Microsoft 365 対象指定リリース廃止|10月末までの移行手順

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はじめに

2026 年 10 月 7 日、Microsoft 365 管理センターのメッセージセンターに「MC1490899: Microsoft 365: Targeted Release retirement」が公開されました。新機能を一般提供より先に受け取るための「対象指定リリース」(Targeted release)が 2027 年 1 月に廃止され、Frontier、Standard release、Deferred release の 3 つのリリースオプションへ移行するという告知です。

告知には「Act by: 2026 年 10 月 31 日」と表示されています。11 月から変更できなくなるのは従来の対象指定リリースの登録内容で、Frontier、Standard release、Deferred release の新しい設定は 11 月以降も統合リリース設定画面で管理できます。対象指定リリース自体の廃止は 2027 年 1 月です。一方で、対象指定リリースのユーザーをどの新オプションへ移すべきかは、告知だけでは判断に迷うところです。本記事では、MC1490899 と Microsoft Learn の公式ドキュメントをもとに、変更内容、スケジュール、移行先の決め方、管理センターでの作業を整理します。

この記事でわかること
  • MC1490899 で告知された対象指定リリース廃止のスケジュール
  • Frontier、Standard release、Deferred release の違い
  • 現在の対象指定リリース設定ごとの公式な移行先
  • 11 月までに管理者が行う確認と設定の手順
  • Frontier に誰を登録するかを決めるときの判断ポイント

結論として、対象指定リリースを使っている組織は、10 月末までに現在の登録ユーザーを確認し、移行先の設定まで済ませておくことを推奨します。一部ユーザーだけを対象指定リリースにしている場合、公式の推奨は Frontier への移行ではなく、「テナント全体を Deferred release、検証ユーザーを Standard release」にする構成です。対象指定リリースを使っていない組織は、現時点で必要な作業はありません。

MC1490899 で何が変わるのか(対象指定リリースの廃止)

Microsoft 365 のサービス更新は、これまで「Standard リリース」と「対象指定リリース」の 2 択で受け取りのタイミングを選んでいました。今回の変更で対象指定リリースが廃止され、一般提供前のプレビューを受け取る Frontier と、一般提供のタイミングを選ぶ Standard release / Deferred release の 3 段階に整理されます。

参考: MC1490899 – Microsoft 365: Targeted Release retirement(Microsoft 365 Message Center Archive)
“Targeted release for Microsoft 365 services will be retiring in January 2027”
(Microsoft 365 サービスの対象指定リリースは 2027 年 1 月に廃止されます)
https://mc.merill.net/message/MC1490899

メッセージセンターの投稿はテナントの管理者のみが閲覧できます。上記は同じ内容を公開している非公式アーカイブで、詳細な移行ガイダンスは Microsoft Learn の「Microsoft 365 での対象指定リリースの廃止に関する計画」に掲載されています。

対象指定リリース廃止のスケジュール

告知と Microsoft Learn に記載されている日程は次のとおりです。10 月末の期限が関係するのは従来の対象指定リリースの登録内容で、新しいリリース設定には期限がありません。

時期内容
2026 年 10 月 31 日まで(MC1490899 の Act by)対象指定リリースの登録ユーザーを確認し、必要な追加・削除を済ませる。Frontier、Standard release、Deferred release の設定もこの時期に構成しておくことが推奨されている
2026 年 11 月対象指定リリースへのユーザー追加・削除・変更ができなくなる(登録済みのユーザーは廃止まで対象指定リリースの機能を受け取る)
2026 年 11 月統合リリース設定画面が提供され、Frontier、Standard release、Deferred release を 1 か所で管理できるようになる(11 月以降も変更可能)。現在の Standard / Deferred の設定画面は廃止される
2027 年 1 月対象指定リリースが廃止され、ユーザーとテナントの対象指定リリース割り当ては機能提供に使われなくなる

11 月以降の管理画面の詳細は、今後のメッセージセンター投稿で案内されるとされています。

対象となるサービスと影響しないもの

対象は、Microsoft 365 管理センター、Microsoft Teams、OneDrive、SharePoint Online、Outlook on the web、新しい Outlook for Windows、Office for the web など、現在対象指定リリースで機能を提供しているサービスです。MC1490899 では Exchange Online の一部のコンポーネントも対象に含まれています。

Microsoft 365 Apps の更新チャネル、Windows の更新チャネル、Microsoft 365 Insider プログラムは影響を受けません。また、GCC、GCC High、DoD の政府機関向け環境では、現時点で Deferred release と Frontier が提供されておらず、廃止後のサポート対象は Standard release のみです。

