はじめに
新入社員の PC キッティングや、拠点が移動になるたびに、長く複雑な Wi-Fi パスワードを手入力していませんか? 「大文字だっけ?小文字だっけ?」と何度も確認したり、1台ずつ手作業で設定するのは、時間も労力もかかりミスのもとです。
実は、Windows 標準コマンド (netsh) を使えば、今使っている Wi-Fi 設定をそのままコピーして、他の PC にダブルクリック一発で適用するツール が簡単に作れます。
本記事では、IT 部門の運用を効率化する「自動接続バッチファイル」の作成手順をご紹介します。
- 既存の PC から Wi-Fi 設定を「ぶっこ抜く(エクスポート)」方法
- パスワード入力不要で接続する「自動配布バッチ」の作り方
- 平文パスワードのリスクとセキュリティ対策
まずは、配布するための「種」となる設定ファイル(XML)を用意します。 XML を一から手書きする必要はありません。すでに Wi-Fi に接続できている PC から設定を「エクスポート(抽出)」 すれば、記述ミスもなく確実です。
- 設定済み PC でコマンドプロンプトを開く
- Wi-Fi に正常に接続できている PC を用意し、コマンドプロンプトを起動します。
- 設定のエクスポート(抽出)
- 以下のコマンドを実行します。 ※
SSID名の部分は、対象のネットワーク名に置き換えてください。
- 以下のコマンドを実行します。 ※
netsh wlan export profile name="SSID名" folder=. key=clear- name=”SSID名”: 抽出したい Wi-Fi の名前。
- folder=.: 現在のフォルダに保存する(「.」はカレントディレクトリの意味)
- key=clear: 【重要】 パスワードを平文(見える状態)で出力します。これを付けないと、暗号化されたまま出力され、他の PC で読み込んでも接続できません。
- XML ファイルの確認
- コマンドを実行したフォルダに、
Wi-Fi-SSID名.xmlというファイルが作成されます。 これが配布用のプロファイルデータです。
- コマンドを実行したフォルダに、
次に、作成した XML を他の PC に読み込ませるための「実行スイッチ(バッチファイル)」を作成します。
メモ帳などのテキストエディタを開き、以下のコードをコピーして貼り付け、install_wifi.bat などの名前で保存してください。 ※ Wi-Fi-SSID名.xml の部分は、手順①でできたファイル名に合わせて書き換えてください。
@echo off
chcp 65001 > nul
setlocal
:: --- 設定項目 ---
:: XMLファイル名を指定 (手順1で作成したファイル名)
set XML_FILE="Wi-Fi-mytech.xml"
:: 接続するSSID名を指定
set SSID_NAME="mytech"
:: ----------------
echo ========================================================
echo Wi-Fi 自動接続ツール
echo ========================================================
echo.
echo 対象のSSID: %SSID_NAME% に設定を行います。
echo.
echo 設定を開始してよろしいですか?
pause
echo.
echo [処理中] Wi-Fi 設定を読み込んでいます...
netsh wlan add profile filename=%XML_FILE% user=all
if %errorlevel% neq 0 (
echo [エラー] 設定ファイルの読み込みに失敗しました。
echo ファイルが存在するか確認してください。
pause
exit /b
)
echo [処理中] Wi-Fi に接続を試みています...
netsh wlan connect name=%SSID_NAME%
echo.
echo [確認中] 接続状態を確認しています(最大30秒)...
:: 30秒間の接続チェックループ
set /a count=0
:CHECK_LOOP
set /a count+=1
timeout /t 2 > nul
:: "接続" という文字が含まれているかチェック
netsh wlan show interfaces | findstr /C:"%SSID_NAME%" > nul
if %errorlevel%==0 (
goto SUCCESS
)
if %count% geq 15 (
goto TIMEOUT
)
goto CHECK_LOOP
:SUCCESS
echo.
echo ========================================================
echo [成功] 正常に Wi-Fi に接続されました!
echo ========================================================
echo.
echo 何かキーを押すと終了します...
pause > nul
exit /b 0
:TIMEOUT
echo.
echo ========================================================
echo [失敗] 時間内に接続を確認できませんでした。
echo SSIDが近くにあるか、またはパスワードが変更されていないか確認してください。
echo ========================================================
echo.
pause
exit /b 1このバッチファイルのポイント
chcp 65001: 文字化けを防ぐおまじないです(日本語を表示するため)。user=all: 自分だけでなく、その PC を使う全ユーザーに設定を適用します。- 接続チェック機能:
netsh wlan show interfacesの結果を監視し、本当に繋がったかどうかを自動判定します。これにより、「設定したけど繋がらない」という問い合わせを減らせます。

ただ接続するだけでなく、「今何をしているか」を表示し、接続確認まで行う スクリプトです。これなら、PC に詳しくない社員の方でも安心して使えます。
実際の運用シーンとメリット
- シーン A: 新入社員への PC キッティング(時短)
-
新しい PC をセットアップする際、複雑なパスワードを手入力するのはミスのもとです。 このツールを USB メモリに入れておけば、USB を挿してダブルクリックするだけ。1台あたり数秒で Wi-Fi 設定が完了します。10台、20台と台数が増えるほど、その時短効果は向上します。
- シーン B: 複数拠点(東京・大阪など)の一括登録
-
営業担当者など、拠点を頻繁に行き来する社員の PC に有効です。 「東京本社」「大阪支店」「福岡営業所」など、全拠点のプロファイルをまとめたバッチファイル を一度実行しておけば、出張先に着いた瞬間、PC を開くだけで自動的に現地の Wi-Fi に繋がります。
セキュリティ上の注意点と対策
非常に便利な方法ですが、運用には注意が必要です。 手順①で使用した key=clear オプションにより、エクスポートされた XML ファイルの中には Wi-Fi のパスワードが「平文(そのまま読める状態)」 で記述されています。
もしこの XML ファイルが外部に流出すると、Wi-Fi パスワードが第三者に知られてしまうリスクがあります。以下の対策を徹底してください。
「誰でもアクセスできる共有フォルダ」にバッチファイルと XML を放置するのは危険です。必要な時だけ共有し、作業が終わったら速やかに削除 してください。 (※PC に設定が取り込まれた後は、バッチファイルや XML を削除しても Wi-Fi 接続設定は消えません)
この方法は、数台〜数十台規模のオフィス(SOHO・中小企業)では最強の時短術ですが、PC が 100台を超えるような大規模環境には向きません。 その場合は、Microsoft Intune(MDM)や プロビジョニングパッケージ、Active Directory のグループポリシーといった、より高度な管理ツールの検討をおすすめします。
まとめ
本記事では、netsh コマンドを活用して Wi-Fi 設定を自動化する方法を紹介しました。
- 手書き不要: 既存 PC から設定を「エクスポート」するだけ。
- 入力不要: バッチファイルを「ダブルクリック」するだけ。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。






