はじめに
Fortinet は「Fortinet Accelerate 2026」において、自社のセキュリティファブリックを支える最新オペレーティングシステム「FortiOS 8.0」を発表しました。
ハイブリッドワークや生成 AI の普及に伴い、企業ネットワークの複雑化と攻撃対象領域(アタックサーフェス)の拡大が課題となっています。FortiOS 8.0は、AIを活用したセキュリティ制御、次世代 SASE の拡張、そして来るべき量子の脅威に備える「耐量子(Quantum-Safe)」機能を提供し、デジタルインフラ全体の保護とパフォーマンスを両立させます。
本記事では、FortiOS 8.0 の新機能が現代のサイバー脅威やクラウド環境におけるセキュリティ課題に対してどのように寄与するのか、実務的な視点から解説します。
- FortiOS 8.0 がもたらす「One OS」戦略と統合プラットフォームの全体像
- シャドー AI 対策や OCR 対応 DLP など、AI 利用を安全に保つための新機能
- 次世代 SASE の柔軟な展開オプションと、耐量子暗号(PQC)の実装要点
FortiOS 8.0 の全体像: 統合プラットフォームとしての進化
FortiOS 8.0 の最大の強みは、ネットワーク機能とセキュリティ機能を単一のオペレーティングシステムに統合する「One OS」アプローチの進化にあります。

多数の個別製品を組み合わせる従来の手法では、可視性の欠如や運用負荷の増大(複雑性の代償)を招きます。Fortinet のソリューションガイドでも、この統合の重要性が以下のように言及されています。
参考: FortiOS 8.0 Solution Guide
https://www.fortinet.com/content/dam/fortinet/assets/solution-guides/sb-fortios.pdf
“By unifying its operating system, endpoint agent, centralized management, data platform, post-quantum protection, and built-in AI, the Fortinet Security Fabric eliminates the gaps created by fragmented legacy tools and loosely connected vendor stacks.”
(オペレーティングシステム、エンドポイントエージェント、集中管理、データプラットフォーム、耐量子保護、組み込みAIを統合することで、Fortinet Security Fabric は、断片化されたレガシーツールや緩やかに接続されたベンダースタックによって生じるギャップを排除します。)
Security Fabric を支える「One OS」戦略の意義
FortiOS は単なるファイアウォール OS ではなく、セキュリティファブリック全体の基盤として機能します。AI が外部サービスとしてではなく OS にネイティブに組み込まれているため、遅延を追加することなく、ネットワーク全体でインラインの脅威検知と防御をマシン・スピードで実行できるのが特徴です。
既存の Fortinet 製品(FortiClient, FortiManager 等)との連携メリット
FortiOS 8.0 のリリースに伴い、周辺コンポーネントとの連携も強化されています。既存の Fortinet 環境を持つ組織にとっては、以下のアップデートが運用上の大きなメリットとなります。
- FortiClient(統合エージェント)
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EPP/ZTNA 機能に加え、FortiOS 8.0 環境下では、安全な VPN 接続のための PQC(耐量子暗号)サポートや、AI アプリケーションの通信検知と制御に対応しました。
- FortiManager(集中管理)
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GenAI を活用した「FortiAI-Assist」が組み込まれ、自然言語によるガイド付きワークフローで、ファイアウォールやSD-WANのトラブルシューティングおよび設定作業のエラーを削減します。
- FortiAnalyzer(データレイク)
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統合 XDR ダッシュボードが提供され、ネットワーク、エンドポイント、アイデンティティドメイン全体のリスク評価を瞬時に行えるようになりました。
AI 利用の可視化とデータ保護の強化(ユースケース)
組織内で生成 AI(GenAI)の導入が進む一方、IT 部門が把握していない AI ツールの利用(シャドー AI)や、それに伴う情報漏洩リスクへの対応が急務となっています。FortiOS 8.0 では、AI の利用を「禁止」するのではなく、「安全に活用」するための可視化と制御機能が強化されています。
シャドー AI の検知と GenAI アプリの細やかな制御
FortiOS 8.0 では、組織内でどのような AI アプリケーションが利用されているかをリアルタイムで可視化します。
参考: Fortinet Press Release
https://www.fortinet.com/corporate/about-us/newsroom/press-releases/2026/fortinet-introduces-fortios-8-expand-secure-networking-with-secure-ai-controls-fabric-based-ai-agents-flexible-sase-and-simplified-sdwan
“FortiView for AI attack surface and shadow AI, providing real-time visibility into how AI applications and services are used across the organization and distinguishing sanctioned from unsanctioned tools…” (AI アタックサーフェスおよびシャドー AI 向けの FortiView は、組織全体で AI アプリケーションやサービスがどのように使用されているかをリアルタイムで可視化し、認可されたツールと未認可のツールを区別します。)