Frontier・Standard release・Deferred release の違い

3 つのオプションは同じ軸の 3 段階ではありません。Frontier は一般提供前のプレビューへのオプトイン、Standard release と Deferred release は一般提供後に機能を受け取るタイミングの選択で、Frontier に登録したユーザーも Standard release か Deferred release のいずれかに属します。

項目FrontierStandard releaseDeferred release
目的一般提供前の評価とフィードバック一般提供と同時に受け取る主要な更新の準備期間を確保する
機能の状態プレビュー(変更の可能性あり、GA の SLA 対象外)サポート対象の一般提供機能サポート対象の一般提供機能(遅延して提供)
タイミング一般提供より前一般提供の開始時対象機能のみ、Standard release への展開開始から約 30 日後
既定値アクセスなし(オプトインが必要)既定管理者が選択した場合のみ
政府機関向けクラウド提供なし提供あり提供なし

Microsoft は Standard release を大半の組織に推奨しており、Deferred release は追加の検証が必要な組織向けの選択肢と位置付けています(出典: Microsoft 365 サービスの最新のリリース オプションを構成する)。

Deferred release で遅らせられる機能の範囲

Deferred release は、Microsoft 365 のすべてのサービスの更新を 30 日遅らせる設定ではありません。適用範囲は、資料の更新に合わせて段階的に広がっています。

2026 年 10 月 7 日の更新前の設定資料では、Standard / Deferred の新しいオプションは当初 Microsoft 365 Copilot の更新にのみ適用され、今後 Microsoft 365 の全サービスへ拡大すると説明されていました。10 月 7 日の更新版ではこの記述がなくなり、対象指定リリースで提供していた Teams、OneDrive、SharePoint Online などの機能更新も、新しいリリースオプションへ移行すると説明されています。公式 FAQ でも、新しいモデルで提供される主要機能は今後増えていくとされています。

そのため、どのサービスのどの機能が Deferred release の対象になるかは、機能ごとのメッセージセンター投稿で確認する必要があります。公式 FAQ に記載されている制約は次のとおりです。

  • 遅延の対象は、メッセージセンターで「Major update」と「Deferred feature」の両方のタグが付いた機能だけです。それ以外の機能は、Deferred release のユーザーにも通常どおり提供されます。
  • 30 日のカウントは、Standard release への全世界展開が「始まった時点」から始まります。展開の完了時点ではありません。
  • 機能を個別に選んで遅らせることはできません。
  • テナント単位で展開される機能は、Standard / Deferred の割り当てに関係なく全ユーザーへ同時に適用される場合があります。
  • Deferred release は Frontier の機能には適用されません。

Deferred release は既存の機能ごとの管理設定を置き換えるものではないため、機能単位で制御したい場合は従来どおり各サービスの管理設定を併用します(出典: Microsoft 365 の最新のリリース オプションについてよく寄せられる質問)

対象指定リリースの移行先を決める

移行先は、現在の対象指定リリースの設定によって決まります。Microsoft Learn には、現在の設定ごとの推奨移行先が示されています。

現在の設定推奨される移行先
すべてのユーザーに対して対象指定リリース一般提供と同時に受け取るなら Standard release、主要な変更に準備期間が必要なら Deferred release
選択したユーザーの対象指定リリーステナントを Deferred release にし、検証・サポート・パイロットのユーザーを Standard release の例外に追加する
Standard リリース(すべてのユーザー)変更不要(Standard release が既定)

一部ユーザーの先行検証を Frontier で代替しない理由

「先行して機能を受け取るユーザー」という点で、対象指定リリースのユーザーをそのまま Frontier に移したくなるかもしれません。しかし、両者は対象とする機能の段階が異なります。

参考: Get started with the Microsoft Frontier Program(Microsoft Learn)
“Targeted release is for access to features early within general availability.”
(対象指定リリースは、一般提供の範囲内で機能へ早期にアクセスするためのものです)
https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/admin/manage/get-started-frontier

対象指定リリースのユーザーが受け取っていたのは、一般提供される機能を一般ユーザーより先に受け取ることでした。新しいモデルでこれに相当するのは、Deferred release のテナント内で Standard release に割り当てたユーザーです。Frontier は一般提供前のプレビュー機能を扱うため、従来の先行検証グループをそのまま移す先ではありません。Frontier への登録は、プレビュー機能を評価する必要があるかどうかで別に判断します。

Standard / Deferred の例外は 100 ユーザーまで

「テナントは Deferred release、一部ユーザーは Standard release」という構成は、例外の割り当てで実現します。この例外には上限があります。

