外(Horizon 8 では選択不可)
ここを間違えるとプール作成時にエラーとなります。
⚠️ Horizon 8.14 以降での Agent バージョン注意点
Omnissa リブランドに伴い、Horizon 8.14 以降では Agent 内部のレジストリパスや設定項目が VMware → Omnissa に変更されました。その影響で、古いバージョンの Agent を使用するとインスタントクローンが Horizon Console 上で「Parent Template」に正しく登録されない既知の不具合があります(追跡番号 EPCB-24403)Agent 8.11.0 以降で修正されているため、ゴールデンイメージの Agent は同バージョン以降にアップグレードすることを推奨します。
参考: Omnissa(Broadcom)KB「Omnissa (Horizon) Instant Clones Not Registering With a Parent Template」
https://knowledge.broadcom.com/external/article?articleNumber=396588
イメージ更新(パッチ適用)の流れ
Windows Update やアプリの更新を行いたい場合、リンククローンでは「再構成(Recompose)」という重たい処理が必要でした。 インスタントクローンでは、これが 「イメージのスケジュール設定(Image Push)」 という操作に変わります。
更新のサイクルは以下の通りです。
管理者がマスター VM を起動し、パッチを当ててシャットダウンし、新しいスナップショット(例: Snap_v2)を取得する。
管理コンソールから、プールに対して「Snap_v2 を使うように」スケジュール設定する。
- ログオフ中の VM: 即座に削除され、Snap_v2 ベースの新品が作成されます。
- 使用中の VM: ユーザーがログオフした瞬間に削除され、次は Snap_v2 ベースで再作成されます。





「パッチ適用後に再起動してください」というユーザー向けのアナウンスは不要です。ユーザーがログオフして翌朝ログインする頃には、OS が新しいスナップショットベースに入れ替わっています。緊急時(セキュリティパッチ適用など)には、強制的にログオフさせて即時入れ替えを行う運用も可能です。
リンククローン環境からインスタントクローンへの移行経路
Horizon 7 のリンククローン環境を Horizon 8 にアップグレードする際、リンククローンは廃止されているため、インスタントクローンへの移行が前提となります。移行時に対応が必要な主要コンポーネントを整理します。
View Composer の廃止への対応
Horizon 8 では View Composer サーバおよび専用データベースは不要となります。アップグレード前に View Composer 関連のコンポーネントを環境から除外しておく必要があります。View Composer が残ったままでは Horizon 8 へのアップグレード自体が失敗するため、事前の棚卸しが重要です。
Persistent Disk(個人設定の永続化ディスク)の移行
リンククローン環境でユーザー固有の設定を Persistent Disk に保存していた場合、インスタントクローンへの直接的な互換性はありません。以下のいずれかの方針を選択することを推奨します。
- Horizon 2306(8.10)以降の Persistent Disk + dedicated Instant Clone を利用する(Omnissa KB 93091 に移行ガイド)
- FSLogix Office Containers や Profile Containers に移行する
- App Volumes Writable Volumes に移行する
Persona Management → Omnissa DEM への移行
Horizon 7 で使われていた Persona Management は廃止されているため、代替として Omnissa Dynamic Environment Manager(DEM)への移行が公式に推奨されています。DEM は Persona Management と同様にユーザー設定データをセッション間で永続化しますが、加えて以下のような機能を備えます。
- ドライブ・プリンタマッピング
- Smart Policies による Horizon との統合
- 権限昇格(DEM Enterprise)
- アプリケーションブロッキング(DEM Enterprise)
ライセンス面の変更点: Horizon 8(2203)以降、DEM Standard は Horizon Standard / Advanced でも利用可能となりました(従来は Enterprise 限定)。フル機能の DEM Enterprise は引き続き Horizon Enterprise および Horizon Universal / Enterprise Plus サブスクリプションに含まれます。
参考: Omnissa(Modernizing VDI for a New Horizon)
“With the release of Omnissa Horizon 8, several legacy components are removed or deprecated. This guide provides options and guidance for the many paths to migrating from View Composer, persistent disks, and Persona Management to modern alternatives.”
