はじめに
CentOS Linux の公式サポートが終了し、多くのシステム環境で後継 OS への移行が課題になっています。その有力な移行先として比較されるのが、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)との互換性を持つ AlmaLinux・Rocky Linux・MIRACLE LINUX の 3 つです。
本記事では、これら主要な RHEL クローン OS の特徴と開発方針の違いを 2026 年時点の最新動向にもとづいて整理し、運用要件に合った OS を選ぶための判断材料を解説します。
- CentOS を使い続けるリスクと、後継 OS が求められる背景
- AlmaLinux・Rocky Linux・MIRACLE LINUX の特徴と開発方針の違い
- 2026 年時点でどの OS が選ばれているのか(採用動向)
- 用途別の選び方と、CentOS からの移行手順
結論を先に述べると、2026 年時点の移行先は AlmaLinux と Rocky Linux が二大候補で、要件に応じて選び分ける形になります。古いハードウェアの延命や RHEL への迅速な追従を重視するなら AlmaLinux、RHEL とバグレベルで完全一致させたいなら Rocky Linux、国内の商用サポートを前提とするなら MIRACLE LINUX(実質的に AlmaLinux ベース)が候補になります。
CentOS のサポート終了(EOL)と後継 OS の選び方
移行先の比較に入る前に、CentOS を使い続けることのリスク、後継 OS が求められる背景、そして選定時の判断基準を整理します。
CentOS を使い続けるリスク
CentOS Linux はすでに全バージョンがサポート終了済みです。具体的には、CentOS Linux 8 が 2021 年 12 月 31 日、CentOS Linux 7 が 2024 年 6 月 30 日にサポートを終了しています。アップストリームの CentOS Stream 8 も 2024 年 5 月末でビルド提供を終えており、CentOS Stream 9 は 2027 年 5 月末がサポート期限です。
サポート終了後の OS を使い続けると、新たに公開された脆弱性(CVE)に対する公式の修正パッケージが提供されません。カーネルや glibc、OpenSSL といった中核コンポーネントに深刻な脆弱性が見つかっても、未修正のまま放置されることになります。
参考: Red Hat「What to know about CentOS Linux EOL」
“you’re at risk of exposing your organization to unpatched vulnerabilities and potential security breaches”
(サポート切れの CentOS を使い続けると、未修正の脆弱性や情報漏えいのリスクに組織をさらすことになる)
https://www.redhat.com/en/topics/linux/centos-linux-eol
こうしたサポート切れ OS が抱える既知の脆弱性は、攻撃者にとって初期侵入の入口になりやすく、ランサムウェアの起点となるケースも少なくありません。攻撃者がどのようなシステムを狙い、どの経路から侵入するのかという全体像は、関連記事『ランサムウェアの攻撃対象と暗号化の仕組み』で解説しています。あわせて、PCI DSS などの監査要件では、サポート切れ OS の使用そのものが指摘対象となる場合があります。
RHEL クローン OS が求められる背景
長年にわたり無償のサーバー OS としてデファクトスタンダードだった CentOS ですが、CentOS 8 の早期終了および CentOS 7 のサポート終了に伴い、「RHEL の無償クローン」としての役割を終えました。
一方で、企業システムやインフラ環境では、RHEL と同等の安定性と長期サポート(通常 10 年間)を備えた OS の需要は依然として高く、CentOS の運用基盤を引き継げる新たな RHEL クローン OS への移行が求められる状況になりました。
移行先の選定で重視すべきポイント(開発体制と互換性)
ビジネス用途に耐える OS を選ぶ際は、特に次の 2 点が重要な指標になります。
1 つ目は開発体制の持続可能性です。オープンソースであっても、背後に企業スポンサーや非営利財団が存在し、セキュリティパッチやバージョンアップを長期にわたり安定供給できる体制があるかを確認します。
2 つ目は RHEL との互換性の方針です。2023 年に Red Hat 社が RHEL のソースコード公開ポリシーを変更した影響で、後継 OS 各陣営の「互換性へのアプローチ」と「ソースコードの調達ルート」に違いが生じました。RHEL とソースコードレベルで完全一致(バグ・フォー・バグ互換)を目指すのか、アプリケーションが正常に動作すること(ABI 互換)を重視するのかという開発思想の違いを理解しておく必要があります。
このソース調達ルートの違いは、次章の各 OS の特徴とあわせて理解すると整理しやすくなります。

主要 3OS の特徴と開発方針(2026 年時点の最新動向)
現在の主流である 3 つの RHEL クローン OS について、最新バージョンと開発方針を整理します。
