はじめに
ネットワークのダウンタイムはビジネスに甚大な被害を与えます。 本記事では、FortiGate における High Availability(HA: 高可用性)の基礎知識と、最も一般的な Active-Passive 構成の設定手順を解説します。
- FortiGate HA(高可用性) の仕組みとメリット
- 推奨される Active-Passive 構成の設定手順
- どっちが Active になる? プライマリ選定ロジック
HA(High Availability)とは?
機器の故障などの障害発生時に、自動的に予備機へ切り替えることで通信断を最小限に抑える仕組みです。 FortiGateで HA を組む主なメリットは以下の通りです。
- ダウンタイムの最小化: 障害発生時に自動でフェイルオーバーします。
- セッション同期: 通信状態(セッション)を引き継ぐため、ユーザは切断を感じません。
- 一元管理: 設定変更はプライマリ機に行うだけで、セカンダリ機に自動同期されます。
Active-Active と Active-Passive の違い
FortiGateのHAには2つのモードがありますが、基本的には Active-Passive が推奨されます。
| 項目 | Active-Passive (推奨) | Active-Active |
|---|---|---|
| 動作イメージ | 1台が稼働、もう1台は待機 | 2台とも稼働 |
| リソース | 待機機のリソースは遊休状態 | 2台のリソースをフル活用 |
| 設定・運用 | シンプルでトラブルが少ない | 複雑(セッション同期の負荷など考慮が必要) |
| UTM 処理 | プライマリのみ処理 | 両方で分散処理が可能 |

Active-Active は一見高性能に見えますが、トラブルシューティングが難しく、UTM 機能を使わない場合は負荷分散の効果も限定的です。まずは Active-Passive で設計するのがセオリーです。
HA 設定手順(Active-Passive)
プライマリ機(Active にしたい機器)とセカンダリ機(Passive にしたい機器)それぞれに以下の設定を投入します。
config system ha
set group-name "fw-ha"
set mode a-p
set hbdev "wan2" 0
set override disable
set priority 200
set monitor "internal1" "wan1"
set ha-mgmt-status enable
set ha-mgmt-interface "mgmt"
endconfig system ha
set group-name "fw-ha"
set mode a-p
set hbdev "wan2" 0
set override disable
set priority 100
set monitor "internal1" "wan1"
set ha-mgmt-status enable
set ha-mgmt-interface "mgmt"
endパラメートの解説
上記コマンドの重要なポイントを解説します。
- set group-name
-
HA グループの名前です。対向機と同じにする必要があります。
- set mode a-p
-
動作モードを指定します(
a-p= Active-Passive)。 - set hbdev
-
HA の心拍信号(HeartBeat)をやり取りするインターフェースを指定します。直結ケーブルで接続します。末尾の
0は優先度です。 - set override disable
-
- 重要: 自動切り戻し(プリエンプト)の設定です。
disable(推奨): 障害復旧しても、勝手に Active に戻りません(安定重視)。enable: Priority が高い機器が復旧すると、即座に Active を奪い返します。
- set priority
-
優先度です。数字が大きいほうが Active になります(例:主=200, 副=100)
- set monitor
-
リンクダウンを監視するポートです。ここが切れるとフェイルオーバーが発動します。
確認コマンド
設定投入後、以下のコマンドでステータスを確認します。
# HA のステータス詳細を表示
get system ha status
# 同期状態の簡易チェック(チェックサム確認)
diagnose sys ha checksum clusterどちらが Active になるのか?(選定ロジック)
FortiGate が Active 機(Master)を決める優先順位は以下の通りです。
※ override disable(デフォルト)の場合
- 最も優先されます。
set monitorで監視しているポートが生きている数が多いほうが Active になります。- 例:WAN ケーブルが抜けたほうが Passive に落ちる。
- ポート数が同じ場合、HA としての稼働時間が長いほうが優先されます。
- ※デフォルトでは「5分以上」の差がないとこの判定はスキップされます(フラッピング防止のため)
- ここで初めて、Configで設定した
set priorityが比較されます。 - 値が大きいほうが Active になります。
- 例:Primary=200 > Secondary=100
- 全てが同じ場合(初期構築時など)、シリアルナンバーの文字列が大きいほうが Active になります。
- 実運用でここまで来ることは稀ですが、最終的なタイブレーカーです。
set override enable を設定すると、上記の STEP 2 (稼働時間) の判定が無視されます。
つまり、復旧した機器の Priority が高ければ、稼働時間に関係なく 即座に Active を奪い返します(切り戻りが発生)。 通信断のリスクがあるため、意図的な設計でない限りは disable(無効)が推奨されます。
以上、最後までお読み頂きありがとうございました。


