はじめに
前回の記事「Azure でデータ基盤を自動化」では、Azure Blob Storage → Data Factory → Azure SQL Database → Power BI の構成で、自動的にデータを取り込み・可視化できる仕組みを構築しました。
本記事では、Power BI の Copilot を活用した「AI による分析・レポート生成」を検証します。
これまでの「データを整えて可視化する」から一歩進み、対話による指示でグラフ作成や傾向分析を自動化できる、“対話で洞察を得る” データ活用を紹介します。
はじめに 前回の記事「Azure でデータ分析基盤を構築・可視化」では、Azure Blob Storage → Data Factory → Azure SQL Database → Power BI の構成で、手動実行を前提とした[…]
Power BI における AI 活用
Power BI は、これまで「可視化ツール」としての側面が中心でしたが、Copilot(コパイロット) の登場により、“AI による分析支援”も可能となっています。
Copilot は、レポートやデータモデルの内容を理解し、ユーザーが自然言語で入力した質問に応じて、グラフ作成・レポートページ生成・要約コメント作成などを自動で提案してくれます。
例えば、
「電力消費量の推移を見やすくグラフ化して」
「消費エネルギーが増えている拠点を教えて」
といった指示を入力するだけで、Power BI が適切なビジュアルを作成し、背後のデータモデルに基づく分析を自動で実行してくれます。
AI 分析の2つの方向性
Power BI で活用できる AI には、大きく 2つの方法 があります。
Power BI 内蔵の生成 AI 機能(Copilot)
代表的なものが Copilot です。Power BI 内で動作し、既存のデータモデルを理解して自動分析・自然言語説明を生成します。
今回の検証では、この「内蔵 AI(Copilot)」を中心に試しました。
Azure AI との連携による拡張分析
もう一つの方法が、Azure OpenAI や Cognitive Services と Power BI を組み合わせる構成です。
Power BI 内で得たデータを Azure Functions や Logic Apps 経由で AI に渡し、自然言語要約や異常検知、予測分析を実現します。
この方法は、より高度な設計検討が必要となります。
どんなユースケースに有効か
Power BI の Copilot 機能は、スポーツの試合データのように「多変量・時系列」なデータ分析にも非常に有効です。
今回の卓球データ(ラリー単位の記録)を例にすると、次のようなユースケースで活用できます。
ースケース | 活用例 | 効果 |
---|---|---|
パフォーマンス傾向の発見 | 「勝者ごとのラリー傾向を可視化して」と指示 → Copilot が自動で勝率や得点パターンをグラフ化 | 各プレイヤーの強み・弱みを即座に把握 |
サーブ分析 | 「サーブ種類ごとの得点率を比較して」と依頼 → Copilot がServeType 別に集計・グラフ化 | サーブ戦略の最適化に活用 |
対戦傾向の分析 | 「選手 A と選手 B の試合で特徴的なラリーを示して」と質問 | 特定の対戦カードでのプレースタイル傾向を抽出 |
試合レポート生成 | 「この試合のサマリーレポートを作って」と指示 → Copilot が得点推移・勝敗要因を自動整理 | 分析資料やコーチング用レポートを自動作成 |
このように「分析設計(どんなグラフを作るか)を AI が考え、人が内容を評価する」という分析スタイルを実現できます。スポーツデータに限らず、人の感覚に依存しやすい傾向把握や要因分析を 対話で支援できる のが特徴です。
Copilot によるインタラクティブ分析
実際に Power BI Copilot を活用し、データをもとに“対話しながら分析”を検証した手順と結果を紹介します。
Copilot の設定と要件
Copilot を利用するには、いくつかの前提条件があります。
項目 | 内容 |
---|---|
Fabric 容量 | Microsoft Fabric の容量(Premium または Fabric Capacity)がワークスペースに割り当てられている必要があります。 |
リージョン要件 | 現時点では、すべてのリージョンで Copilot が利用できません。日本の場合、「Japan West」リージョンでは利用できず、East US など Copilot 対応リージョンを選択する必要があります。 |
ワークスペース作成 | Power BI サービス(https://app.powerbi.com)で Fabric 対応ワークスペースを作成します。 ワークスペース設定で「Premium / Fabric 容量」を確認します。 |
ライセンス | Microsoft Fabric または Power BI Premium Per User (PPU) ライセンスが必要です。 |
📷 Azure のワークスペース作成画面

実際に試した流れ
今回の検証では、以下の流れで Copilot を動作させました。
Fabric 容量付きワークスペースを作成(例:
testFabric
)Power BI サービス上でデータセットを開く(既存の卓球データ)
右上の 「Copilot」ボタン をクリック
ワークスペースを選択(Fabric 対応のもの)
初回利用時のセットアップ完了後、Copilot チャットが起動
サンプルシナリオ:卓球データでのパフォーマンス傾向分析
今回利用したサンプルデータ(TableTennisDemo
)には、以下のような項目が含まれています。
項目 | 内容 |
---|---|
Player | サーブ・ラリーのプレイヤー名 |
ServeType | サーブの種類(Forehand, Reverse sidespin serve など) |
Outcome | ラリー結果(Winner, Error など) |
SpinClass | 回転種別(Topspin, Backspin など) |
Created_at | 計測日時 |
Copilot に対して、
“Show me which serve types lead to the most wins”
“Visualize how player performance changes over time”
と入力すると、Copilot はサーブタイプ別の勝率グラフや、時間経過に伴うプレイヤーのパフォーマンス推移を自動生成しました。これにより、どのサーブが勝ちにつながりやすいか、特定プレイヤーの傾向がどう変化しているかを直感的に把握できます。
📷 Copilot による自動生成レポート

まとめ
今回の検証では、既存の自動化基盤(Blob + ADF + SQL + Power BI)に Power BI の Copilot 機能 を組み合わせることで、“データの流れ”だけでなく、“分析の流れ”までも自動化できることを確認しました。
これにより、
CSV をアップロードするだけでデータが SQL に格納され、
Power BI で最新のグラフが自動更新され、
さらに Copilot が自然言語で分析レポートを提案してくれる
という仕組みが実現できました。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。