AlmaLinux
AlmaLinux(アルマリナックス)は、CloudLinux 社が立ち上げ、現在は非営利財団(AlmaLinux OS Foundation)が主導して開発している OS です。最新版は 2026 年 5 月にリリースされた 10.2 および 9.8 で、メジャーバージョンの AlmaLinux 10「Purple Lion」は 2025 年 5 月に RHEL 10 へ追従する形で公開されました。サポート期間は 10 系がアクティブサポート 2030 年 5 月まで、セキュリティサポート 2035 年 5 月までです。
最大の転換点は、2023 年の Red Hat 社によるソース公開ポリシー変更を受け、「RHEL との 1 対 1 の完全互換」から「アプリケーションが正常に稼働すること(ABI 互換)」へ方針を変更した点です。ソースは CentOS Stream を基にビルドしており、後述の OpenELA には参加していません。
- 独自のバグ修正とリリースの速さ
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RHEL の修正を待たずに、コミュニティ主導で独自に脆弱性対応やバグ修正を行えます。RHEL のマイナーアップデートへの追従リリースが速く、おおむね RHEL リリースから 1 週間程度で対応版が提供される運用が定着しています。
- 古いハードウェアへの対応
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AlmaLinux 10 は標準の x86-64-v3 ビルドに加えて、x86-64-v2 アーキテクチャ向けのビルドも提供します。後述する Rocky Linux 10 が x86-64-v2 以前を切り捨てたのに対し、AlmaLinux は古い CPU を搭載したサーバーでも 10 系へ移行できる点が、実機選定での違いになります。
Rocky Linux
Rocky Linux(ロッキーリナックス)は、元の CentOS プロジェクト創設者である Gregory Kurtzer 氏が立ち上げた OS です。「CentOS 本来の理念を取り戻す」ことを目的に誕生しました。最新版は 2026 年 5 月にリリースされた 10.2 および 9.8 で、メジャーバージョンの Rocky Linux 10 のコードネームは「Red Quartz」です。
- 完全互換(バグ・フォー・バグ)の維持
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AlmaLinux とは対照的に、RHEL とバグも含めて挙動が同一であること(完全互換)を維持する方針を貫いています。
参考: Rocky Linux 公式サイト
“100% bug-for-bug compatible with Enterprise Linux”
(Enterprise Linux とバグレベルまで 100% 互換)
https://rockylinux.org/ - ソースコードの調達ルート(OpenELA)
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Red Hat 社のソース公開制限に対しては、2023 年 8 月に CIQ(Rocky のスポンサー企業)・Oracle・SUSE が設立した非営利団体 OpenELA(Open Enterprise Linux Association)が中心となり、RHEL 互換のソースを供給しています。あわせて UBI(Universal Base Image)やクラウドイメージなど、利用規約に違反しない代替ルートも併用しています。
- メジャーバージョン間アップグレードの制約
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Rocky Linux 10 はメジャーバージョン間のアップグレードをサポートしておらず、8.x や 9.x からの移行はクリーンインストールが前提です。また、x86-64-v3 をベースラインとしたため、x86-64-v2 以前の古い CPU はサポート対象外となります。
MIRACLE LINUX
MIRACLE LINUX(ミラクルリナックス)は、サイバートラスト社が長年開発・提供してきた国産の Linux OS です。日本語による手厚い技術サポートが強みで、国内のビジネス用途で多くの実績があります。
- AlmaLinux への開発合流
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注目すべき動向として、サイバートラスト社は MIRACLE LINUX を次期メジャーバージョンの 10 から AlmaLinux ベースで開発する方針を示しています。現行の MIRACLE LINUX 8 および 9 は、同社が設定したサポート期間終了まで開発とサポートが継続されます。
- 実質的な「商用サポート付き AlmaLinux」
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サイバートラスト社は AlmaLinux OS Foundation のプラチナスポンサーとして参画し、理事会にも同社の役員が加わっています。そのため今後のシステム更改で「国産の安心感とサポート」を基準に MIRACLE 陣営を選ぶことは、実質的に商用サポート付きの AlmaLinux を採用することを意味します。国内向けの日本語サポート窓口として機能する点が、AlmaLinux 単体との違いです。
