はじめに
Web サイトの構築や DNS の設定をしていると、「ホスト名」「ドメイン名」「FQDN」といった用語が飛び交います。 これらは普段何気なく使っていますが、厳密な定義を聞かれると「あれ?どこからどこまでだっけ?」と迷ってしまうことも多いのではないでしょうか。
本記事では、これらの用語の違いを整理し、最近増えている「ネイキッドドメイン」の注意点についても解説します。
- ドメイン、サブドメイン、ホスト名、FQDN の正確な範囲
- インターネットの住所管理の仕組み(ICANN)
- ネイキッドドメイン で CNAME が使えない技術的理由
実際の URL で見てみる
まずは、架空のURL https://www.abcdef.mytech-blog.com を例に、それぞれの名称がどこを指しているのかを図解します。

| 用語 | 該当箇所(例) | イメージ |
|---|---|---|
| FQDN | www.abcdef.mytech-blog.com | フルネーム(絶対表記) |
| ホスト名 | www | サーバーの名前 |
| サブドメイン | abcdef | 区分け(部署名) |
| ドメイン名 | mytech-blog.com | 住所(会社名) |
| トップレベルドメイン | .com | 国や組織の種類 |
各用語の詳しい解説
それぞれの用語について、もう少し掘り下げて見ていきます。
ドメイン名(Domain Name)
インターネット上の 「住所」 にあたります。 本サイトであれば mytech-blog.com、Googleであれば google.com がこれに該当します。住所と同じで、世界中で重複しないように管理されています。
ドメインの世界は、ICANN(アイキャン) という組織を頂点とした階層構造で管理されています。
- ICANN: ドメイン全体の親玉
- レジストリ:
.comや.jpなどのトップレベルドメイン(TLD)ごとの管理組織(例:Verisign 社) - レジストラ: 私たちユーザーとレジストリの間を取り次ぐ業者(例:お名前.com、ムームードメインなど)
私たちがドメインを買うときは、レジストラ を通じて申し込んでいるわけですね。

サブドメイン名(Subdomain Name)
ドメイン名の前に追加して、用途別に区切ったものです。 例えば mytech-blog.com という住所の中に、以下のように「部屋」を作るイメージです。
blog.mytech-blog.com(ブログ用)shop.mytech-blog.com(ショップ用)

1つのドメインで複数のサイトを運営できるので便利ですが、SSL 証明書(https 化)のコスト には注意が必要です。 通常の SSL 証明書は「FQDN 単位」で発行されるため、サブドメインが増えるたびに証明書代がかかるデメリットがあります。(※ワイルドカード証明書なら1枚で済みます)
ホスト名(Host Name)
ネットワーク上の 「コンピューター(サーバー)の名前」 です。 Web サーバーなら www、メールサーバーなら mail と付けるのが慣例です。 後述する「ネイキッドドメイン」の話をする際に、この「ホスト名があるかないか」が重要になってきます。
FQDN(Fully Qualified Domain Name)
「完全に指定されたドメイン名」 という意味で、ホスト名からドメイン名まで全てを繋げた文字列です。 www.mytech-blog.com のように、省略せずに書かれた「フルネーム」のことを指します。
ネイキッドドメインとは?
「ネイキッドドメイン (Naked Domain)」とは、www などのホスト名がつかない、ドメイン名だけの状態を指します。 専門用語では 「Zone Apex(ゾーンエイペックス)」 と呼ばれることもあります。
- 通常の URL:
https://www.mytech-blog.com - ネイキッド:
https://mytech-blog.com
最近のトレンドとメリット
最近では、X (x.com) や Facebook (facebook.com) をはじめ、このブログもネイキッドドメインで運用しています。
- URL が短くシンプル: 覚えやすく、入力もしやすい。
- ブランディング: スマートで現代的な印象を与える。
- スマホ対応: 画面の狭いスマホでも URL が見切れにくい。
ネイキッドドメインの注意点
便利なネイキッドドメインですが、DNS 設定において 「CNAME レコードが使えない」 という致命的な技術的制約があります。
AWS(ELB)や Heroku などのクラウドサービスを使っている場合、「CNAME でドメインを向けてください」と指示されることが多いですが、ネイキッドドメインではそれができません。
RFC のルール: CNAME は共存できない
インターネットのルールブックである「RFC」において、「CNAME レコードは、他のいかなるレコードとも共存できない」 と定義されています。
RFC 1912 – Common DNS Operational and Configuration Errors “A CNAME record is not allowed to coexist with any other data.” (CNAME レコードは、他のいかなるデータとも共存することは許可されていません。)
具体的: メール(MX)との競合
なぜこれが問題になるのか、具体例で見てみます。ドメインを運用するには、通常 NS レコード(ネームサーバー情報)や MX レコード(メール配送先)が必要です。
もし、ネイキッドドメイン(mytech-blog.com)に対して、無理やり CNAME を設定してしまうとどうなるでしょうか?
mytech-blog.com. CNAME xxx.elb.amazon.com. <-- これを設定すると...
mytech-blog.com. MX mail.conoha.ne.jp. <-- こっちが無視される!
mytech-blog.com. NS ns-a1.conoha.io. <-- こっちも無視される!CNAME は「別名(あだ名)」です。 「私の正体は xxx.elb.amazon.com です!」と宣言してしまうため、「じゃあメールもそっちに送るね」 と判断され、本来のメールサーバー(ConoHa など)にメールが届かなくなってしまいます。



「Web サイトを表示させたい」と思って CNAME を設定した結果、「Web は見れるようになったが、メールが受信できなくなった」 というトラブルはあるあるです。
解決策:どう設定すればいいの?
この問題を回避するには、大きく2つの方法があります。
Web サーバーの IP アドレスが固定(不変)である場合は、CNAME ではなく A レコード を使えば問題ありません。Aレコードは他のレコードと共存できます。
mytech-blog.com. A 100.64.1.1 <-- IP アドレスなら OK
mytech-blog.com. MX mail... <-- メールも届くDNS ホスティングの「Alias 機能」を使う
AWS や Cloudflare などのクラウド環境では、IP アドレスが動的に変わるため、A レコードが使えない場合があります。 そこで、各 DNS サービスは 「Alias(エイリアス)レコード」 や 「CNAME Flattening」 と呼ばれる特殊な機能を提供しています。
- AWS Route53
-
Alias (A レコードとして振る舞う特殊機能)
- Cloudflare
-
CNAME Flattening
- ConoHa DNS
-
(※通常の CNAME しか対応していない場合があるため要確認)



これらは、「管理画面上は CNAME のようにドメイン名を指定できるが、実際の通信では A レコード(IP アドレス)を自動で返してくれる」 という便利な機能です。 ネイキッドドメインでクラウドサービスを利用したい場合は、この機能に対応した DNS サーバーを選ぶ必要があります。
まとめ
本記事では、混同しやすいドメイン周りの用語と、ネイキッドドメインの技術的制約について解説しました。最後に、用語の違いを整理します。
例: https://www.abcdef.mytech-blog.com の場合
| 用語 | 例 | 特徴 |
|---|---|---|
| FQDN | www.abcdef.mytech-blog.com | 省略なしの絶対表記(フルネーム) |
| ホスト名 | www | サーバー単体の名前 |
| サブドメイン | abcdef | ドメイン内の「部屋」や「部署」 |
| ドメイン名 | mytech-blog.com | インターネット上の「住所」 |
| ネイキッド | mytech-blog.com | ホスト名なし。CNAME 不可 |
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。







