はじめに
ビジネスの世界において「お金の知識」は必須スキルですが、多くの人がここで躓きます。 特にややこしいのが、「会計(アカウンティング)」と「ファイナンス」の違いです。
- 「どっちもお金の計算でしょ?」
- 「簿記があれば十分じゃないの?」
そんな疑問に答えてくれるのが、今回紹介する『あわせて学ぶ 会計 & ファイナンス入門講座』(田中伸一・保田隆明 著)です。 本書は、しばしば独立して語られがちなこの2つの領域を「リンク」させて理解できる入門書です。
関係性: 「ヘルスメーター」と「トレーニング」の関係
本書の魅力は、会計とファイナンスの関係性を非常にわかりやすい例えで説明している点です。
- 会計 = ヘルスメーター(結果)
- ファイナンス = トレーニング(原因・戦略)
ダイエットで例えるなら、「今の体重を測って記録する」のが会計。「痩せるためにどんな運動や食事制限をするか考える」のがファイナンスです。 つまり、ファイナンス(戦略)を実行した「結果」が、会計(決算書)に表れるという構造になっています。

会計はあくまで「結果(過去)」としての数字であり、ファイナンスはその数字を作るための「原因(未来への意思決定)」なんですね。 アスリートが体重計に乗るだけでは速くならないように、企業も会計データを見るだけでは成長できません。「ファイナンスという戦略があって初めて、会計という数字が動く」という構造を理解することは、ビジネスを運営する上で重要だと感じました。
違い①: 「利益」と「キャッシュ」は別物である
次に重要なのが、「何を重視するか」の違いです。
- 会計: 「利益」を重視する
- ファイナンス: 「キャッシュ(現金)」を重視する
会計上の「利益」は、計算ルールや減価償却の方法によってある程度コントロールできてしまいます。しかし、手元にある「現金(キャッシュ)」は嘘をつきません。 ファイナンスの世界では、「Cash is King(現金こそ王様)」と言われ、企業価値を高めるためにはキャッシュフローの最大化が求められます。
| 項目 | 会計(Accounting) | ファイナンス(Finance) |
|---|---|---|
| 重視するもの | 利益(Profit) | キャッシュ(Cash) |
| 性質 | 意見(計算方法で変わる) | 事実(手元の現金) |
| リスク | 黒字倒産の可能性がある | キャッシュがあれば生き残れる |



「利益は意見、キャッシュは事実」という言葉がありますが、まさにその通りですね。 利益が出ていても手元に現金がなければ会社は潰れてしまう(黒字倒産)だからこそ、実務では会計上の利益だけでなく、よりシビアな「キャッシュフロー」を重視する必要があるのだと学びました。 どのようなファイナンス戦略を立てるにしても、その土台として「利益とキャッシュのズレ」を読み解く会計知識(特にキャッシュフロー計算書)が不可欠なんですね。
違い②: 「誰のため」の数字なのか?
会計とファイナンスは、その「目的」と「対象相手」も異なります。
- 会計: 投資家や税務当局など、外部への報告が目的(過去情報)
- ファイナンス: 経営陣や社内が、未来の企業価値を高めるための戦略(未来情報)
この2つは対立するものではなく、補完し合うものです。 外部へ正しく報告する(会計)責任を果たしつつ、内部では企業価値を最大化する(ファイナンス)戦略を練る必要があります。



会計は「過去の成績表」を外部に見せるためのもので、ファイナンスは「未来の成長」を作るための内部ツールだと整理できました。 エンジニアの仕事に例えるなら、会計は「システム稼働レポート(結果報告)」で、ファイナンスは「アーキテクチャ設計や投資判断(未来戦略)」に近いかもしれません。 どちらか片方ではなく、両方の視点をバランスよく持つことが、持続可能なビジネスには必須なのだと思いました。
まとめ
『あわせて学ぶ 会計 & ファイナンス入門講座』を通して、これら2つが切っても切れない関係であることがよく分かりました。
- 会計は「健康診断(結果)」、ファイナンスは「健康づくり(原因)」
- 「利益」だけでなく、「キャッシュ(現金)」の動きを見逃さない。
- 過去(会計)を知り、未来(ファイナンス)を描く。
ビジネスの数字に苦手意識がある方や、これから経営的視点を身につけたいエンジニアの方に、最初の一冊としておすすめです。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。










