はじめに
「VDI といえばリンククローン。View Composer サーバを立てて……」
もし、あなたの知識がここで止まっているとしたら、少しアップデートが必要です。 VMware Horizon 8 以降、長年親しまれてきた 「リンククローン(View Composer)」は廃止 されました。
現在、ステートレス(非永続)デスクトップの展開方式として唯一の主流となっているのが、今回解説する 「インスタントクローン(Instant Clone)」 です。
「後継機能でしょ? 何が変わったの?」と思われるかもしれませんが、その中身は別物です。 最大の特徴は、「爆速」 であること。 数秒から数十秒でデスクトップが展開され、ログイン可能になるそのスピードは、従来の技術とは一線を画します。
本記事では、なぜインスタントクローンはそれほど速いのか? その裏側にある「メモリ共有」の仕組みと、運用管理者が知っておくべき更新フローについて解説します。
- リンククローンとインスタントクローンの決定的な違い
- 爆速展開の秘密「vmFork」技術と4層構造
- Connection Server だけで完結するシンプルな構築・更新手順
インスタントクローンとは?(リンククローンとの違い)
Horizon 2012(8.x)以降、標準となったインスタントクローン。 従来のリンククローンも画期的でしたが、インスタントクローンは仮想化技術のレベルをもう一段階引き上げました。
最大の違いは「メモリの共有(vmFork)」
リンククローンとインスタントクローンの決定的な違いは、「コピーする対象」です。
- リンククローン
-
親 VMの 「ディスク(HDD)」 だけを共有していました。そのため、展開されたクローン VM は、OS の起動処理(ブート)を一から行う必要がありました。
- インスタントクローン
-
ディスクに加えて、実行中の親 VMの 「メモリ空間」 ごとコピーします。
これは VMware の 「vmFork」 という技術によって実現されています。 親(ペアレント VM)は、OS が起動完了した状態で一時停止(サスペンド)しています。そこからクローンされるため、BIOS 起動や Windows のロード時間をすべてスキップし、「生まれた瞬間にログイン画面が表示される」 という爆速展開が可能になるのです。
【比較表】新旧クローン技術の違い
運用の観点から見た主な違いは以下の通りです。 特に重要なのは、インスタントクローンは 「完全に使い捨て(Non-Persistent)」 が前提となっている点です。
| 項目 | リンククローン(廃止) | インスタントクローン(現在) |
| 技術ベース | ディスク差分(View Composer) | メモリ + ディスク差分(vmFork) |
| 展開速度 | 遅い(数分〜数十分) | 爆速(数秒) |
| 展開時の再起動 | 必要(Sysprep/Quickprep) | 不要(ClonePrep) |
| リソース負荷 | 一斉起動時の負荷(ブートストーム)あり | ブート負荷なし |
| ログオフ後の挙動 | そのまま or リフレッシュ | 必ず削除され、新規作成される |
| 構成コンポーネント | Composer サーバが必要 | Connection Server のみで OK |

「ログオフしたら即削除、次は新品」 というのが現代のスタイルです。 ゴミ(キャッシュや設定の残りカス)が一切残らないため、常にクリーンな環境をユーザーに提供できます。 「設定が消えた」と言われないように、ユーザーデータはファイルサーバ(FSLogix など)に逃がす設計が必須になります。
【図解】インスタントクローンの4層構造
インスタントクローンを展開すると、裏側では自動的に複数の中間 VM が作成されます。 この仕組みが少し複雑に見える原因ですが、それぞれの役割を知れば簡単です。


各 VM の役割
- マスター VM(Master Image)
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管理者が作成・更新する「コピー元」となる仮想マシンです。OS やアプリ、Horizon Agent をインストールします。
- テンプレート VM(Template)
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- マスター VM のスナップショットから作成される「静的なコピー」です。
- vCenter 上では
cp-template-xxxxといった名前で表示されます。
- レプリカ VM(Replica)
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- リンククローン時代から存在する、全デスクトップで共有される「読み取り専用ディスク」です。
- vCenter 上では
cp-replica-xxxxといった名前で表示されます。
- ペアレント VM(Parent)
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- レプリカ VM を元に、各 ESXi ホストごとに1台ずつ 作成されます。
- OS が起動した状態でメモリ上にロードされ、直後に 「サスペンド(一時停止)」 状態になります。
- vCenter 上では
cp-parent-xxxxと表示され、常にパワーオン(サスペンド)状態に見えますが、これが正常です。これを削除してはいけません。
- 仮想デスクトップ(Instant Clone Desktop)
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- ユーザーが実際に利用する VM です。
- 同じホストにいる「ペアレント VM」から、メモリとディスクの状態を瞬時にコピー(vmFork)して誕生します。



初めてインスタントクローンを構築した時、「なんか勝手に電源入ってる VM(ペアレント)がある。消していいのかな?」 と不安になったことがあります。 これらは「メモリの供給源」として待機している重要な VM なので、絶対に触ってはいけません。
構築と運用のポイント
仕組みは複雑そうに見えるインスタントクローンですが、実は構築や運用はリンククローン時代よりも遥かにシンプルになっています。
Composer サーバが不要になり、シンプルに
リンククローン環境では、vCenter とは別に「View Composer サーバ(と専用のデータベース)」を構築する必要があり、これがトラブルの種になることが多々ありました。
しかし、インスタントクローンでは View Composer は不要 です。 Connection Server(管理サーバ)が直接 vCenter と連携してクローン処理を行うため、インフラ構成がスッキリしました。
【重要】Agent インストール時の選択
マスター VM(原本)を作成する際、Horizon Agent のインストーラで適切な機能を選択する必要があります。
- VMware Horizon Instant Clone Agent: 【選択する】
- VMware Horizon View Composer Agent: 【選択しない(選択不可)】
ここを間違えるとプール作成時にエラーになりますので、必ず「Instant Clone」を選択してください。
イメージ更新(パッチ適用)の流れ
Windows Update やアプリの更新を行いたい場合、リンククローンでは「再構成(Recompose)」という重たい処理が必要でした。 インスタントクローンでは、これが 「イメージのスケジュール設定(Image Push)」 という操作に変わります。
更新のサイクルは以下の通りです。
管理者がマスター VM を起動し、パッチを当ててシャットダウンし、新しいスナップショット(例: Snap_v2)を取得する。
管理コンソールから、プールに対して「Snap_v2 を使うように」スケジュール設定する。
- ログオフ中の VM: 即座に削除され、Snap_v2 ベースの新品が作成されます。
- 使用中の VM: ユーザーがログオフした瞬間に削除され、次は Snap_v2 ベースで再作成されます。





「パッチを当てたから再起動してね」とユーザーにお願いする必要はもうありません。 「仕事が終わってログオフし、翌朝来たら勝手に OS が新しくなっている」 というのがインスタントクローンの世界です。 緊急時(セキュリティパッチなど)は、強制的にログオフさせて即時入れ替えを行うことも可能です。
まとめ
本記事では、VMware Horizon の標準展開方式となった「インスタントクローン」について解説しました。
- リンククローンは過去
-
複雑な View Composer は廃止され、Connection Server だけでシンプルに構築可能
- 爆速展開
-
ディスクだけでなくメモリ空間ごとコピーすることで、OS 起動時間をスキップし、数秒での展開を実現
- 使い捨て運用
-
ユーザーがログオフすれば VM は破棄され、次は必ず「新品」が提供
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