参考: Configure new Standard and Deferred release options for Microsoft 365(Microsoft Learn)
“You can add up to 100 exceptions to Standard release or Deferred release.”
(Standard release または Deferred release には、最大 100 件の例外を追加できます)
https://learn.microsoft.com/en-us/microsoft-365/admin/manage/configure-release-options

同ドキュメントでは、セキュリティグループ内の各ユーザーと個別に追加したユーザーがすべて 100 ユーザーの上限に数えられると説明されています。現在「選択したユーザーの対象指定リリース」に 100 人を超えるユーザーを登録している場合は、例外の対象を絞り込む必要があります。ヘルプデスク、IT 部門、各部門のパイロットユーザーなど、先行して機能を確認する役割の人を優先して選定します。

何も設定しなかった場合の扱い

Microsoft がリリース設定を自動で変更することはありません。何もしなかった場合、対象指定リリースのユーザーは廃止後、テナントで構成されている Standard release または Deferred release の設定に従い、新しいリリース設定が未構成であれば Standard release で機能を受け取ります。

つまり、先行検証グループを維持したい組織が何もしないと、2027 年 1 月以降は検証ユーザーも一般ユーザーと同じタイミングで機能を受け取ることになり、事前検証の期間がなくなります。すでにテナントを Deferred release にしている場合は、対象指定リリースのユーザーも Deferred release となり、以前より機能の受け取りが遅くなる点にも注意が必要です。

Microsoft 365 管理センターでの移行手順

Microsoft Learn の「Recommended actions」と MC1490899 の「Action Required」に沿って、移行作業を順に示します。画面パスは公式ドキュメントの英語表記に合わせています。11 月に統合リリース設定画面が提供されると、手順 2 と手順 3 の画面パスは変わる見込みです。

手順
対象指定リリースの現在の設定を確認する

Microsoft 365 管理センターで「Settings > Org settings > Organization profile > Release preferences」(設定 > 組織設定 > 組織プロファイル > リリース設定)を開き、「すべてのユーザーに対して対象指定リリース」か「選択したユーザーの対象指定リリース」か、登録されているユーザーは誰かを確認します。この画面での追加・削除は 10 月末までに済ませます。

手順
一般提供のリリース設定(Standard / Deferred)を構成する

「Copilot > Settings > View all」から「Copilot release preferences: General availability」を開き、テナント全体の既定として Standard release または Deferred release を選びます。続けて例外のユーザーまたはセキュリティグループを追加し、保存します。

  • 一部のユーザーだけを Deferred release にする場合: Standard release を選び、対象のユーザーまたはグループを追加する
  • 一部のユーザーだけを Standard release にする場合: Deferred release を選び、対象のユーザーまたはグループを追加する

設定には Office Apps 管理者、セキュリティ管理者、AI 管理者のいずれかのロールが必要です。変更の反映には最大 24 時間かかる場合があります。

手順
Frontier の登録対象を決める

プレビュー機能を評価するユーザーがいる場合は、「Copilot > Settings > View all」から「Copilot Frontier」を開き、「No access」(既定)、「All users」、「Specific users and groups」のいずれかを選びます。Frontier の機能やエージェントがユーザーに表示されるまで、最大 3 時間程度かかる場合があります。

手順
社内ドキュメントと運用プロセスを更新する

変更管理手順書、検証手順、ヘルプデスクのナレッジなど、「対象指定リリース」を前提にしている社内資料を、新しいリリースオプションに合わせて更新します。メッセージセンターの「Deferred feature」タグを確認する運用も、必要に応じて追加します。

手順
関係者へ周知する

変更管理チーム、サポートチーム、セキュリティ・コンプライアンスチーム、パイロットグループ、主要な IT 関係者に、対象指定リリースの廃止と移行後の構成を伝えます。特に、Standard release の例外から外れるユーザーには、機能を受け取るタイミングが変わることを事前に案内します。

設定後の確認ポイント

設定が保存されたことと、機能が実際に提供されたことは別の事象です。公式手順は「Save」で終わるため、以下は編集部が推奨する保存後の確認ポイントです。

  • 設定画面を開き直し、テナントの既定が意図した Standard release または Deferred release になっているかを確認します。
  • 例外として追加したユーザーとセキュリティグループが、意図した側(Standard / Deferred)に割り当てられているかを確認します。
  • 例外にグループを使う場合は、Microsoft Entra ID でメンバー数を確認し、個別追加のユーザーと合わせて 100 ユーザーの上限内に収まっているかを確認します。グループにメンバーを追加する運用では、上限の超過に注意が必要です。
  • 手順 2・3 のとおり反映には時間がかかるため、保存直後の表示だけで設定の成否を判断しないようにします。
  • 反映後、メッセージセンターで「Deferred feature」タグが付いた投稿の機能が、Standard release の検証ユーザーに先行して届いているかを確認します。該当する機能の展開がまだ始まっていない場合は、確認を次の対象機能まで持ち越します。