(Omnissa Horizon 8 のリリースにより、複数のレガシーコンポーネントが削除または非推奨となりました。このガイドでは、View Composer・Persistent Disk・Persona Management から最新の代替手段への移行経路に関する選択肢とガイダンスを提供します。)
https://techzone.omnissa.com/resource/modernizing-vdi-new-horizon
ライセンス形態の変更(重要)
Horizon 8 2503 / 2506 以降、ライセンスは従来の VMware/Broadcom 形式から Omnissa License Module(OLM) に移行しています。既存のライセンスキーが自動的に引き継がれるわけではないため、アップグレード前に Omnissa 側の新ライセンス契約の確認が必要です。
推奨される移行の順序
実運用での移行にあたっては、以下の順序が無難です。
- 検証環境で Horizon 8 の挙動を確認(本番環境とは切り離されたラボ環境で移行計画を検証)
- ユーザープロファイルの移行先(FSLogix / DEM / App Volumes)を先に導入
- View Composer および Persistent Disk からの移行を実施
- ライセンスを OLM に切り替え
- 本番環境のアップグレード



Omnissa 公式も「本番実装前に隔離された非本番ラボ環境でアップグレード・移行計画をテストすることを強く推奨する」としています。
ライセンス・料金の概要(Omnissa 時代)
Omnissa 独立後、Horizon 8 および Horizon Cloud のライセンスは月額サブスクリプション形式に統一されました。主要なライセンスエディションは以下の通りです。
- Horizon Standard / Advanced / Enterprise
-
オンプレミス中心の永続ライセンス(Omnissa 体制下でサブスクへ段階移行)
- Horizon Universal
-
マルチクラウド・オンプレミス横断対応のサブスクリプション
- Horizon Standard Plus / Enterprise Plus
-
フル機能サブスクリプション(DEM Enterprise 等を含む)
インスタントクローン機能のライセンス面の変更点
従来は Horizon 7 Enterprise 限定で提供されていたインスタントクローン機能は、Horizon 7.13 および Horizon 8(2006)以降は Standard / Advanced / Enterprise すべてのエディションで利用可能になりました。サブスクリプション版(Horizon Universal / Standard Plus / Enterprise Plus)にもインスタントクローン機能は含まれています。
具体的な料金や最新のエディション構成は変動するため、Omnissa 公式サイト(omnissa.com)での確認を推奨します。
参考: Omnissa(Modernizing VDI for a New Horizon)
“Historically, instant-clone provisioning was included with Horizon 7 Enterprise licensing only. Starting with Horizon 7 version 7.13 and Horizon 8 (2006), everyone who owns a Horizon Standard, Advanced, or Enterprise edition has access to instant-clone provisioning.”
(従来、インスタントクローンプロビジョニングは Horizon 7 Enterprise ライセンスに限定されていましたが、Horizon 7.13 および Horizon 8(2006)以降は Horizon Standard / Advanced / Enterprise を保有する全ユーザーがインスタントクローンプロビジョニングを利用可能です。)
https://techzone.omnissa.com/resource/modernizing-vdi-new-horizon
実運用でよくあるハマりポイントと対処
インスタントクローン環境の構築・運用では、仕組みが複雑な分だけ独特のトラブルが発生しがちです。以下に頻出するハマりポイントと対処方法をまとめます。
ハマり①: cp-parent VM を誤って削除してしまった
vCenter 上で「常にパワーオン状態の見慣れない VM(cp-parent-xxxx)」を誤操作で削除してしまうと、該当 ESXi ホストで新規の仮想デスクトップが展開できなくなります。
ペアレント VM はメモリの供給源として待機している重要な VM のため、これを削除するとそのホスト上での vmFork 展開ができなくなります。
Horizon Console からプールに対して「Push Image」を再実行することで、ペアレント VM が自動的に再作成されます。ユーザー影響を抑えるため、業務時間外の実施を推奨します。日常運用では cp- プレフィックスの VM に触れないという運用ルールを設けることを推奨します。
