はじめに
「クラウドファースト」という言葉が定着し、今や IT インフラの選択肢としてクラウドは当たり前の存在となりました。 しかし、「具体的に何が便利なのか?」「オンプレミスと比べてコストはどうなのか?」と聞かれたとき、体系的に答えるのは意外と難しいものです。
この記事では、クラウドコンピューティングの基礎から、エンジニアとして知っておくべき主要サービスの違いを解説します。
- クラウド の基本概念と 5 つの主要なメリット
- 従来型(オンプレミス)とクラウドの 比較
- AWS、Azure、Google Cloud の 3大サービスの違い
- これからのエンジニアに求められる クラウドスキル
クラウドとは何か?
クラウドコンピューティングとは、インターネットを介して、サーバーやストレージ、データベースなどのコンピューターリソースを 「必要な時に、必要な分だけ」 利用できるサービスのことです。

コンセントに繋げば電気が使えるように、インフラを所有せずに利用できる仕組みです。
クラウドの主な利点
- 柔軟性とスケーラビリティ
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ビジネスの成長や急なアクセス増加に合わせて、サーバースペックを瞬時に拡張・縮小できます。無駄なリソースを持たずに済みます。
- コスト効率
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初期費用(ハードウェア購入費)が不要で、使った分だけ支払う「従量課金制」が基本です。スタートアップでも低コストで始められます。
- グローバルなアクセス
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世界中にデータセンターがあるため、ボタン一つで海外リージョンにサービスを展開可能です。
- セキュリティ
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クラウド事業者は国際的なセキュリティ基準に準拠しています。物理的な警備からデータの暗号化まで、高度な対策が施されています。
- イノベーションの促進
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AI やビッグデータ解析などの最新技術がサービスとして提供されているため、開発者はすぐに新しいアイデアを試すことができます。
オンプレミスとの違い
従来の自社運用(オンプレミス)とクラウドの違いを、個人的な視点で評価・比較しました。
| 項目 | オンプレミス | クラウド | 評価理由 |
|---|---|---|---|
| インフラ管理 | ハードウェア管理が不要で楽 | ||
| 初期投資 | サーバー購入費 vs 使った分だけ | ||
| 導入速度 | 調達に数ヶ月 vs 数分で起動 | ||
| カスタマイズ | 物理層までいじれるのはオンプレ | ||
| 障害対応 | 自分で現地へ行くか、お任せか |



総務省の調査(2022年)によると、日本企業の約8割がクラウドを利用しています。しかし世界基準(90%以上)と比べるとまだ慎重な姿勢も見られます。
3つのサービスモデル (IaaS, PaaS, SaaS)
クラウドは「どこまでユーザーが管理するか」によって3つに分類されます。
- SaaS[1]Software as a Service
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全てお任せ。完成したソフトを利用するだけ。(例: Gmail, Salesforce, Zoom)
- PaaS[2]Platform as a Service
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アプリ開発に集中。OS やミドルウェアは管理不要(例: Azure SQLApp Service)
- IaaS[3]Infrastructure as a Service
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自由度が高い。仮想サーバーの OS から自分で管理(例: Amazon EC2, Azure VMs)



SaaS に近づくほど管理は楽になりますが、細かいカスタマイズはできなくなります。逆に IaaS は自由ですが、セキュリティパッチ当てなどの運用コストがかかります。 「開発だけに集中したいなら PaaS」「インフラ構成までこだわりたいなら IaaS」 と使い分けるのがポイントです。
代表的なクラウドプロバイダー
AWS(Amazon)
業界のパイオニア
2006年開始。圧倒的なシェアとサービス数を誇る。ドキュメントや事例が豊富で、困った時に情報が見つかりやすい。


Microsoft Azure
企業の味方
Windows や Office 365 との親和性が抜群。既存のオンプレミス環境を持つ大企業のクラウド移行に強い。


Google Cloud
データ分析最強
Google の検索やYouTubeを支えるインフラを利用可能。BigQuery や AI 分野での性能評価が非常に高い。





実績と情報量なら AWS、Office製品との連携なら Azure、AI・データ分析なら Google Cloud といったように、プロジェクトの目的や自社の既存環境に合わせて選定する ことが大切です。
クラウドスキルの重要性
DX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り、クラウドエンジニアの市場価値は急上昇しています。
- 高い需要
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多くの企業がクラウド移行を進めており、扱える人材が不足しています。
- キャリアの広がり
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インフラだけでなく、開発、AI、セキュリティなど活躍の場が広がっています。
- 認定資格の取得
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各社(AWS SAA など)の資格は、体系的な知識の証明になります。
- ハンズオン(実践)
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「無料枠」を使って実際にサーバーを立ててみるのが一番の近道です。



昔は「サーバー担当」だけの技術でしたが、今はアプリ開発者やデータサイエンティストにとっても必須の教養になりつつあります。
クラウドを知っているだけで設計の幅が広がり、エンジニアとしての市場価値(年収)もグッと上がります。 「どの職種を目指すにしても、覚えておいて損はないスキル」だと思います。
クラウド導入時の注意点
便利な反面、以下の点には注意が必要です。
- セキュリティと責任共有
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クラウドは「プロバイダーとユーザーで責任を分担するモデル」です。設定ミスによる情報漏洩はユーザーの責任になるため、正しい知識が必要です。
- ベンダーロックイン
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特定のクラウド独自の機能に依存しすぎると、他社へ移行しづらくなります。コンテナ技術(Kubernetes)などで可搬性を高める工夫も有効です。
- コスト管理
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「使った分だけ」は、逆に言えば「使いすぎると高額になる」ということです。予算アラート機能などで監視しましょう。



特に失敗しやすいのが「コスト管理」です。 サーバーを立ち上げっぱなしにしてしまい、「月末の請求額を見て青ざめる……」 なんていうのは、「クラウドあるある」です。
導入したら、まず最初に「予算アラート」を設定することを推奨します。
クラウド技術の未来
これからのトレンドは個人的に以下の3つだと考えています。
- エッジコンピューティング
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5G と連携し、デバイスに近い場所で超低遅延処理を行う。
- サーバーレス
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インフラ管理を完全に無くし、コードだけに集中する開発スタイル。
- クラウド × AI
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生成 AI などの高度な機能を、API 経由で簡単に自社サービスに組み込む。



これまでのクラウドは「データの置き場所」としての役割が強かったですが、これからは「AI や IoT を動かすための脳」としての役割が主役になります。
5G や生成 AI と組み合わさることで、「今まで技術的に不可能だったこと」が次々と実現できるようになると考えています。
クラウドの活用事例
世界的な企業もクラウドを活用して成長しています。
- Netflix(AWS)
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世界中への動画配信基盤として活用
- Spotify(Google Cloud)
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オンプレミスから全面移行し、BigQuery を活用した高度なデータ分析基盤を構築
- ソニー(Azure)
-
グローバルなエンタメサービスの基盤に採用



興味深いのは、企業によって選んでいるクラウドが違う点です。
Netflix は「配信の規模(AWS)」、Spotify は「データの分析(Google)」といったように、各社が「そのクラウドが得意とする役割」を明確に理解して採用しています。 流行りだけで選ぶのではなく、「自分の目的にはどのクラウドの役割がハマるか?」を意識することが大切だと思います。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。