公式ドキュメントには、Standard release から Deferred release へ移したユーザーが、Deferred release にまだ提供されていない機能を使えなくなる可能性があるとの注記があります。テナントを Deferred release に切り替える場合は、利用中の機能が一時的に見えなくなる可能性をヘルプデスクと共有しておくと、問い合わせ対応がしやすくなります。

Frontier に誰を入れるかの判断ポイント

今回の移行で設計の自由度が最も高いのが Frontier です。Frontier は Copilot のエージェントや AI 機能を含むプレビューへのアクセスを管理するもので、ここからは公式情報をもとにした編集部の考え方として、ガバナンスの観点で整理します。

Frontier の公式な前提条件と制約

Frontier の公式ドキュメントでは、次の点が明記されています(出典: Microsoft Frontier プログラムの使用を開始する)。

  • Frontier の機能はプレビューで、変更・停止・提供終了の可能性があり、標準のサポートや SLA の対象外となる場合があります。
  • Copilot 関連の Frontier 機能を使うには、対象ユーザーに Microsoft Copilot ライセンスが割り当てられている必要があります。
  • Frontier の体験は既存の契約(Product Terms、DPA)の対象ですが、HIPAA BAA の対象外で、一部は有償の場合があります。
  • Anthropic などの AI プロバイダーのモデルを使う機能は、管理者がそのプロバイダーを有効にしない限り利用できません。Frontier が代わりに有効化することはありません。
  • Agent 設定で無効にしたエージェントは、Frontier に登録していても利用できません。

登録対象の考え方(編集部の推奨)

上記の制約を踏まえると、Frontier は「誰に AI のプレビューを触らせるか」を決める設定であり、リリースタイミングの設定とは分けて考えることを推奨します。編集部としては、次のように整理するのがおすすめです。

Frontier に登録する候補

AI の利用ルールを策定する IT 部門やセキュリティ担当、Copilot の展開を担当するチームなど、プレビュー機能の挙動やデータの扱いを評価する役割の人です。「Specific users and groups」で専用のセキュリティグループに限定すると、登録者の棚卸しがしやすくなります。

Standard release の例外にする候補

ヘルプデスクや各部門のパイロットユーザーなど、一般提供機能を先に確認して社内案内を準備する役割の人です。従来の「選択したユーザーの対象指定リリース」に登録していたユーザーの多くは、こちらに該当すると考えられます。

Frontier に登録しない対象

機密性の高いデータを扱う部門や、業務が止まると影響の大きいユーザーです。プレビュー機能はサポートや SLA の対象外となる場合があるため、業務の安定性を優先するユーザーは Standard release または Deferred release にとどめます。

「All users」は設定の手間が少ない一方で、プレビュー機能が全社に表示されるため、AI の利用ルールや教育が整っていない段階では避けることを推奨します。登録対象は一度決めて終わりではなく、Copilot の展開状況に合わせて定期的に見直すことをおすすめします。

まとめ

MC1490899 により、Microsoft 365 の対象指定リリースは 2027 年 1 月に廃止され、11 月には登録変更ができなくなります。一部ユーザーで先行検証している組織は、Frontier ではなく Deferred release と Standard release の組み合わせで検証の仕組みを引き継ぐのが公式の推奨です。

  • 対象指定リリースは 11 月に登録変更が止まり、2027 年 1 月に廃止されます。
  • 新モデルは Frontier と Standard、Deferred の 3 つのリリースオプション
  • Frontier は一般提供前のプレビューで、対象指定リリースの後継ではありません。
  • 一部ユーザーの先行検証は、テナント Deferred と例外 Standard で再現します。
  • Standard / Deferred の例外は 100 ユーザーまでという上限があります。
  • 設定は自動で変更されず、未構成なら廃止後は Standard で受け取ります。
  • Frontier の登録対象は AI ガバナンスの観点で限定することを推奨します。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

関西を拠点に活動する、現役インフラエンジニア。経験20年超。

大手通信キャリアにて、中〜大規模インフラ(ネットワーク・サーバ・クラウド・セキュリティ)の設計・構築およびプロジェクトマネジメントに従事。現場で直面した技術課題への対処や、最新の脆弱性情報への実務対応を、一次情報として発信しています。

保有資格
CCIE Lifetime Emeritus(取得から20年以上)/ VCAP-DCA / Azure Solutions Architect Expert

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