また、「Model Context Protocol(MCP)」および「Agent-to-Agent(A2A)」の通信を可視化することで、アプリケーションやエージェント間に隠れた AI のアクティビティを明らかにし、データが不適切に処理される死角を減らします。これにより、承認された GenAI ツールでの生産性向上を支援しつつ、機密データの入力といった危険なアクションのみをブロックすることが可能です。
画像からの情報漏洩を防ぐ OCR 対応 DLP の実装
データ持ち出しの手口として、テキストではなく「スクリーンショットや画像」に機密情報を含めて送信するケースが増加しています。
参考: Fortinet Press Release
https://www.fortinet.com/corporate/about-us/newsroom/press-releases/2026/fortinet-introduces-fortios-8-expand-secure-networking-with-secure-ai-controls-fabric-based-ai-agents-flexible-sase-and-simplified-sdwan
“Enhanced data loss prevention (DLP) with optical character recognition (OCR), detecting sensitive data embedded in images, scans, and screenshots that bypass traditional text-based inspection…” (光学式文字認識(OCR)を備えた強化されたデータ損失防止(DLP)により、従来のテキストベースの検査をバイパスする画像、スキャン、およびスクリーンショットに埋め込まれた機密データを検出します。)
この OCR 対応 DLP により、画像に隠された機密データ(設計図面や顧客情報など)をインラインで検出し、一般的なデータ引き出しの抜け穴を塞ぐことができます。
次世代 SASE と耐量子(Quantum-Safe)セキュリティの実装
インフラのモダナイゼーションにおいて、SASE の導入と次世代の暗号化規格への対応は避けて通れません。FortiOS 8.0 は、拠点展開の柔軟性とポスト量子時代を見据えた強力な保護機能を提供します。
SASE OutpostとSovereign SASE による柔軟な拠点展開モデル
パブリックなクラウド基盤だけでなく、規制要件やパフォーマンス要件の厳しい環境向けに、新たな SASE の展開オプションが追加されました。
参考: Fortinet Press Release
https://www.fortinet.com/corporate/about-us/newsroom/press-releases/2026/fortinet-introduces-fortios-8-expand-secure-networking-with-secure-ai-controls-fabric-based-ai-agents-flexible-sase-and-simplified-sdwan
“SASE Outpost, extending SASE enforcement closer to users and applications by deploying a SASE POP in customer-controlled locations, such as on-premises, private data centers, or co-location, while maintaining centralized cloud management.”
(SASE Outpost は、一元化されたクラウド管理を維持しながら、オンプレミス、プライベートデータセンター、コロケーションなどの顧客管理ロケーションに SASE POP を展開することで、SASE の適用をユーザーやアプリケーションのより近くに拡張します。)
これにより、独自のセキュリティスタックを個別に構築することなく、集中管理とローカルでのポリシー適用の両立(データ主権の確保)が可能となります。
PQC(耐量子暗号)による VPN と SSL ディープインスペクションの強化
将来の実用的な量子コンピュータの登場により、現在の暗号化通信が後から解読されるリスク(Harvest now, decrypt later)が懸念されています。FortiOS 8.0 は、この脅威に対するプロアクティブなアーキテクチャを採用しています。
FIPS 204/205 に準拠した PQC(Post-Quantum Cryptography: 耐量子暗号)アルゴリズム(ML-DSA 等)をサポートし、エージェントレス VPN などの重要な管理アクセス経路を保護します。さらに、ハイブリッド鍵交換による SSL ディープインスペクションを強化し、強力なエンドツーエンド暗号化を維持したまま、暗号化トラフィック内に隠れた脅威を安全に検査することが可能です。
まとめ
本記事では、Fortinet の最新オペレーティングシステム「FortiOS 8.0」が実務に与える影響と新機能について解説しました。
- FortiOS は単一の統合 OS として、セキュリティファブリック全体の可視性と AI インライン防御を提供する。
- FortiView や OCR 対応 DLP により、シャドー AI の制御と画像ベースの情報漏洩対策が強化された。
- SASE Outpost により、顧客のオンプレミス環境等へ SASE POP の柔軟な展開が可能となった。
- 耐量子暗号(PQC)のサポートにより、将来の暗号解読の脅威から VPN や通信経路を保護する。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