ハマり②: Horizon 8.14 以降でインスタントクローンがテンプレートに登録されない
Horizon 8.14 以降にアップグレード後、インスタントクローンが Horizon Console 上で「Parent Template」として正しく登録されず、プール展開が失敗する。
Omnissa リブランドに伴い、Agent のレジストリパスや設定項目が VMware → Omnissa に変更されました。古いバージョンの Agent(特に Horizon 7 系)を使用していると、この変更に対応できず登録処理が失敗します(追跡番号 EPCB-24403)
ゴールデンイメージ上の Horizon Agent を 8.11.0 以降にアップグレードし、テンプレートイメージプロセスを再実行します。ワークアラウンドとして VDI Policy で Agent Config を設定する方法もありますが、根本対処として Agent のアップグレードを推奨します。
参考: Broadcom KB(Omnissa Instant Clones Not Registering With a Parent Template)
https://knowledge.broadcom.com/external/article?articleNumber=396588
ハマり③: ClonePrep のドメイン参加が失敗する
仮想デスクトップは展開されるが、Active Directory ドメインへの参加に失敗する。
- ドメイン参加用のサービスアカウントの権限不足
-
コンピュータアカウントの作成・削除権限が不足している可能性があります。OU レベルで必要な権限が付与されているかを確認します。
- DNS 解決の問題
-
ゴールデンイメージから AD ドメインコントローラの FQDN が解決できない状況です。DNS サーバーの設定(DHCP 配布値含む)を確認します。
- タイムゾーン・時刻同期のずれ
-
AD 認証では時刻同期が重要です。ゴールデンイメージ側で NTP 同期が動作していることを確認します。
ハマり④: GPO が仮想デスクトップに反映されない
コンピュータに適用した GPO が、展開後のインスタントクローンに反映されない。
インスタントクローンは新規展開時に GPO のリフレッシュを行わないため、展開時点でゴールデンイメージに適用済みの GPO のみが引き継がれます。再起動が必要な GPO は特に注意が必要です(Omnissa KB 2150495)
ゴールデンイメージを Instant Clone と同じ OU に配置し、gpupdate /forceを実行してから、シャットダウン → スナップショット取得 → プール更新(Push Image)を行います。
ハマり⑤: 新規展開時に「既存の VM 名と重複」エラー
プール再作成時やテスト展開時に、「既存の VM 名と重複する」という趣旨のエラーでプロビジョニングが失敗する。
前回展開時に作成された内部管理用の VM(cp-template-xxxx、cp-replica-xxxx等)が vCenter 上に残存しているケースがあります。
vCenter 上で Horizon が使用する内部フォルダ(通常は ClonePrepInternalTemplateFolder)を確認し、孤立したテンプレート・レプリカ VM を手動でクリーンアップします。その後、Horizon Console からプールの再作成を行います。
ハマり⑥: Smart Provisioning 有効時に「ペアレント VM が見当たらない」
小規模な検証環境で、cp-parent-xxxxVM が vCenter 上に見当たらない。
これは不具合ではなく、Smart Provisioning の仕様です。ESXi ホスト 1 台あたりの VDI 展開数が 12 VM 未満の場合、ペアレント VM を介さずレプリカ VM から直接クローンされます。
12 VM 以上を展開すれば、従来通りペアレント VM が自動構成されます。検証環境ではこの挙動を前提に動作確認することを推奨します。
まとめ
- リンククローンは Horizon 8 で廃止され、View Composer 不要のシンプルな構成となった。
- vmFork 技術により、ディスクだけでなくメモリ空間ごとコピーすることで数秒〜数十秒単位の展開が実現する。
- Horizon 2306 以降は Persistent Disk + dedicated Instant Clone の構成も可能であり、「使い捨て専用」という位置づけは変化している。
- 2024 年の Omnissa 独立に伴い、ライセンスは OLM へ、Horizon 8.14 以降では Agent の仕様変更に注意が必要
- Horizon 8 2512 で Nutanix AHV 対応が追加され、ハイパーバイザの選択肢が広がった。
- リンククローンからの移行は、View Composer・Persistent Disk・Persona Management の棚卸しと代替手段(FSLogix / DEM 等)への置き換えが前提となる。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