要件別の選定基準(採用動向と用途別の選び方)
ここまでの特徴を踏まえ、2026 年時点の採用動向と、利用シーン別の選び方を整理します。
どの OS が選ばれているのか(採用動向)
移行先のシェアは計測方法によって数値に幅があり、正確な比率を一意に示すのは難しいのが実情です。Web サーバーのフィンガープリント調査(W3Techs)では、識別可能な Linux サーバーのうち AlmaLinux と Rocky Linux はいずれも 1% 未満で、大半がコンテナやカスタムイメージとして「特定不能」に分類されます。そのうえで識別できた範囲では、AlmaLinux が Rocky Linux をやや上回る傾向が見られます。
数値の絶対値以上に参考になるのが、運営体制の違いです。AlmaLinux は非営利財団(AlmaLinux OS Foundation)が主導し、特定企業の収益を目的としない運営を掲げています。一方の Rocky Linux は CIQ 社の商用支援を背景に持ちます。長期運用での採用判断では、この運営思想の違いと、ABI 互換による迅速な脆弱性対応が評価され、エンタープライズ用途では AlmaLinux が選ばれる場面が増えています。加えて、国産の MIRACLE LINUX が次期 10 系で AlmaLinux ベースへ移行することも、国内での AlmaLinux 採用を後押ししています。
(参考: W3Techs OS 別シェア統計 https://w3techs.com/technologies/details/os-almalinux )
用途別の選び方
要件ごとの推奨を整理すると、次のようになります。
- 古い物理サーバーを延命したい → AlmaLinux(x86-64-v2 ビルドを提供)
- RHEL とバグレベルで完全に一致させたい → Rocky Linux(バグ・フォー・バグ互換)
- 国内の商用サポート・日本語窓口を重視する → MIRACLE LINUX(実質 AlmaLinux ベース)
- クラウドやコンテナ中心で迷ったら → AlmaLinux(追従の速さと財団運営)
主要 3OS の比較表
| 比較項目 | AlmaLinux | Rocky Linux | MIRACLE LINUX |
|---|---|---|---|
| 互換性の方針 | ABI 互換(アプリの正常動作を重視) | 完全互換(バグレベルで一致) | AlmaLinux ベース(10 系以降) |
| ソース調達ルート | CentOS Stream | OpenELA + UBI / クラウド | AlmaLinux に準拠 |
| アップデート | 迅速(独自の脆弱性対応も可能) | 保守的(RHEL に忠実に追従) | AlmaLinux に準拠 + 国内サポート |
| 古い CPU(x86-64-v2) | 10 系で対応 | 10 系で非対応 | AlmaLinux に準拠 |
| 国内サポート | 有償サポートを提供 | コミュニティ / パートナー中心 | サイバートラストによる手厚い商用支援 |
| 最適な環境 | 追従の速さや古いハードの延命を重視 | CentOS と同じ挙動を求める環境 | 国産の安心感とサポートを求める環境 |
CentOS からの移行手順
CentOS から各 OS への移行は、現行バージョンによって取れる手段が変わります。同じメジャーバージョン間(CentOS 8 から AlmaLinux 8 / Rocky 8)はクリーンインストール不要の変換スクリプトが利用でき、メジャーバージョンをまたぐ場合(CentOS 7 から EL8 以降)は別の手段が必要です。いずれの場合も、作業前のフルバックアップと、本番反映前のテスト環境での検証をおすすめします。
参考: Rocky Linux「rocky-tools / migrate2rocky」
“Upgrades are not supported”
(メジャーバージョンをまたぐアップグレードはサポート対象外)
https://docs.rockylinux.org/guides/migrate2rocky/
CentOS 8 から AlmaLinux 8 への移行(almalinux-deploy)
CentOS 8(EL8)から AlmaLinux 8 へは、公式の almalinux-deploy スクリプトで変換できます。事前に dnf update でパッケージを更新し、再起動した上で実行します。
# スクリプトの取得
curl -O https://raw.githubusercontent.com/AlmaLinux/almalinux-deploy/master/almalinux-deploy.sh
# 実行権限の付与
chmod +x almalinux-deploy.sh
# 移行の実行
sudo bash almalinux-deploy.sh
# 完了後に再起動
sudo rebootスクリプトは互換性の事前チェックの後、CentOS 固有パッケージを AlmaLinux のものへ置き換えます。完了後に cat /etc/redhat-release で AlmaLinux に切り替わったことを確認します。
参考: AlmaLinux/almalinux-deploy(公式リポジトリ) https://github.com/AlmaLinux/almalinux-deploy
CentOS 8 から Rocky Linux 8 への移行(migrate2rocky)
CentOS 8(EL8)から Rocky 8 へは、公式の rocky-tools に含まれる migrate2rocky スクリプトを使います。EL9 系の場合は migrate2rocky9 を利用します。
# スクリプトの取得
curl -O https://raw.githubusercontent.com/rocky-linux/rocky-tools/main/migrate2rocky/migrate2rocky.sh
# 実行権限の付与
chmod +x migrate2rocky.sh
# 移行の実行(-r で変換を実行)
sudo ./migrate2rocky.sh -r
# 完了後に再起動
sudo rebootログは /var/log/migrate2rocky.log に記録されます。完了後に cat /etc/os-release で Rocky Linux へ切り替わったことを確認します。
参考: rocky-linux/rocky-tools(公式リポジトリ) https://github.com/rocky-linux/rocky-tools
CentOS 7 からのメジャーアップグレード(ELevate)
CentOS 7(EL7)は AlmaLinux / Rocky の最初のバージョン(8)と世代が異なるため、同一メジャー変換スクリプトは使えません。AlmaLinux が主導する ELevate プロジェクト(leapp ベース)を使うと、CentOS 7 から 8、9、10 へとメジャーバージョンを 1 段ずつ in-place で引き上げられます。
ここで注意したい変更点があります。ELevate は 2025 年 11 月の更新で Rocky Linux への移行サポートを終了しました。 現在 ELevate が長期的にサポートする移行先は AlmaLinux と CentOS Stream です。CentOS 7 から Rocky Linux へ移したい場合は、クリーンインストールが現実的な選択肢になります。
leapp を使った CentOS 7 から AlmaLinux 8 への移行の概略は次のとおりです。
# ELevate リポジトリの導入
sudo yum install -y http://repo.almalinux.org/elevate/elevate-release-latest-el7.noarch.rpm
# leapp 本体と AlmaLinux 向け移行データの導入
sudo yum install -y leapp-upgrade leapp-data-almalinux
# 事前チェック(プレアップグレード)
sudo leapp preupgrade
# 検出された非互換項目を解消してから本実行
sudo leapp upgrade
# 指示に従い再起動。GRUB の ELevate エントリで自動アップグレードが進む
sudo rebootleapp preupgrade で報告された非互換項目(インヒビター)を解消してから leapp upgrade を実行します。手順の詳細と最新の対応パスは、AlmaLinux 公式 Wiki を参照することをおすすめします。
参考: ELevate(AlmaLinux 公式) https://almalinux.org/elevate/
移行前後の共通の注意点
- 作業前にフルバックアップまたはスナップショットを取得する。
- 本番反映の前に、同等構成のテスト環境で検証する。
- サードパーティ製リポジトリやカスタムビルドのパッケージは、移行後に手動対応が必要になる場合がある。
- cPanel など一部のコントロールパネル環境は in-place 移行の対象外となることがある。
まとめ
CentOS の移行先は、2026 年時点で AlmaLinux と Rocky Linux が二大候補となり、国産サポートを求める場合は AlmaLinux ベースへ移行する MIRACLE LINUX が加わります。互換性の方針・ソース調達ルート・古いハードへの対応・国内サポートの有無を基準に、運用要件へ合わせて選び分けるのが現実的です。サポート切れの CentOS を使い続けると脆弱性が放置されるため、計画的な移行をおすすめします。
- CentOS Linux は全バージョンがサポート終了済み
- 放置された脆弱性はランサムウェアの侵入口になりうる
- AlmaLinux は ABI 互換で追従が速く古い CPU にも対応
- Rocky Linux は RHEL とのバグレベル完全互換を維持
- MIRACLE LINUX は 10 系から AlmaLinux ベースへ移行
- 同一メジャー間は変換スクリプトで移行が可能
- CentOS 7 のメジャー移行は ELevate を利用
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
